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VOL. 15 繭の手紙

ということで,第10話の『繭の手紙』です.

画面にチラッと映った範囲内を見るに,小説版と羽村先生が手にしている手紙の内容は少し違っていて,手にしている手紙と繭が朗読した内容も少し違っています.

どれも大筋では同じ内容ですが.

DVDに付属のリーフレットに手紙の全文が載ってますが,以下は,ドラマ内での繭の朗読から文字起こししたものです.




先生,あたしは今,急いでこの手紙を書いています.

とっても急いでいるのに,何から書いていいか困っています.


十四のとき,そう,十四のとき,あたしのお父さんは,お父さんじゃなくなった.

不思議なことに,そのときはとっても漠然としていて,ただ,おっきな波に押さえ付けられているようで,

少し息苦しいけど,それでもどこか自然な流れのようで.

それがいつか,いつか不意に,ゆがんで見えて.

お母さんが死ぬときに見せた,あたしに対する強い憎しみの目.

怖かった.

とっても怖くて,それはそのまま,あたしのしていることの怖さに変わって.


あたし,先生と普通の恋がしたかった.

普通に出会って,手を繋いで,おしゃべりをして,時々は焼きもちも焼くの.

春が来て,夏が来て,秋が来る.

ちょっとずつ,ちょっとずつ,二人の間に同じ雪が積もる冬がきて.

バカだねあたし.自分はちっとも普通じゃなかったのにね.


あたしは,お父さんと,あの人と遠くに行きます.

あの人は少なくてもあたしが必要なの.


そう,いつも思ってたことがあるの.

人がまわりにいないからじゃなくて,自分をわかってくれる人がいないから,寂しくなるんだね.

先生も時々,寂しそうだったね.できれば,あたしがずっとそばにいたかったな.

いつか先生に恋人ができたら,きっと,あたしのことは忘れちゃうね.けど,あたしは忘れないでもいい?

先生から聞いたペンギンの話や,朝顔の話,忘れないでもいいよね.


さよなら.さようなら,羽村先生.



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