くろたさんのわりとよくある日常(2/2)

第八場 妖しげな川

へいまとりんか登場し、フラフラとそのへんを徘徊する。
法子登場。法子が認識するまで二人の姿は法子には見えない。

法子「あら?ここ私の家だよね?」

なんかうろうろする。

法子「なんでこんな薄暗いんだ?りんかー、いないのー?・・・うーん。電気もつかない。・・・今月分払ってなかったっけ?や、そんなことあるか?」

怪しげなへいまが登場。

へいま「・・・」
法子「おぉへいま、帰ってたのか。おかえり。電気くらいつけなさいよ。って、お母さん電気代払い忘れちゃってたみたいで、これから払ってくるわ。ごめんね。」

くろたさん退場しようとするがへいまに腕を掴まれる。

へいま「・・・かないで」
法子「ん?どした?」
へいま「行かないで。」
法子「なに、ちょっとコンビニでお金払ってくるだけよ。へいまも暗いまんまじゃ困るでしょ?」
へいま「行かないで」
法子「ん。・・・へいま、どうしたの?」
へいま「・・・」

仄暗いりんかが登場し、無言で反対の腕を掴む。

りんか「行かないで。」
法子「ちょ、どうしたのよあんたたち。お母さんどこにも行かないよ。」

無言で掴み続ける。

法子「大丈夫だから。ね?手離して?お母さんちょっと痛いよ。離しなさい。・・・離してッ!!」

二人とも手を離し、くろたさん中央サスへ。

へいま「お母さん・・・」
りんか「お母さん・・・」

うしくんがちょっと降りてくる。

法子「・・・うし?・・・あれ、私・・・跳ねられたんだっけ?」

くろたさん退場。
うしくんがまた吸い込まれてへいま、りんかも退場。
その9

サブちゃん登場。

サブ「あ、それイナダですね。お刺身で食べると結構美味しいです。あ、ごめんなさい。ウチ捌くのはやってないんですよ。いや正確にいうとですね。僕が捌くのはやってないというかやらせてもらえないというか・・・あ、おやっさんっていうのがいるんですけど、今いるんだかいないんだか・・・あ、んじゃまたお願いしまーす。・・・さっきから全然売れないなあ。僕はもっとやれると思うんだけどなぁ。うん、やっぱもうちょっとこう、色々仕事を任されてもいいと思うんだ。」

鮎太郎登場。

サブ「あ、おやっさんいたんですか。僕考えたんですけどね、僕にももう少し責任ある仕事をというかですね・・・」
鮎太郎「おうサブ。おらぁちょっと出てくる。店は任せたぞ。」
サブ「任せるったってそんな無責任な。」
鮎太郎「急いでんだよ。なんか嫌な予感すんだ。」

りんか走り込んでくる。

りんか「どうしよう・・・どうしよう・・・!」
鮎太郎「りんか、どうした?」
りんか「おじさん・・・お母さんが・・・!」
サブ「法子さん?」
鮎太郎「サブちっと黙ってろ!りんか、法ちゃんがどうした?」
りんか「・・・なんかね、病院から電話あって・・・跳ねられたって・・・意識が戻らないって!」
鮎太郎「わかった、とにかく行こう。」
りんか「でもおかしいんだよ!さっきお母さん家にいたんだよ!跳ねられたの朝だっていうんだよ!二人が家に来たときお母さん見たでしょ!きっとなにかの間違いなんだよ・・・!」
鮎太郎「りんか、へいまはどうした?」
りんか「お兄ちゃん?知らない。」
鮎太郎「あいつケータイもってなかったな。」
りんか「たぶん林木さんと一緒だと思うけど・・・」
鮎太郎「林木か・・・おうサブ。」
サブ「はい?」

ケータイを渡す。

鮎太郎「林木入ってるから電話しといてくれ。りんか、とにかく病院に行ってみよう。俺もついてくから。」
りんか「・・・病院・・・うん。」
鮎太郎「おう。サブ、頼んだぞ。」
サブ「頼まれましたぁ!」

