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VOL. 06 別れのバレンタイン

02月08日(月)

■井の頭公園駅〜学校

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改札を出て走る繭.まあ遅刻ですから.

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走ります.

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やっぱり走ります.

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学校近く.ちょっと笑顔で走って来る繭.

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◻️鎌倉から朝帰りして,遅刻で学校へ来たわけで,まあ,笑顔にもなろうってもんです.

どのくらい遅刻したかというと,↓ こんな感じ(1121).

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■生物室前廊下

羽村先生も当然遅刻.

白衣に袖を通しながら走って,慌てて,書類落としたりする羽村先生.

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■生物室

羽村先生:「ごめん.遅刻しちゃって」

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◻️参考情報)教室の時計は1120頃.

生徒:「起立.礼.着席」

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羽村先生:「ああ,中途な時間なんで」

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◻️羽村先生の似顔絵www 似てないけど似てる.『おねがいしま〜す』は始業式の自己紹介のアレですね.

羽村先生:「今日は,ビデオを見よう.ね」

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元気がない直子.

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ビデオ上映中.
『これはミジンコです』

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腕時計を見て昨日の鎌倉でのことを思い出す羽村先生.

「壊れちゃったみたい」
「ホントのあたしを知っても」
「嫌いにならないでね」

羽村先生がそっと外を見ると……

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繭が正門を乗り越えて入ってくるところだった.

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◻️↓個人的に,女の子のこの着地姿勢がものすごく好きなんですが,わかる人います?

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走って教室に向かう繭.

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途中,羽村先生に気付いて……

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手を振る繭.

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それを見て笑顔の羽村先生.

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顔を鞄で隠して行く繭だが,なにそれな今さら感w

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あの頃の僕たち二人の関係は,一体なんと呼べばよかったろうね.

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恋と呼んだら,きっとキミは怒ったろう.

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けれど,愛と呼ぶにはまだ,僕たちは,あまりにも幼過ぎたんだ.

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■お昼休みの購買〜生物室前

お昼休み,購買でパンを買った繭が生物室へ走る.

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準備室には入らず……

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生物室から入る繭.

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■生物室

誰もいないことを確認しつつ入る繭.

パンをとり出し,袋を膨らます.

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標的(羽村先生)をロックオンでニヤリな繭.

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繭,ゾーンに入ってます.

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準備室の扉が開いた瞬間,パンが入ってた袋で『パーン!』
◻️いやこのダジャレは……

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里佳:「キャー!」

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↑ 繭,痛恨の誤爆.

とっさに,取り繕うように互いを紹介する羽村先生.

羽村先生:「あ,教育実習生の田辺里佳さん」

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羽村先生:「2年B組の二宮君」

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突然の出来事にコワゴワ挨拶する里佳.
里佳:「こんにちわ」

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羽村先生:「あ,パン,買ってきてくれた? 悪いね.いくらだった?」

スライド映写機の後片づけをする里佳.
羽村先生:「ああ,いいよ.あの,あと,僕がやっとくから」

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里佳:「ああ,じゃあ,私もお昼」
羽村先生:「ああ」

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里佳:「それじゃ」

笑顔で会釈して出て行く里佳.

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よそよそしい雰囲気の繭.

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羽村先生:「あと二人.数学と地学にも来てるらしい」

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パンをとろうとした羽村先生の手を叩く繭.

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羽村先生:「いてっ」

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繭:「先生のはないの」

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羽村先生:「いっぱいあるじゃないか.それに五つも食べられないだろ」

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繭:「ぜーんぶ,食べられる」

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繭:「二年B組の二宮君」

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羽村先生:「なんだ.焼きもち焼いたのか」

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からかいモードに入った羽村先生.
羽村先生:「彼女,なかなかチャーミングだしねぇ.なるほどぉ」

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羽村先生:「ふうん.そういうことか」

繭:「どうせ,先生なんか,相手にされないよ」

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羽村先生:「どうして? わかんないだろ」

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繭:「わかるよ」

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羽村先生:「じゃ,キミはどうして相手にするんだ?」

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繭:「あたしは……」

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繭:「ボランティア!」

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羽村先生にパンを投げつける繭.

