©️©️サクラ
コールセンターみたいなとこ。
サクラ 「お電話ありがとうございます。ファッションセンター鎖帷子お客様相談センターでございます。…はい、お買い上げありがとうございます。…服の寸法がホームページの記載と少し違う?大変失礼いたしました。レシートをお持ちの上、ご購入いただいた店舗のほうまでご相談くださいませ。今すぐサイズの合うものを自宅まで持ってこい?
…はあはあ、そうしましたら上長に確認の上対応させていただきます。それでは失礼いたします。
電話を切るサクラ。
サクラ 「 くそが。」
再び鳴り出す電話、電話に出るサクラ。
サクラ 「はい、お電話ありがとうございます。ファッションセンター鎖帷子 お客様相談センターでございます…」
サクラは口パクでしゃべっている、照明薄くなる。
サクラ(ナレーション)「私の名前はサクラ29歳。コールセンターで働くオフィスレディ。まぁそれは仮の姿で声優を目指してる。今はまだ卵だけど、絶対みんなに好かれる声優になって、両親に喜んでもらうんだ!」
ナレーションが終わり、照明が元に戻る。
サクラ「はあ、緑色の生地に狸のプリント、赤文字でフォックス…なるほどなるほど、うどんがいいかそばがいいかですねわかります。」
時差ボケ「ちげーよ!お前んとこの服だろうが!俺は忙しくてせわしなくてタイムがロスしそうなんだよ、ハリアップしろ!」
サクラ「彼の名前は時差ボケ。残念ながらあだ名だ。本名はかいとわたる。海、渡る、航行と書くらしい。なんか海外をよく飛び回っているっぽいが本当かどうかは知ったこっちゃない。どうも日本人にはわからないファッションセンス(笑)をお持ちのようで緑の生地に狸のプリント、赤文字でフォックスと書かれた、コラボでもない限り作られないであろう奇抜な商品が好みのようだ。その手の商品を大量に購入。そのまま流れるようにクレームをしてくる。現在7回目だ。暇すぎるだろ。やることねーのか。」
サクラ「かしこまりました~ハリアップしますね~。つまりどういったご用件でしょうか?」
時差ボケ「オーケーオーケボンジュー。ミーはおフランスのパリスでジェンヌしてんのね?だから体が日本のタイムには合わねーんだわ。あんたら事務仕事は日中で終わりだろ?だから無理してナウして電話してんのアンダスタン?これって精神的肉体的にもストレスなんだわ。慰謝料発生してもおかしくないよねだよねそんなときだよね?」
サクラ「時差ボケ。このあだ名はまだ優しいほうだ。中には誹謗中傷のようなあだ名を付けられた猛者ももさもさと存在する。これ暇なのはあたしか?」
サクラ「大変申し訳ございません。それではまず、ご不便をおかけしてしまったことについて伺ってもよろしいでしょうか?」
時差ボケ「だからタイムをロスすんじゃねーよ。とりあえず責任者カムカム。」
サクラ「責任者は私でございます。」
時差ボケ「ヒュー、んじゃ今からうちに謝りに来い。」
サクラ「それは致しかねます。」
時差ボケ「お詫びになんか包んで持ってこいだよね!」
サクラ「失礼いたします。」
時差ボケ「あ、ちょっ!!」
電話を切るサクラ。次郎長登場。
次郎長「お、サクラさんやってるね?調子はどう?」
サクラ「あぁ次郎長さん、お疲れ様です。良くも悪くもないすね。フツー。」
次郎長「そうかい、まぁとりあえずその呼び方やめてくれや。それじゃ任侠の人みたい。」
サクラ「(ウィキペディア読む)情を施されれば命をかけて恩義を返すことにより義理を果たすという精神を重んじ、法で縛られることを嫌った者が任侠に走ったとされる。任侠のひと、そうなんですか?(電話がちょっと鳴ってとる)」
次郎長「モチのロンだよ。」
サクラ「(電話切りつつまたウィキペディア)ヤクザ史研究家の藤田五郎の著述によれば、正しい任侠精神とは正邪の分別と勧善懲悪にあるという。そうなんですか任侠のひと?(電話とる)」