鮎太郎、りんか退場。

サブ「おやっさんが僕に・・・頼むってか。うぉぉ。」

プルプルしながら電話をする。歓喜である。
下奥に林木とへいま登場。

サブ「あ!あの・・・」
林木「何だよ、かけてくんな。」

二人退場。

サブ「おおお?・・・もっかいかけ直して、と。」

二人登場。

サブ「あ、林木さん・・・」
林木「お掛けになった電話は現在話したくありません。」

二人退場。

サブ「ひょっとして、もしかしてだけど。林木さんっていう方はおやっさんと仲が悪いんじゃないかなぁ。まぁおやっさん口が悪いからどこで嫌われてようがおかしかないけど。・・・でもこれじゃせっかくおやっさんに認めてもらうチャンスが・・・いや、いける!ヒラメ!板!おやっさんじゃないですよ作戦でいこう!」

二人登場。

サブ「サブだよサブサブ!四万十川鮎太郎じゃないですよー!」
林木「・・・・お前誰だよ?なんで鮎太郎のケータイ使ってんだ?」
サブ「おおお良かったー!それがですね、話すと長いんですけど僕・・・」
林木「三行で頼む。」
サブ「僕。サブ。病院。」
林木「なんで片言なんだよ。短めに言えっていってんだよ。」
サブ「ええと・・・おやっさんと、りんかちゃんが、病院で待つ。」
林木「病院?そのおやっさんってやつとりんかちゃんが?意味がわからねぇ・・・!」
へいま「ちょちょちょっと代わってもらえますか?!もしもし!」
サブ「ぼく、サブ、さかな。」
へいま「知ってますよ!りんかが病院ってどういうことですか?」
サブ「いや病院に向かったのがりんかちゃんで、跳ねられたのが法子さん。」
へいま「お母さん?!跳ねられた?!」
サブ「うん、今朝。」
へいま「すぐ行きます!林木さん!」
林木「わかった。早く言えよ!」

二人退場。

サブ「なんで怒られたんだろう・・・」

薄暗くなる。
その10 妖しげな川の2

くろたさんしょんぼり登場。

法子「私やっぱり・・・そうか・・・はぁ。これからどうなっちゃうんだろ・・・」

日替わりの匂いのする女のシルエットが映る。

法子「なに?」
日替わり「おーい。」
法子「ん?」
日替わり「おーい。」

影絵をする。

日替わり「どうしたーしょんぼりしてー(影絵)」
法子「ええと、いえ、大丈夫です。ちょっと疲れて座ってただけですから。」
日替わり「そうかー。私はてっきり、誰にも相手にされなくなっちゃったからグレちゃったのかと思ったよー。」
法子「・・・え?」
日替わり「周りの人の声はまだ聞こえるのかいー?」
法子「え・・・はい。」
日替わり「もうすぐ聞こえなくなるよー。」
法子「何言ってるんですか?」
日替わり「だってあなたさー」

日替わりの匂いのする女が出てくる。

日替わり「死んでるし。」
法子「・・・は?」
日替わり「まぁ認めたくないのもわかる、わかるよ。私もそうだったからサ。」
法子「・・・」
日替わり「でもなんつーの?受け入れなきゃ。受け入れて進まなきゃ。」
法子「・・・」
日替わり「どうせいつかはみんな死ぬんだしね。」
法子「・・・やめてください。」
日替わり「や、めんごめんご。ちょっと不謹慎だったね。」
法子「・・・まだ死んでないです。」
日替わり「まぁ正確にいうとそうだね。まだ。でも、もうすぐだよ。」

話を聞き終えた感じで鮎太郎、りんか登場。いすに座り沈んでいる。慰めたりする。

法子「りんか・・・鮎太郎・・・」
日替わり「知り合い?」
法子「ええ。娘と幼なじみです。」
日替わり「聞こえる?この人たちが今なに話してるのか。」
法子「・・・いえ、なにも。」
日替わり「ね?」
法子「・・・はい。・・・嘘でしょ・・・!」
日替わり「泣かない泣かない。死んでりゃそのうちいいことあるから。」
法子「あの・・・私もう死んで・・・死にそうなんですよね?」
日替わり「うん。」
法子「あなたは?」
日替わり「あたし?」
法子「あなたもあの・・・死んでるってこと?」
日替わり「うーんそうだなー。死んでるっちゃ死んでるけど、生きてるときと比べて別に不便だと思うことないしなー。慣れれば結構快適よ。慣れれば。ね、くろたのりこさん。」
法子「何で私の名前・・・」
日替わり「や、そこの病室に書いてあるし。」
法子「あ、そっか。・・・あなたお名前は?」
日替わり「もう忘れちゃったよ、昔の話だし。でもそうか、名前ないと呼ぶとき不便だね。不便なことあったわ。・・・パイセンでいいよ。」
くろた「パイセン?」
日替わり「なんかそう呼ぶの流行ってるんでしょ?こうみえてくろたさんよりだいぶ歳上だしね。」
法子「見えない。」
日替わり「でしょ?」
法子「あの、私・・・」
日替わり「ん?」
法子「へいまとりんか・・・家族に挨拶したいんですけど、出来ますか?」
日替わり「そうきたかー。」
法子「やっぱ・・・無理ですかね?」
日替わり「それが未練だよくろたさん。あなたがまだここにいる理由だね。まぁ、出来なくもないけど。」
法子「お願いします!」
日替わり「んー。」
法子「パイセン!」
日替わり「あ、なんかちょっとその呼び方うれしい。ついといで。」
法子「ありがとうございます!」