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羽村先生:「ふふ.悪かったよ.キミの言う通り,心配しなくたって,僕はそんなにモテないよ」

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繭:「どうして?」

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繭:「わからないじゃない」
羽村先生:「わかるよ」

繭:「じゃあ,なんで,あたしは,好きになったの?」

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羽村先生:「ボランティアなんだろ?」

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◻️どうでもいいけど,↑ それ,繭が飲んでた牛乳のパックじゃないの?

二人の笑い.

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羽村先生:「先食べてていいよ」

羽村先生:「片付けるから」

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繭:「先生」

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羽村先生:「ん?」
繭:「あっち向いて」

羽村先生:「え?」
繭:「窓の方」

羽村先生:「なんだよ?」

羽村先生:「なに?」

繭:「動いちゃダメ」

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羽村先生:「なにやってんの……」

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■校舎脇の洗い場

直子,剣道着を洗っている.

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直子:「まったく,冗談じゃないよ.なんであたしがあんなオッサンの胴着まで洗わなくちゃならんのよ」

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新庄先生:「なにをブツブツ言うとんねん」
直子:「あら? いらしたの」

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新庄先生:「ついでにこれも頼むわ」

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直子:「やめる」

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直子:「退部する」

直子:「労働条件悪過ぎるよ」

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新庄先生:「ああ,わかったわかった」

新庄先生:「すまんすまん」
新庄先生に後ろ襟引っつかまれて戻される直子w
新庄先生:「一緒にやろ」

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新庄先生:「えーっと.よいしょ!」

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新庄先生:「はい.そっち持って.はい」
直子:「は?」

新庄先生:「絞るんやないか」
直子:「あぁあぁあぁ」

そばを通りがかるテニス部員と藤村先生.

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新庄先生:「なにやっとんねん」

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直子:「クルミ割り人形」

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新庄先生:「一生やっとけ」
胴着を投げつけて場を後にする新庄先生.

直子:「待って,ちゃんとやるから」

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直子の目の前を通る藤村先生.

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藤村先生:「随分楽しそうだね」

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一気に奈落の底に突き落とされる直子.

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■放課後の職員会議室

教頭と学年主任が何やらひそひそと話し合っている.

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そこへ,呼び出された繭が来て,ドアをノック.

手招きする学年主任.
学年主任:「どうぞ」

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入室する繭.

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教頭:「座りなさい」

教頭:「二宮君.ちょっと聞きたいことがあるんだ」
繭:「はい」

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教頭:「昨日の夜,キミ,何してた?」

教頭の顔を見る繭.

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■職員ロッカーの自販機前

羽村先生:「昨日ですか?」

新庄先生:「うん,電話したんや.晩飯ウチでどうかなと思うてな」

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羽村先生:「ああ.昨日は,あの,学生時代の友人と会いまして」

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新庄先生:「ああ,なんや,そうか」
羽村先生:「何か?」

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新庄先生:「ああいや,それやったらええねん」

羽村先生:「な,なんですか?」
新庄先生:「いや,勘違いやったらええ」

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若干の不信な表情をする羽村先生.

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■職員室前

新庄先生が職員室に戻ると,繭が入り口前でぼんやり立っていた.

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新庄先生:「なんか用か?」

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繭,新庄先生をチラッと見ただけで無言で立ち去る.

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■職員用下足室

腕時計を見る羽村先生.
羽村先生:「あれ,遅れてる」

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里佳:「先生」
羽村先生:「ああ,キミ,まだいたの」

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里佳:「ちょっと,教材研究を」
羽村先生:「ああそう.熱心だね」

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羽村先生:「あ,ねぇ,今何時かな」
里佳:「え?」

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■井の頭公園駅前

駅前の電話ボックスから学校に電話する繭.

職員室:「はい,日向女子高校です」
繭:「あの,生物の羽村先生,お願いしたいんですけど」

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職員室:「あ,ちょっとお待ち下さい」
羽村先生が通らないか周りを気にする繭.

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職員室:「ああ,もう,お帰りになられましたけど」
電話を切る繭.

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井の頭公園の辺りをウロウロして羽村先生を待つ繭だが……

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すぐそこに,里佳と話しながら帰る羽村先生がいたことには気付かなかった.