次郎長「そのとぅり!つよきを助け!よわきを挫く!それがそれこそが俺イズム!(凛々しい)」
サクラ「(電話き)・・・(電話とる)」
次呂長「(どや顔)」
サクラ「(電話)・・・逆じゃね?(電話)」
次呂長「すいませんでした。」
サクラ「(電話)わかればいいでしょう。(電話)」
次郎長「あの~サクラさん、ところで、さっきからそれ何やってるの?」
サクラ「(電話)クレーム対応ですけど。(電話)」
次郎長「嘘でしょ!?」
サクラ「(電話きるそして電話とる)」
次呂長「ちょ、サクラさん!」
サクラ「(電話きる)なんすか~?いま手が離せませ~ん。」
次呂長、サクラより先に電話をとろうとするが負ける。幾度か繰り返すうちに人々はテレクラを思い出す。
次呂長「…なんだろうこの懐かしさ…!(とろうとして負ける)」
サクラ「(電話きる)はい?懐かしさ?(電話とる)」
次呂長「(疲れはてている)昔テレホンクラブというものがあって俺はいつも…あぁわかった悪かった。なんかもう俺が全部悪かった。頼むから電話とらせてくれ。」
サクラは再び電話をとろうとするがとらない。ついに次呂長は電話をとる。
次呂長「お電話ありが…すいませんほんともう生きててすいませすいませすいま(フェードアウト)」
漢として生きることの大切さ、また大変さを噛み締めることを他人事にサクラへ新たな電話が鳴る。
サクラ「お電話ありがとうございます。ファッションセンター鎖帷子お客様相談センターでございます。」
京王線「あの、大変すみません。御社でご購入させていただきましたお商品についておほんのりとだけお伺いしたいことがあるのですが…今お時間ほんのお少々およろしいでしょうか?・・・あ、もしお忙しければまたお後でおかけ直したりもお出来ますが・・・」
サクラ「ピピンときた。私には分かる。この手のタイプは下手に見せかけてかなりずうずうしいタイプだ。だいたい敬語の使い方がおかしい。時間がかかるだけでつまらなくなること請け合いだろう。早々に撒かなくては。」
次呂長「全部聞こえてますけど。」
サクラ「はい、どのようなお問い合わせでございますか?」
京王線「あの…畏れ多いんですがね、口にするのも大変畏れ多いんですが、ご購入したお商品にですねえっと、こういったお商品についてって本当にこちらでおよろしいのでしょうか?」
サクラ「ええそうです。」
京王線「わたくしのお口からお申し上げるのはお心苦しいのではありますが、お穴がお開いていまして…あ、いえわたくしがですねおダメージジーンズお買っちゃったのかもしれないのではありますが…こういったご相談もお聞いていただけますか?あ、お穴といいましてももうほんの少々なのでこういったおデザインということであるならば・・・」
サクラ「うぜーーーーーーーーーーー!!」
次呂長「だからそれ聞こえてるって!」
京王線「お今回はまぁ、お諦めになってはいてみちゃったりなんかも・・・」
サクラ「先に結論を言わないのがうぜーーー!単純に私の嫌いなタイプの女だーーー!!」
京王線「あの、おもしかしたらおハードオフで買っちゃったのかなって思ったりもしなかったり」
サクラ「お弊社はご中古品のお取り扱いはおございません。おもしかしたらお不良のお可能性がございますので、ご購入時のレシー・・・」
京王線「ああやっぱり!お新品なんですよね?このおズボムはお穴が空いたお新品なんでしょうか?」
サクラ「めんどくせーーーー!!!」
次呂長「勘弁してください…!」
サクラ「ですから不良品の可能性がございます。どのくらいのお穴でしょうか?」
京王線「えっと、十円玉」
サクラ「なるほど。」
京王線「の厚みくらいです。」
電車の通り過ぎる音やホームのアナウンスがわっしょいする。
サクラ「お客様?少々お電波が激しいようなのでお切りします。(電話切る)」