日替わりの匂いをさせ退場。

法子「りんか・・・へいま・・・」

くろたさん退場。
へいま、林木登場。

へいま「りんか!」
りんか「・・・お兄ちゃん。」
へいま「・・・お母さんは?」
りんか「・・・(目でシステムをみる)」
へいま「・・・お母さん!」

へいまシステム裏退場。りんかも追って退場。

林木「・・・どうなんだ?」
鮎太郎「・・・おう林木、よくきたな。何年ぶりだ?」
林木「そんなことどうでもいいだろ。変わらないなお前。」
鮎太郎「お前もな。」

鮎太郎「あんま良くねえな。意識が戻らねえ。植物状態になるかもって話だ。」
林木「・・・そうか。・・・不幸中の幸いってやつだな。」
鮎太郎「俺はそうは思わねえけどな。」
林木「命があるだけ良かっただろうが。」
鮎太郎「このままだと先にあいつらが参っちまうよ。」
林木「じゃあ死んだほうが良かったって言うのか!」

林木、エプロンの胸ぐらのへんを掴む。

鮎太郎「そうは言ってねえだろ。」
林木「そう言ってるのと同じなんだよ!」
鮎太郎「・・・林木お前、オカルトとか詳しかっただろ?」
林木「・・・ああ、だいぶ。」
鮎太郎「さっきよ、りんかが気になる話してたんだ。」
林木「気になる話?(離す)」
鮎太郎「今日の昼過ぎか。俺とサブで法ちゃん家行ったんだよ。」
林木「サブ?」
鮎太郎「電話しただろ?」
林木「ああ、あいつか。クビにしたほうがいいぞ。」
鮎太郎「まぁどっか抜けてるとこあるけど、クビにはしねぇよ。」
林木「んで?」
鮎太郎「ああ、そのとき家には誰もいなかった。俺たち二人だけだ。そこにりんかが帰ってきた。」
林木「お前それ不法侵入だぞ。」
鮎太郎「不法じゃねぇ。いつでも来ていいって言われてんだよ!黙って聞いてろ!」
林木「(頷く)」
鮎太郎「んでまぁりんかが帰ってきて、色々あって言ったんだ。あれ?お母さんは?って。」
林木「(頷く)」
鮎太郎「当然法ちゃんは帰ってきてねぇし、俺もサブも見てないから知らないっつったんだ。そしたらよ、法ちゃんの声がしたって言うんだよ。別に法ちゃん家はそんなでっかい豪邸なわけじゃねえ。誰か来たんならすぐわかる。」
林木「(頷く)」
鮎太郎「そんで俺らが帰ったあとに、りんかは法ちゃんと話をして、そんで法ちゃんは買い物に出掛けたっていうんだ。お前この話どう思う?」
林木「(首をかしげる)」
鮎太郎「なんかしゃべれよ。」
林木「いや、黙ってろって言われたから。」
鮎太郎「そういうことじゃねぇんだよ!ほんと変わらねえな。・・・んで、どう思う?」
林木「いやどうもなにも、そのあと事故にあったんだろ?」

重苦しい間。雷。

鮎太郎「なんでそうなるんだよ!話聞いてたか?!」
林木「うん。話を聞いたからそうなったんだが。」
鮎太郎「法ちゃんが事故に遭ったのは今朝の話なの!事故に遭ったあとで、りんかは法ちゃんと会ったって言ってるのは変だなって話なの!」
林木「最初からそう言えよ。回りくどいよ。」
鮎太郎「んがー!・・・で、どうなんだ?」
林木「どうとは?」
鮎太郎「あ、そのよぅ。これってつまりさ、りんかは法ちゃんの霊にあってたってことなんじゃねえか?」