里佳:「昭和理科大の研究室にいらしたんですって?」
羽村先生:「ああ」

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里佳:「三沢教授! うちの大学の講義にいらしたことがありました」
羽村先生:「そう」
里佳:「先生,ご結婚は?」

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羽村先生:「イヤ,まだ」
里佳:「わかります.生物学や心理学,探求してると,恋愛できにくくなりますよね」

羽村先生:「そう」
里佳:「相手を観察し過ぎて,すぐ,あ〜あ,なんだ,つまんない人なんだって」

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■井の頭公園ホーム

羽村先生は来ず,仕方なく電車に乗り込む繭.

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■井の頭公園駅までの帰り道

羽村先生:「面白い人はいなかった?」
里佳:「最悪ですよ.特にあたしの大学の男の子.脳みそ,サルと移植したみたい」

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羽村先生:「ははは」
里佳:「うふふ」

■二宮家

◻️参考情報)時計は1855.

繭,受話器を持って……

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キッチンへ.

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■羽村先生のアパート

アパート前の坂道

アパートに着いて鍵を開けようとすると電話が鳴っていた.

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急いで部屋に入って電話に出る羽村先生.
羽村先生:「もしもし羽村です」

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■繭と羽村先生の電話

繭:「繭」

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羽村先生:「ああ」

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繭:「何度もね,かけたの」

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廊下を耕介が通っていく.

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羽村先生:「なんかあった?」

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繭:「あたしね……」

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繭:「停学に,なっちゃったの」

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羽村先生:「え?」

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ここで電話が切れてしまった.
羽村先生:「もし,もしもし?」

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繭があわててキッチンを出ると……

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耕介が電話線を引っこ抜いていた.

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怒りと不信の表情の繭.

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■羽村先生のアパート

状況が悪くなって行くことに不安を隠せない羽村先生.

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02月09日(火)

■校内

繭の停学についてクラス内で噂が広まる.

「ねえねえ,繭.停学だって」
「うそー,なんで?」

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「無断外泊でもしたんじゃないの?」
「自分の友達,そんなことしないんじゃないの」
◻️↑ 聞き取りに自信なしです.

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『なに勝手な噂してんのよ』と言いたげな直子.

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■階段下

引き続き二年B組の生徒達のうわさ話……

「噂,あくまでも噂だけどね」
「なになに? わからないじゃん」

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「無断外泊したらしいのよ」
「男とぉ?」

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「先生らしいって」
「えー! だれだれ? 知らない」
好き放題に繭の噂をするクラスのみんなに不満な直子.

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■職員会議室

羽村先生が教頭と学年主任に呼び出されている.

学年主任:「わかってますか.本来なら,生徒が不純異性交友で外泊ともなれば,これは退学なんです.ね」

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学年主任:「しかしまあ,相手が教師ともなればね,教頭」
教頭:「キミ! 軽々しいことを言うんじゃない」

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教頭:「うちの教師に限って,そんなことをするわけがないだろう」
学年主任:「さようでございますね」

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◻️宮原先生,後ろでちゃっかり聞いてますなあ.

教頭:「とにかく,来週校長が戻られてから,改めて,二宮と君の処分を決定することにしよう」

◻️え? 処分の決定,来週ですか? 教頭先生,それはやめてくれ.タイムラインが思いっきり狂ってしまう! 今日は火曜日ですし,来週なんて悠長なことをいわずに,校長には今週中に戻ってくるように言って下さい.お願いします.

溜め息の教頭.
無言を貫く羽村先生.

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■職員室

会議室からできた羽村先生.

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羽村先生を心配する新庄先生.

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こわばる表情の羽村先生にイヤミっぽく話しかける宮原先生.
宮原先生:「お盛んですわねえ.このあいだの佐伯麻美の一件といい」

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羽村先生を養護する藤村先生.
藤村先生:「佐伯の件は無実じゃないですか」
宮原先生:「さあ,どうですか.でも,そんなに焦らなくてもいいと思いますよ」

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宮原先生:「他の先生方みたいに卒業までじっくり待って結婚なさるとか」

藤村先生:「最近の子は,そこまで待ちませんよ.卒業すれば,教師への思いなど,はしかのように引いて行く」

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宮原先生:「それで,卒業前に手を付けるのね」

いたたまれなくなり,席を立つ羽村先生.