次郎長「サクラさん!この人(時差ボケ)めっちゃ怒ってるから!一回ちゃんと謝って!」
サクラ「それは社員で上長で任侠のひとである次郎長さんのお仕事でしょうが。」
次郎長「んがー!昔はもっとまじめな良い子だったのに…もしもし…」
サクラ「…良い子ってなんだよ。はぁ…」
サクラナレ「私は今、声優の養成所のようななにかに通っていて、週に1度のレッスン、日曜日は毎週休んでいる。休日は問い合わせが多く、会社も人数が欲しいためできるだけ人員を投入したがってるけど、私は頑なに休み続けてる。だってもっと大事なことがあるから。だけどそんな私をみんな避けはじめ、ときには裏山に歯科が出来たんだって、アパガードみたいな陰口を叩いてるの知ってるんだ。暇人どもが。いや別に言わないけどね。小中高通じて友達はケムンパスだけだった私は、いつも誰からも必要とされていないし、そんな友達あたしだっていらない。あたしの心はだんだん弾力を失っていって、ちょっとだけ疲れてきた。あれ?あたしみんなに愛される西友に勤めるんじゃなかったっけ?イトーヨーカ堂?セブン&アイホールディングとは一体、あ、やべ、これまずいやつだ。」
次郎長「サクラさん!お願いだから謝って!!(電話を渡そうと近づける)」
時差ボケ「だからいつまでロスタイム。そんなみえみえのオフサイドトラップ。そんなおまえにハットトリック。」
サクラ「堪忍袋の緒が切れたーーー!!!!」
電話をハンズフリーにする。
じろ長「は???」
サクラ「想いをこめて、唄います。」
後世に語り継ぎたいwhats,up,peopleが流れる。
じろ長「えええええ」
サクラ「ぼーい。」
時差ボケ「・・・歌?」
サクラ「ぜつ、ぼーい。」
次郎長「ちょっとサクラさん!サクラさん!?」
サクラ「便利便利万歳。便利便利万歳。便利便利万歳人間。」
時差ボケ「いや朗読…?」
サクラは朗読し続けた。権力には屈しない。その確固たる意思をのせて。
じろ長「ちょ(電話再びとる)、すいませんほんと・・・」
時差ボケ「おいいいいい!!」
じろ長「はいいいい!!」
時差ボケ「聞かせろ。」
じろ長「はいいいいい??!!!」
時差ボケ「聞かせてくれ。」
サクラ「嫌です。(電話を切ろうとする)」
時差ボケ「ちょまっ!あんた、あれだな。」
サクラ「はい?」
時差ボケ「いい声してるな。」
サクラ電話を切る。
電話が鳴るのでとって切る。
じろ長「ちょっとおお!いい感じにまとまりかけてたでしょおお!!」
電話が鳴るのでとって切る。
サクラ「やる気が冷めた。極寒に。」
じろ長「なんでだよおおお!めんどくせえええ!!」
電話が鳴るので次郎長ががんばってとる。
じろ長「はい!じろ長です!」
時差ボケ「ユーじゃねえ。さっきのシーを・・・いや、」
じろ長「サクラですなかしこまります・・・!」
時差ボケ「いやいいんだ。・・・ビューティフルポエムだってコールしてくれねえかプリーズ。」
じろ長「日本語でお願いします。日本語な気もしますが。」
時差ボケ「悪かったよ。」
電話が切られる。
じろ長「・・・」
サクラ「・・・」
じろ長「良かった・・・のか?」
サクラ「休憩してきまーす。」
サクラ休憩にいく。
じろ長「ああもう勝手に・・・ま、いいか。」
暗転
過去話
明転するとケムンパスとサクラがいる。ケムンパスは全タイを着るがどうしても拒否するならばでかい毛虫人形をどうにか喋らせよう。上演時はミリタリーでごまかしましたすいません。
ケム「サクラはどうして声優になりたいんだい?マイバスケットじゃ駄目なのか?」
サクラ「んー、みんなに愛されたいから!でもラムネ割はマイバスケットのほうがよく売ってる!」
毛虫「そうかそうか、西友にもある気がするけどな。それにいまだって十分愛されてるだろう?」
サクラ「もっと!もっと不特定多数に愛されたいの!好きとか嫌いとか最初に言い出したいの!!」
毛虫「そうですか。」