雷が鳴り点滅しているなかで林木がにっこりしていてとても怖い。

林木「あゆたろうくん。」
鮎太郎「どうなんだよ。」
林木「お前昔、あんだけ俺のことオカルト野郎ってバカにしてたくせに、霊にあってたってことなんじゃねえかーあ?」
鮎太郎「あんときゃその・・・悪かったよ。」
林木「(とてもいい笑顔。)」
鮎太郎「だからお前よ、何とかなんねえのかよ。」
林木「法ちゃんは・・・まだ生きてるんだな。」
鮎太郎「ああ。」
林木「お前、高校のときの立花先輩、覚えてるか?」
鮎太郎「・・・いや、あんまり。」
林木「立花さん、今そういう仕事やってんだ。何かわかるかもしれない。行ってみるか?」
鮎太郎「・・・頼む。」

へいまとりんか、鮎太郎に呼ばれて登場。

鮎太郎「へいま、りんか。俺たちはちっと出てくる。帰りになんか買ってくるか?あ、マシュマロでいいなら今あるぞ。(出す)」
りんか「・・・いらない。」
鮎太郎「そうか。・・・じゃあ行ってくる。へいま、頼んだぞ。」
へいま「うん・・・」

鮎太郎退場。

林木「しっかりな。お兄ちゃんだろ?」
へいま「(力強く頷く)」
林木「行ってくる。」
へいま「行ってらっしゃい。」

林木退場。合わせてへいまとりんかシステム裏に退場。
その11

エプロン姿に着替えた八重、まきえ登場。

まきえ「似合うじゃない。」
八重「そうですか?もうなんかすっかりオシャンティになれてますかね?」
まきえ「それはどうかしらね、ふふ。まぁそんなにお客さん来ないから心配しないでも平気よ。そもそもそのお客さんも常連さんばっかだしね。」
八重「地域密着型ですね!みんなの人気者、そういうのにも憧れてたんです!」
まきえ「じゃあ奥で洗い物してるから、お客さんきたら・・・」
八重「いらっしゃいませ!」
まきえ「そうそう、その調子。なんかあったら呼んで。」
八重「はい!」

まきえ上奥退場。

八重「あぁこういうのいいなぁ。・・・やっぱり占いとか向いてないよね。知らないひとと喋るの苦手だし、全然儲からないし、あ、でも知らないひとと喋るのはウェイトレスもおんなじか。ま、いいや!新しいあたしの始まりさ!」

縄屋が店に入ってくる。

縄屋「あのー。」
八重「おおおいらいら!」
縄屋「いらいら?」
八重「しゃい!」
縄屋「いらいらしゃい。あ、うんわかった。」
八重「あの、まだ、ちょっと待ってください!」
縄屋「あ、いいよいいよ。さっきのコレさ・・・」

封筒を出す。

八重「お?あ、さっきの刀の人!」
縄屋「あ、うん。あれさ・・・」
八重「ストーカー!」
縄屋「違う。それは違う。」
八重「おっかけ?」
縄屋「違う。・・・あれさ、妖刀だって知らなかったからさ、なんか悪いことしたなーって思って、返品してもらっても大丈夫かな?」
八重「え?いいんですか?」
縄屋「うん。そんなつもりじゃなかったんだよ。」
八重「そりゃ願ったり叶ったりですけど・・・」

まきえ登場。

まきえ「お客さん?なんだ縄屋か。」
縄屋「沖野さん、立花さんは?」
まきえ「地下でなんかやってるみたいだけど。」
八重「ん?ん?常連さんのかたなんですか?」
まきえ「常連っていうか仕事仲間ね。」
縄屋「縄屋です。いつでも彼女募集中。」
まきえ「(蹴る)」
八重「ん?ん?ん?さっきの妖刀を売ったのが縄屋さんで、その仕事仲間がまきえさん?」
まきえ「やっぱあれお前か(蹴る)」
縄屋「痛いですよ沖野さん。それにあれは立花さんが・・・」
まきえ「あ?」
八重「んであたしもまきえさんの仕事仲間ということは・・・あたしの仕事仲間?」
縄屋「まぁそうなるかな。よろし・・・」
まきえ「ならねーよ(蹴る)ボッタくりやめろって言ってるだろうが。(蹴る)お前いつも口だけ。」
縄屋「だいぶ痛いです。」
八重「まきえさん大丈夫です!それに刀の代金返してもらったんですよ!確かに縄屋さんは褒められたヒゲではないですけどお金帰ってきたんで問題ありません!」
縄屋「ありません。」
まきえ「(蹴る)」
縄屋「いや、今は蹴るとこじゃないでしょ。」
まきえ「なんか憎たらしい。」
八重「あ、それでまきえさん。刀なんですけど・・・」
まきえ「ああ、それなら立花くんが・・・」

