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舞台芸術のマネジメントを行う組織とDX(デジタルトランスフォーメーション)

世の中のだいたいのことは、(組織レベルでも、個人レベルでも)自分で言わない限り誰かがそれを取り上げてくれることはほとんどないので、弊社のDXのことについて今のうちに書いておこうと思います。

「DX」という言葉を耳にする機会も増えてきましたが、「デジタルトランスフォーメーション」とは、企業がデジタル技術を取り入れて業務やビジネスを変革していくことを指します。

経済産業省の定義は下記の通り。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

つまり乱暴に言えば、「アナログでやっていたいろんなことをデジタル化していこう!」ということなんですが、業務そのもののあり方やサービスや製品自体を変えるだけでなく、そのことによって企業文化とか組織風土まで変えていこうということです。まぁ、アナログで良しとなっている価値観の組織にデジタルを取り入れていくには、トップ層はもちろん働く人ひとりひとりの意識と行動変容が必要なので、企業文化まで変化するというのは自明だと思います。

syuz'genという組織を経営して5年目になりますが、コロナ禍以前から「リモート可能、働く時間も固定しない」という、いわゆる「自由な働き方」を目指してきました。同じ場所、同じ時間に働いているわけではない人たちで、同じひとつのプロジェクトを動かしていくには「いかに情報共有するか、いかにコミュニケーションコストを下げるか、どのように離れていてもお互いの状況が分かるようにするか」が重要で、どうすればそれが実現するかに悩み悩んで試行錯誤してきた5年間でした。(もちろん現在進行形で試行錯誤してます)その試行錯誤の結果として、かなりDX推進してきたなぁと思います。

社員13名の小さな組織なので、何かを試しに取り入れて、うまくいけば本格導入し、うまくいかなければ次のトライを行う、というPDCAのサイクルもめちゃくちゃ早いので、3か月で全くいろんなやり方が変わっていたりします。そのスピード感は創業間もない組織ならではですが、コロナ禍でさらに加速したとも思います。

この流れの中ですごく重要だと思ったことが、すごく当たり前なのですが「スタッフ全員の行動変容が起こるまで徹底的に言い続けること」です。多くの組織でDXを諦めてしまうのは、導入側の心が折れてしまうことだと思います。特に、たとえば前時代的な価値観の大御所が組織内にいる場合、そこの行動変容を起こすのはたぶんとても大変。弊社はそういう人がいないので導入ハードルが低いとは思います。

たとえば、すごく基礎的なところを例にあげると、弊社はスケジュール管理と共有にgoogleカレンダーを使っています。全員がそこに自分の仕事のスケジュールを100%入れていれば、「打ち合わせを入れたいのですが、いつが空いていますか?候補日ください」と関係するスタッフ全員にメッセージして、全員から回答をもらい(回答がなければリマインドし)、スケジュールが集まったら調整し、決定したスケジュールを再度全員に知らせる、という作業自体が不要になります。全員のスケジュールを見て、空いているところに入れればいいだけです。

そこに、もともと紙の手帳でスケジュール管理することに慣れている人が入ってきた場合、最初に起こりがちなのが紙とデジタル両方で管理しようとすることです。その人にとっては「スケジュールを入れる=紙の手帳に書く」ということが習慣付いているのでいきなり紙の手帳を手放すことはできません。ミーティングの予定が入ったら最初に紙の手帳に入れて、そのあとでチームで共有しているデジタルのカレンダーに入れるという流れになるのですが、ここで起こりがちなのが「その人にとってのスケジュール管理は紙の手帳で完結しているので、デジタルのカレンダーに入れ忘れる」ということです。

で、チームの中にこういう人が何人かいて、「デジタルのカレンダーでは情報が完結しない」ということになれば、結局ひとりひとりに予定確認が必要となりデジタルの利便性が全く発揮されないことになります。(そして誰もデジタルツールを使わなくなっていく…)

ここで管理者が諦めたらDXは到底無理で、「個人の予定を紙の手帳で管理するのは自由だが、チームでの予定をデジタル管理している以上、あなたのスケジュールの反映漏れが、チーム全体の効率的な動きを阻害している」ということをはっきり伝えなければいけません。たいていの場合は、その人もそこまで意識しておらず「習慣がつかなくて」「なんかいつも忘れちゃって」というくらいの感覚なんですよね。で、しつこくしつこく言い続け「仕事の予定が入ったらその瞬間チームの共有カレンダーに入れる。予定が変更したらその場で修正する」という行動が習慣付くまで、とにかく言い続ける。前の習慣が上書きされて「当たり前」になれば、チーム全体で働き方が効率化できるというメリットが手に入ります。

スケジュールだけではなく、プロジェクトの進捗状況を共有するためのツールやコミュニケーションのためのツールなど、複数のツールを組み合わせて使っていますが、それらすべて同様に「全員が使いこなせるようになるまで、行動が習慣化するまで言い続けること」が必要です。いちいち言いたくない、言わなくてもできるようになってほしいという思いで、口出さないようにしていた時期もあったのですが、そうして緩く運用しているといつまでたっても全然業務効率化もされないし、情報共有も漏れるし、ツールのメリットが発揮されません。

DX推進でやろうとしていることは、やらなくていいことはやらなくてよく、かけずに済む時間をかけずに済むことで、もっとクリエイティブなことにリソース投入できるようにしていくことです。

もう「デジタル苦手」とか言っている時代じゃないと思うんですよね。とくにチームでのプロジェクトマネジメントにおいては。時代の流れもそうなってきたし、改めて書いておこうと思った次第でした。

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