サクラ「ねぇ、あなたはお名前なんていうの?」
毛虫「俺?見てわかるだろサクラ?」
サクラ「んー、むずかしいなぁ」
毛虫「じゃあ大ヒントだ。いいかサクラ、俺の名前はケ○○○ス。」
サクラ「けるべろす!!」
毛虫「おおおおおい!!」
サクラ「あたしはサクラ!あなたはけるべろす!!(めちゃ嬉しそう)」
毛虫「おおおいやめろおおお空気読んでくれえええ!」
サクラ「あり?違うの?」
毛虫「ケとスしかあってない!まずいだろー色々ギリギリなのにまじ空気よめねー、だから友達出来ないんだよ。」
サクラ「・・・!」
毛虫「あっ・・・」
サクラ「(泣きそう)」
毛虫「俺の名前はケムンパスだ!」
サクラ「けむんぱす?へんな名前ー!」
毛虫「お前の友達だ。」
サクラ「・・・やったー!」
毛虫「ニッコリ」
サクラ「ともだち!ともだちできたー!!」
お手製の毛虫ストラップを渡す。
サクラ「ほえ?なにこれ?」
毛虫「これがあれば、ずっと友達だ。」
サクラ「なぬ!」
毛虫「いつでも、そばにいる。」
サクラ「・・・ありがとー!!」
なんとなくオーディション会場になり、毛虫はかっこよく退場。
サクラ「はい、特技は・・・歌です。キリッ」
うっすらぶっ生き返す。サクラは朗読する。
カウンターのほうに四人出る。それぞれ画用紙をもっており、「sound only」「surround only」「皿うどん のみ」「蔵王」と書かれている。碇ゲンドゥ冬の月アプロ理論派マダム藍とする。
冬月「彼女が39番だ。どうだ蔵王?」
蔵王「・・・」
アプロ「ぼくは彼女でいいと思います。いや、彼女がいい。見てくださいいや聞くのか?音楽流れてんのに朗読ってラップじゃないですか。ホルモンが好きなのかどうかすらわからないし。」
マダム藍「そんなものをこの神聖で崇高で哀愁をぶつけあうオーディションにもってくるひとでいいのかしら?」
アプロ「そこがいいんじゃないか!ぼくは可能性を大事にしたいんだ。受かるとか落ちるとかじゃない、やりたいことを大切にしたいんですよ!」
マダム藍「ふふっ、若いわね。」
アプロ「若いからなんだっていうんだ!マダム藍、あなたはいつだってそうやって否定する。可能性は無限なんだ。」
マダム藍「別に否定なんてしてないわ。ただ、あんな子に務まるのかしらねってこと。それだけ。朗読なめんじゃないわよ。」
アプロ「…ちょうどサビが始まる。朗読のサビってなんだ?いや聞いてみましょう。」
サクラ「脳味噌常に震わせて、荒々と運命にそむく。」
二人「・・・」
マダム藍「もう無理(ガン泣き)」
蔵王「採用。」
マダム藍「ですよね!(ガン泣き)」
アプロ「マダム?!」
冬月「(頷く)」
蔵王「採用。」
アプロ「ちょ…え…?ありがとうございます!」
マダム藍「きたわー。久しぶりにマダム涙腺やられたわー、今回は私の負けね。おめでとうアプロくん。」
アムロ「はい!!」
冬月「本当にいいのか蔵王。もう後戻りは出来んぞ。」
マダム藍「そうね。多分そう。」
アムロ「あんたわかってないでしょ。」
蔵王「決定事項だ。それに・・・」
冬月「・・・それに?」
蔵王「我々の出番はもうない。」
サクラは朗読を続ける、ひとはなぜ争うのか考えるような暗転。
数日後
明転
とても明るくサクラは電話の対応をしている。
サクラ「はい、はい。この度は大変申し訳ございませんでした。それでは失礼致します。(電話切る)」
サクラ「ふー。」
電話が鳴るのでとる。相手は時差ボケ。
サクラ「お電話ありがとうございますファッションセンター・・・」
時差ボケ「あ!あのもう一度だけ・・・!」
サクラ電話を切る。それでもニコニコしている。次郎長登場。
次郎長「どうしちゃったのサクラさん、なんか機嫌いいね。」
サクラ「別にいつもこんなんですよ。ニッコリ」
電話が鳴る。相手は京王線。
サクラ「お電話ありがとうございます。ファッションセンター・・・」