立花登場。

立花「どうしたの?」
縄屋「立花さん、沖野さん蹴るのやめさせて下さいよ。」
まきえ「あ?(蹴る)」
立花「無理だね。」
縄屋「じゃなかった。あの刀、もう妖力は使い果たしたって言ってたじゃないですか。」
立花「うん。」
まきえ「まだだったんでしょ?」
立花「うん。」
縄屋「そんなもの押し付けないで下さいよ。」
立花「うん。」
八重「おおお、なんかわかんなくなってきた。お金は返してもらったままでいいんですか?」
立花「うん。」
八重「住み込みで働いててもいいんですか?」
立花「うん。」
八重「じゃあいっかー!」
立花「うん。」
まきえ「うんしか言ってないじゃないの。」
立花「うん。」
まきえ「(蹴る)」
立花「(ガードする)」
縄屋「・・・いやいや、僕が最初に仕入れたときのお金は返してもらえるんですか?」
立花「いいや。」
まきえ「いいや。」
縄屋「なんでですか。これだと僕だけ損してません?」
三人「してない。」
縄屋「あーもう。んじゃあ、妖力を使って普通のになったら、また僕がもらってもいいんですね?」
三人「・・・」
縄屋「いやそうなるでしょ。お金払ってるの僕だけなんですから。」
まきえ「お金、お金。」
八重「セコいですね。」
縄屋「なっ!せこッ!」
まきえ「こいつ目先の金しか考えてないの。」
八重「あぁ、そんな空気出てますね。」
立花「まぁそういうなよ。こいつもこのセコさでずっと生きてきたんだから。そう簡単には変えられないさ。」
縄屋「立花さんまで!」
立花「わかった返す返すって。でももうちょっとかかるぞ。調べてみたら相当溜まってるからなぁ。」
縄屋「だからそんな物騒なものそのまま渡さないで下さいよ。」
立花「悪かったって。ちょっとめんどくさかったんだよ。」
縄屋「ハッキリ言わないでよぼやかしてよ!一歩間違えば大変なことに・・・」

鮎太郎、林木登場。

林木「立花さん!」
立花「おう、どした?」
鮎太郎「四万十川鮎太郎です。簡潔に言う。今、俺の幼馴染みが死にかけてんだ。あんたなら何とか出来るんじゃねえかって言われて来た。」
立花「ちょうどいいな。」
林木「どうなんですか?」
立花「できる限りのことはしてみるが、お前ら覚悟は出来てんだろな?他人を助ける覚悟だ。」
鮎太郎「・・・ああ。お願いします!」
林木「お願いします!」
立花「よーし、んじゃ軽く説明するぞ。これは儀式みたいなもんだ。とりあえずそのへん座れ。」
まきえ「あ、大丈夫よ。私いつもめっちゃ掃除してるからね。」

皆座る。

立花「ハイそれじゃ始めます!まず第一話。死んだらどうなるか?一般的には天国だとか地獄だとかを思い浮かべるでしょうが、正しくは、全く同じ別の世界に行く、です。これはですね・・・」

立花の話のなか暗くなっていき鮎太郎のナレーションが入る。

鮎N「俺ぁ思ってもみなかった。まさか立花さんの話が、午後七時から始まったのに、午後十一時半を過ぎてもまだ終わらないなんて・・・」

完全に暗くなり少ししたら明転する。
そのあいだに縄屋はこっそり退場し、鮎太郎以外は疲れはてている。
立花「ハイ!98話目終わり!それじゃ次99話目!」
鮎太郎「まだあるのか・・・」
林木「立花さん、あとどのくらい・・・」
立花「もう終わるよ!覚悟したんじゃなかったのか?」
林木「そりゃそうですけど・・・」
立花「必要なことなんだよ。これでも楽になったほうだ。昔はな、酒を浴びるほど飲みながら全力でゴーゴー踊ってたんだぞ、ひたすら。そうやって空っぽにして近づけるんだよ。こう、ふわふわ~っとした状態に。」
林木「もうだいぶフラフラしてます。」
立花「んじゃあ行くか!ホラ立って立って!」