藤村先生:「とにかく,バレたのは失敗でしたね」

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職員室を出て行く羽村先生を少々怒りの表情で見る新庄先生.

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■お昼休みの生物準備室

直子が羽村先生から繭の外泊について真相を聞く.

羽村先生:「そう,そんな噂が」

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直子:「繭って,他の子とあんまり口聞かないし,結構クラスで孤立してるところがあるんです.あたしは,割とそういう硬派っていうか好きなんだけど,なんかここぞっとばかりにいいたいことみんな言ってて」

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里佳が準備室に入ってくる.

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里佳:「あたし,お昼行ってきます」
羽村先生:「ああ」

軽く会釈して部屋を出る里佳.

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直子,外を確認して……

鍵を閉める.

生物室への扉も施錠.

直子:「先生,ちょっと,うちのクラスに来て,ピシャッと言ってもらえませんか.そんな噂信じるなって.ほら,なんだかんだ繭,先生にだけは心許してるところがあるし」
羽村先生:「彼女,外泊したっていうのは本当のことだ」

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直子:「え? あ,けどあれでしょ,男の人とどうこうとかいうのは」

羽村先生:「それも事実だ」

直子:「そんなぁ.先生までそんなこと言ったら」

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羽村先生:僕なんだよ」
直子:「え?」

羽村先生:「僕が一緒だった」

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羽村先生のこの言葉にショックを受ける直子.

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羽村先生:「彼女と泊まった」

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怒りの表情の直子.

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■二宮家

直子が繭を訪ねて二宮家へ.

インターホンに応答する男性の声.
家庭教師:「はい」
直子:「日向女子高校の相沢直子といいますが」

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繭に臨時の家庭教師がついている.

家庭教師の兄ちゃんに繭の部屋へ案内される直子.

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直子:「誰?」
繭:「うん,家庭教師」

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直子:「へぇ,なんか,男っぽいねぇ」

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直子:「一応,形式美として,ノート」
繭:「ありがと」

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直子:「けどさ,三和達もあったま来るよ.あることないこと噂をさあ.言ってやったけどね.ピシャリと.お前らふざけんなって.背中の桜吹雪見せつけて」

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繭:「気にしないよ.どんな噂立っても」
直子:「うん」

直子:「あたしさあ」
繭:「ん?」

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直子:「羽村先生に聞いちゃったの.繭と泊まったって」

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直子:「あたし思わず言っちゃった」
繭:「え,何を?」

直子:「ずるいって」
表情が変わる繭.
直子:「だってさぁ」

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家庭教師の足音がして机の方に移動する繭.

直子:「自分は知らんぷりで,繭だけ停学になるってオカシイじゃん.学校も学校だけどさぁ.教師だからって,表沙汰にしないで隠すなんて汚いよ」

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繭:「なんでそんなこと言うのよ」
直子:「えぇ?」
繭:「どうしてそんなこと言うのよ!」

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直子:「いゃ,けどさ」

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部屋のドアをノックする音.
家庭教師:「繭ちゃん,勉強の時間だよ」

繭:なお

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羽村先生への手紙を直に託す繭.

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繭:「あした,先生に渡してくれる」

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繭:「あたしね……先生のこと……いっぱい好きなんだ」

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直子:「うん……」

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直子:「ごめん」

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部屋を出る直子.

家庭教師の兄ちゃんの監視の目は厳しい.

直子が部屋を出た後,もどかしさが募る繭.

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■コンビニ

帰りに買い物をする羽村先生.

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繭とよく似た後ろ姿の子を見つけるが……

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そりゃ違いますわな……

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エリーゼをカゴに入れる羽村先生.

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■アパート前

羽村先生,なんか重い足取りで帰ってきた.

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すると,アパート前に耕介が待っていた.

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対峙する二人.