次郎長満足げに退場。
京王線「あの、大変すみません。ご購入したお商品にですね、ちょっと言いづらいのですがお穴が空いておりまして・・・」
サクラ「はい、それは大変でしたね。申し訳ありません。」
京王線「そのことについてですね、先日からずっとわたくし考え続けておりまして、もうお夜もお眠りになられなくてお仕方なくお昼寝をしてしまいまして・・・」
サクラ「まぁ、重ね重ね申し訳ないありません。すぐにでも交換出来るように手配致します。購入した際のレシートはございますでしょうか?」
京王線「あ、はい。ございます。」
サクラ「よかったー!それではすぐにでも・・・」
京王線「えっとあのー、この間とえっと、同じお方だと思うのですが・・・」
サクラ「私です。この間も私です。」
京王線「お失礼ですがお対応がまるでお別人でおびっくりしています。」
サクラ「申し訳ありません、としか言えないところが心苦しくはありますが。恥ずかしながらあのあと少々反省致しまして、あまりにもお客様に対して失礼なことをしてしまったな、と。なんとか挽回させてもらえはしませんでしょうか?」
京王線「そういうことでしたら、まぁ。」
サクラ「ありがとうございます!」
京王線「それでお穴の・・・」
サクラ「それは不良品です。すぐにでも返品・・・いえ、ここまできてしまったからにはいますぐ!私がおなじものを届けに参ります!」
京王線「えええ?いえ、そこまでしていただかなくても・・・」
サクラ「いえ、やらせてください!謝罪したいということを行動で示したいのです!京王線沿線でよろしいですか?」
京王線「なななんでそこまでわかるのですか?」
サクラ「お客様からあふれでる上品さから推測させていただきました。この上品さ、ならびに清潔感は中央線では出せません。」
京王線「ひ、ひええそこまで。ももももうお結構です!ご自分でお取り替えに行きますので!(電話切る)」
サクラ「ふー。」
電話鳴る相手時差がちゃ切る。
次郎長「サクラさん本当にどうしちゃったの!?やれば出来るじゃない!」
サクラ「まぁ、このくらいは(デレ)」
次郎長「・・・!はーん、さてはこのあいだあったっていうオーディション!」
サクラ「(はにかんで頷く)」
次郎長「やったじゃない!ちょっとー!お祝いしちゃう?しちゃう?」
サクラ「ええー、恥ずかしいな・・・奢りですか?」
次郎長「モロの珍だよ!!」
サクラ「それセクハラですよ!」
二人笑いあう。なんだこれ空間。
電話相手時差ボケを切る。
次郎長「じゃあ先にいってるよ、いつものとこね。」
サクラ「えー、またあそこですか?」
次郎長「うぐ!ん、んじゃあ別のとこを・・・」
サクラ「いいですよあそこで。近いし。」
次郎長「じゃあ、またあとで。」
サクラ「はーい。」
次郎長「あ、サクラさん。・・・おめでとう。」
サクラ「ありがとうございまーす。」
次郎長退場。突然のラブロマンスであり彼は花を買いにいくようだ。春は来ない。
電話相手時差ボケる。
サクラ「なんか、しあわせだなー。」
電話が鳴る。サクラとる。
毛虫「俺だ。」
サクラ「しつこい。(電話切る)」
毛虫「・・・」
サクラ「あり・・・俺だ?」
電話鳴る。とる。
毛虫「俺だ、サクラ。」
サクラ「・・・なんで私の名前。」
毛虫「いいかサクラ。俺の名前はケムンパ・・・」
サクラ「けるちゃん!!」
毛虫「もうケしかあってない!」
サクラ「どうしたのいきなり!突然いなくなっていままでどうしてたのよ!」
毛虫「まあ、いろいろあってな。」
サクラ「なによいろいろって!・・・だいたいなんでこの電話に・・・」
毛虫「ああ、このあいだの書類からな。」
サクラ「このあいだ?書類?」
毛虫「オーディション受けにきただろ?」
サクラ「オーディション?え?え?」
毛虫「採用したのは俺だ。」
サクラ「え?採用って・・・けるちゃんが・・・私を・・・?」