皆立ち上がる。
立花、八重に鍵を渡す。

立花「八重さん、奥に地下室の扉がある。二人連れて先に行っといてくれ。」
八重「わかりましたぁ。こちらでーす。」

八重に続いて林木、鮎太郎退場。
立花奥からまきえ刀を持ってくる。

まきえ「で、私の出番ってわけ。」
立花「98話目まで終わった今、このあたりは限りなくニュートラルだ。吸い込まれるように周りの悪いものが集まってきてる。」
まきえ「人使い荒いんじゃないの?」

立花、指輪を出す。

立花「99話目。頼りにしてる。」
まきえ「タイミングおかしくない?」
立花「今日は色々あったから、渡しそびれちゃって・・・ごめんなさい。」
まきえ「ま、いいか。(ケースだけ渡す)」
立花「?」
まきえ「ケース、預かっといて。あとでもらうから。」
立花「ああ。またあとで。」
まきえ「ハイハイ、またあとで。」

立花退場。

まきえ「・・・さてと。」

指輪をはめる。

まきえ「立花まきえ、参ります。」

まきえ無双がはじまる。
最後でっかいのを乱れ雪月花で倒して暗転。
十三場

日替わりと法子が登場。日替わりはさっきのインプロを有効活用し、一方的に楽しく喋っている。

日替わり「あ、ごめんねー。なんかさっきから私ばっかり喋ってちゃって。こんなの久しぶりだからもう嬉しくてさ。」
法子「・・・」
日替わり「なんだなんだー。暗いぞーくろたさん、いやさ法子さんと呼ばせてもらおう!」
法子「そんなことないですけど・・・」
日替わり「あーいいなぁこういうの。私ずっと一人だけど、誰かと居るのもいいもんだなぁ。(うっとり)」
法子「あの・・・本当に大丈夫なんですか?」
日替わり「え?大丈夫大丈夫。・・・ん?心配してるの?」
法子「あ・・・えと・・・」
日替わり「かぁー!たまんないねー!・・・よーし、私の唯一の友達である法子さんの為だ。・・・特別だよ?」

日替わりの匂いのする女の口にだすのも畏れ多い力で場転。
その間にへいま、りんか登場し椅子に座る。

法子「・・・え?」
日替わり「ほらよく見て?じっと。」

会話が聞こえてくる。

りんか「・・・だいぶ前なんだけどさ、魚屋のおじさんが持ってきてくれてさ、かに食べたじゃん。三人で。お兄ちゃん覚えてる?」
へいま「・・・ああ。」
りんか「結局かに食べたのなんてあのときだけだけどさ。美味しい美味しいって言っていっぱい食べた。あたしも、お兄ちゃんも。」
へいま「・・・なんの話だよ(席を立つ)」
りんか「でもさ、お母さんは全然食べなくてさ、私達にくれたじゃん。」

法子、二人から目を背ける。

日替わり「ダメだよー。せっかく喋ってんだからちゃんと聞いてあげようよー。ね?(見させる)」
法子「・・・」
へいま「・・・嫌いだったんだろ?確かそう言ってた。」
りんか「・・・そうだね。お母さんは、私かに苦手だから、あんたたち食べていいわよって言ってた。だから喜んで食べた。二人で。」
へいま「ほら。」
りんか「本気で言ってんの?」
へいま「・・・は?」
りんか「魚屋のおじさんに聞いたんだよ。お母さんかに大好きなんだって。まぁそのあと、あーいや、そんな好きでもなかった。むしろ嫌いだったかもなー悪いことしたなー、俺としたことがついうっかりって言ってたけど。」
へいま「じゃあ嫌いなんだろ?なんなんだよお前。」
りんか「お母さんが嫌いなものをさ、おじさんがわざわざ持ってきてくれるわけないじゃんか・・・」
へいま「・・・」
りんか「ねぇホントわかってる?」
日替わり「あたしもかに食べたーい!」
法子「・・・やめて。」
りんか「お兄ちゃんのそういうとこ、ホントイライラする。」
へいま「俺はお兄ちゃんだぞ!」
りんか「お母さんは!・・・きっとさ、ずっとこうやって、ちょっとずつ無理してきたんだよ。私たちの為に!」
へいま「俺達の・・・」
りんか「お兄ちゃん考えたことある?私とお兄ちゃん育てるのにお母さん一人でどんだけ苦労してきたんだろうって。いっぺんだって考えたことある?!」
へいま「・・・」
りんか「毎日毎日ふらふらして。情けないよ。」
へいま「お前いい加減にしろよ!」
法子「もうやめてッ!」

日替わりの匂いのする女の口にだすのも以下略場転。
へいまとりんかストップ。

日替わり「親の心子知らず。はー、大変だよねぇ。」
法子「・・・」
日替わり「この子達結局、自分のために法子さんが生きていて欲しいって思ってるんだろうねー。エゴだエゴだ。」

システム上の扉が開いていく。
日替わり、その真ん中へ。

日替わり「だからホラ、行こ。私と・・・一緒にさ。」

ゆっくり手をさしのべる。

日替わり「ね、法子さん?」

日替わりの匂いのする以下略場転。
四人退場。
下椅子に八重、センターに鮎林、上椅子に立花登場。

鮎太郎「なんだコレ。」
林木「・・・わからん。」
立花「おし、じゃあ行くぞお前ら!お前らは今、原子だ。それをどこにでも行ける状態、つまり素粒子にする!ここにあるのはそのための機械だが、まだエネルギーが足りない。これから仕上げをする!」
八重「(なんか感動している)」
鮎太郎「わかったか?」
林木「・・・さっぱり。」
立花「おいおい勘弁してくれよ。これ以上簡単な説明はできねぇぞ!」
林木「もうちょっとだけわかりやすく・・・」
立花「踏め!」
二人「は、はい!」

二人がペダルを踏み始める。

立花「よし、いいぞ。八重さん!」
八重「(我にかえる)はい!」
立花「君はこのメーターを見といてくれ。」
八重「39。」
立花「そうそれだ。その数字を僕に教えてくれ。」
八重「39!」
立花「いや、たまにでいい。」
八重「39!!」
立花「・・・」

立花、上手のポジションに戻り忙しそうにカタカタする。

林木「お前さ・・・」
鮎太郎「あぁ?」
林木「まだ好きなの?」
鮎太郎「・・・悪いかよ!」
林木「ふーん。何回フラれたの?」
鮎太郎「何だよ!お前だってフラれただろが!」
林木「や、俺は幼稚園のときだし。」
鮎太郎「四回だよ四回!幼稚園小学生、中学二年、高校一年の四回!これでいいか!」
林木「ふーん。結婚してからは?」
鮎太郎「結婚してからフラれるわけねぇだろ!・・・法ちゃんと黒田が付き合いはじめてからは、そんなこと言うわけねーだろうが。バーカ。」
立花「お前らもっと踏めー!」

もっと踏む。

林木「バレバレだけどな。」
鮎太郎「何もバレてない!」
林木「(笑)」
鮎太郎「何笑ってんだよ!踏めよ!」
林木「・・・まっすぐだな。」
鮎太郎「あ?」
林木「だいぶキモいけど。」
鮎太郎「うるせえ!」

鮎太郎照れ隠しにすげえ踏むと転ぶ。長靴を脱ごうとする。
林木、手を差し伸べる。

林木「手伝ってやる。今回だけだぞ。」
鮎太郎「・・・ありがとよ!!」

二人が手を掴むと素晴らしくかっこいいイントロの曲が始まる。
鬼こぎする。

八重「メーター上がってます!60・・・70・・・!」
立花「いいぞお前ら!踏め!踏め!」
林木「奢れよ!終わったら!」
鮎太郎「ああ!」
林木「お前んとこのいっちゃんいいやつだ!盛り合わせろ!」
鮎太郎「サブ盛りだな!」

サブちゃんちょっと出てすぐ帰る。

林木「想像させるなァァァ!(めちゃ踏む)」
八重「90・・・100!・・・108?!うそ・・・まだ上がってる!(お前誰だよ的な感じで)」

立花、妖刀を下椅子のどっかに差す準備する。

八重「エネルギー充填120%!」
立花「いけェェェェ!(差す)」

二人、スローで回転し上奥へ向かおうとする。
林木よろける。鮎太郎の背中を押す。

林木「鮎太郎ォォォ!」

林木、力尽きゆっくりと倒れる。

八重「(だからお前誰だよ的なポーズ)」
立花「林木ィィィ!!(スローで駆け寄る)」

鮎太郎、林木をチラ見する。

鮎太郎「うあぁぁぁぁぁ!!」

世界中のおっさんたちが震えるような雄叫びをあげ退場。
立花が林木を抱き抱える。八重はお前どこのマネージャーだよ的なポーズで固まっている。
日替わりの以下略場転。
三人退場。
日替わりと法子、さっきの位置に。