毛虫「俺が蔵王だ。」
サクラ「ちょっとなにいってるのかわかんない・・・!」
毛虫「おめでとう。」
電話が切られる。
サクラ「え?・・・え!?どういうこと?」
電話が鳴る。相手は時差ボケ。
別場所に次郎長が登場。「離したくはない」カラオケを流し始める。
サクラ電話をとる。
時差ボケ「あ!あの歌を・・・!」
サクラ「インチキじゃん!!!」
時差ボケ「子守唄を・・・」
サクラ「あんたが私を採用ってインチキじゃん!ずっと、ずっと頑張ってきて、やっと初めて合格して・・・」
時差ボケ「モーニングコールを・・・」
サクラ「すごい嬉しかったのに!それが全部あんたのおかげで!私のちからじゃないってこと!?」
時差ボケ「三時のおやつを・・・」
サクラ「バカにしないでよ!!」
時差ボケ「帰りのじか・・・」
サクラ「辞退します。」
時差ボケ「きゃ、きゃんせ・・・」
サクラ「あんたが合格を決めたオーディションなんか辞めてやるっていってんの!!」
時差ボケ「デキレー・・・」
サクラ「誰があんたの思い通りになるかっての!ばーかばーか!私はね…!」
時差ボケ「う・・・」
サクラ「絶対自分のちからで合格してみせる!!!!」
サクラ電話を切る。
時差ボケ「な。(退場)」
すごいたまたまサビのところへんで、サクラは毛虫ストラップを床に投げつけ次郎長側へ向かう。
次郎長「はなしっ!たっ!」
サクラ登場し、目が合う。満足げに次郎長は続きを歌おうとする。
次郎長「くわ~・・・!」
サクラ「ちきしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ゆっくりと暗転。
明転すると、次郎長が電話の応対をしている。
次郎長「・・・はい、はい申し訳ありません。もう厳し~く言っておきますんで・・・」
サクラ登場。なんか挨拶っぽいことする。
次郎長「・・・はい失礼しますうううう!!(電話切る)ふい~。」
サクラ「おつかれさまでーす。」
次郎長「おつかれおつかれ。どうだった?」
サクラ「あんまり手応え無しでした。」
次郎長「そか。まあ頑張ろうや。・・・んじゃここ任せたよ。」
サクラ「はーい。」
次郎長「あ、ちょっとまた見てもらってもいい?」
サクラ「ええー?」
次郎長「すぐ終わるから。」
サクラ「・・・もうちょっと一般受けするほうがいいと思いますけど。」
次郎長「まぁそういうなよ。好きなんだよ。・・・えー、ちびまるこちゃんで、休みの日にすごい誘いかたをする、ハマジ。」
サクラ「・・・」
次郎長「おいサクラ。今度の日曜日ツチノコ探しにいこうぜ。」
サクラ「(反応は任せる。)」
次郎長「(反応は任せる退場。)」
サクラ「さて、と。」
うっすら暗くなる。
サクラ「あれから大きなオーディションがいくつもあったけど、私の生活はあんまり変わらない。どうしても人手が足りないときは、短時間だけどシフトに入ることにした。次郎長さんは、モノマネ芸人に、俺はなる!って言い出して色々研究しているみたい。いまでは同志?みたいになっている。」
時差ボケ登場。
サクラ「時差ボケさんはいまでもたまに電話をくれる。(がちゃ切る。)」
時差ボケ退場。京王線登場。
サクラ「そうそう、こないだのオーディションでやけに敬語の使い方がおかしい上品なひとがいたから、聞いてみたらやっぱりそうだった。なんでもオーディションに落ちたときにクレームを入れることにしてるらしい。全く迷惑な話だ。」
京王線退場。
サクラ「ケムンパスがどうなったかは、私たちだけの秘密…」
サクラ「はい!39番本之木サクラです!よろしくおねがいしま・・・!」
時間が止まり、毛虫がゴゴゴゴっと登場。
毛虫「・・・採用。」
バツンと暗転。
おしまい。
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