法子「・・・いやだ。」
日替わり「ん?ほら・・・おいで?」
法子「嫌だッ!!」
日替わり「・・・どうしたのよ。忘れちゃいなよーあんな子達のことなんか。」
法子「忘れない!私の子供たちだもん。だから・・・あなたとそっちには行かない!」
日替わり「えー、あの子たち自分勝手じゃーん?」
法子「いいじゃないそれで!子供なんて自分勝手でいいの!それに私思いだしたのよ。」
日替わり「はぁ・・・何を?」
法子「あの子たちに私が必要なんじゃない!私にあの子たちが必要だってこと!!」

黒田法子の偉大なる母の力で場転。
法子退場。

日替わり「・・・」

日替わり場転。
日替わり、法子を追って退場。
りんかとへいまさっきの位置へ。

りんか「・・・ごめん。ちょっと言いすぎた。」

りんかシステム裏へ。

へいま「・・・なんなんだよくそっ!・・・お母さん(ちょい泣き)」
りんか「お兄ちゃん!・・・いない!お母さんが!」
へいま「?!」

へいまもシステム裏へ行こうとすると舞台上めちゃ光る。

へいま「眩しい!・・・なんだあれ・・・」
りんか「・・・お母さんだ。」
へいま「え?」
りんか「お母さんだよ!(走り出す)」
へいま「りんか!」
りんか「わかるんだよ!あれお母さんだよ!」
へいま「何でわかるんだよ!」
りんか「だって・・・娘だもん!」

りんか退場。

へいま「待てって!」

へいま退場。
法子場転。
うしくんが地上に降り立つ。

法子「おぁぁぁぁ!(着地)」

うしくんを手に入れる。ひもが上がっていく。

法子「ん?ん?帰れた。」

りんかとへいま走り込んでくる。りんかタックル気味に抱きつく。

りんか「お母さん!お母さん!」
法子「おぉりんか、へいまも。ただいま。」
へいま「ただいまじゃないよ!・・・どこいってたんだよ!(めちゃ泣きそう)」
法子「んー、なんか遠いとこ?」
へいま「なんだよそれ。」
法子「それよりあんたたちケンカしてたでしょ。」
りんか「何で知ってんの?」
法子「お母さんが知らないことなんてない!ちゃんも仲直りしなさい。二人だけの兄妹なんだから。」
りんか「・・・うん。さっきは言い過ぎました。ごめんなさいお兄ちゃん。」
へいま「・・・ああ。」
法子「こらっ!」
へいま「あ・・・りんかの気持ちとか、あんま考えてなかった・・・もっと、ちゃんとするから・・・ごめんなさい。(手をだす)」
りんか「うん。(掴む)」
法子「はい仲直り!・・・じゃあ帰ろっか!」
りんか「え?え?お母さん身体大丈夫なの?」
法子「ピンピンしてるじゃない。帰ったら美味しいもん食べよう。かに食べよう。」
へいま「こんな時間にお店やってないよ。」
法子「それもそっか。・・・じゃあ帰ったら、お父さんの話をしよう。」
りんか「え?」
法子「話したことなかったからね。たまにはいいでしょ?聞きたくない?」
りんか「そりゃ聞きたいけど・・・ねぇ?」
へいま「うん。いきなりだね。」
法子「よし帰るぞー!」

法子、元気に退場。

りんか「もー、お母さーん!(退場)」
へいま「あ、ちょ、待ってよー!(退場)」

ちょっと前から見ていた日替わりの場転。

日替わり「あー、もうちょっとだったのにー。なー、友達欲しいよー!(ジタバタする)ま、いっか。」

日替わりの帽子を被る。センターへ。
風の音がする。

日替わり「そう、私の名は○○テル。永劫のときのなかさ迷う日替わりの匂いのする女・・・」

風の音が強くなり下前へ退場しようとする。
脱け殻の鮎太郎登場し道を塞ぐ。

日替わり「ん?」
鮎太郎「法ちゃん・・法ちゃん・・・」
日替わり「・・・もー、せっかくかっこよく帰ろうと思ってたのにー。」

日替わり、上奥へ向かう。
力尽き果てた林木が登場し道を塞ぐ。

林木「鮎太郎・・・鮎太郎・・・」
日替わり「ん?」

風の音がめちゃ強くなり暗転。

お し ま い 。


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