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■羽村先生のアパート

羽村先生:「いま,コーヒーいれますから」

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耕介:「今日,お伺いしたのは……」
羽村先生:「わかってます」

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羽村先生:「申し訳ありませんでした」

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耕介:「謝るということは」

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耕介:「何か後ろめたさがあるということですか」

耕介:「私は,あなたを少し甘く見ていたようだ」

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耕介:「初めてお会いしたときのあなたは,とてもそんなことをする人間には見えませんでしたからねぇ」

羽村先生:「非難されるお気持ちはよくわかります.ただ,笑われるかもしれませんが,僕は彼女に対して,いい加減な気持ちでは」

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羽村先生:「お詫びしたのは,やはり,教師という立場上,軽率でしたので」

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耕介:「誰かに見られたということか」

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羽村先生:「あ,いえ.それだけでは」

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耕介:「学校に密告したのは,私だ」

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耕介:「驚きましたか.なぜ繭があなたと一緒だったと,私が知っていたか」

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耕介:「本人が,繭が私に知らせてきたんですよ」

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羽村先生:「まさか」

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耕介:「確かに,繭はあなたに惹かれていたのかもしれない」

耕介:「しかし,それは,この世代特有の熱病みたいなものだ.あなたはね,娘の病に付け込んだんだ」

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羽村先生:「それは違うと思います」

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羽村先生:「彼女は……」

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羽村先生:「彼女は,あなたの束縛を嫌っていました」

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耕介:「バカを言うな!」

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耕介:「教師が教え子に手を出した.そんな行為をした自分を正当化するのか!」

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羽村先生:「僕は自分を正当化しようなんて思ってません」

羽村先生:「教師は,辞めるつもりです」

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耕介:「はは,あなたも,熱病に冒されたようだな」

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耕介:「しかし,一言だけ言っておく」

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耕介:「娘は,繭はね.とても君には受け止め切れやしないよ.とてもね」

耕介:「そのうちわかるさ」

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帰って行く耕介.

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耕介にも知られていて,さらに状況が悪化したことを知った羽村先生.

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■新庄先生の団地前

雨の中小走りで帰ってくる新庄先生……

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……をクルマの中から窺う藤村先生の図.

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■新庄先生宅

新庄先生が帰宅すると直子が貴広とはしゃいでいた.

直子・貴広君:「〜おうちはどこ〜♫ わたしのおうちはスイスランドよ〜♫」

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直子・貴広君:「〜やっほほらららら〜♫」
貴広君:「お帰り!」
直子:「お帰り」

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新庄先生:「お前なあ.ちょこちょこ教師の家に上がり込むな」

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直子:「一日早いんだけどさ.バレンタインのチョコレート,持ってきたのよ」

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新庄先生:「オレは,甘いもん好きやないんや」

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直子:「誰が先生にあげるって言ったのよ」
新庄先生:「ん?」

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貴広君:「ほら! こんな大きいのもろてん」

貴広君:「少し,わけてやろか.な」

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直子:「学校で渡すと,あんたがガメる恐れあるからね」

新庄先生:「教師をアンタ呼ばわりすな.誰がお前のチョコなんかガメるかい」

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◻️私事ですが,『がめる』という言葉は,ここで初めて知りました.

直子:「けど,去年一個もらったらしいね」
新庄先生:「ん?」

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貴広君が直子に秘密をバラしたらしい.

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直子:「誰に!?」

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新庄先生:「誰だってええやろ」

直子:「信じらんないからさぁ.誰よ? 白状しなさいよ」

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貴広君:「白状しなさい」
直子:「白状しなさい」

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直子・貴広君:「白状しなさ〜〜い!」

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新庄先生:「自分で買うたんや」

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直子:「息子に見えを張ったのね」
貴広君:「張ったのね」

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新庄先生:「悪かったな」

直子・貴広君:「やっほ〜 ほ〜らららら♫」

直子・貴広君:「やっほ ほ〜らららら♫」

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直子・貴広君:「やっほ〜 ほ〜らららら♫」
新庄先生:「しばいたろか,お前ら.ほんまに」

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直子・貴広君:「〜やほっほ♫」
エプロンのポケットからチョコをとり出す直子.

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直子:「はい」
新庄先生:「ん?」

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新庄先生にチョコを渡す直子.

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直子:「おなかすいたね.よし,始めるか」
意外な展開に戸惑う新庄先生.

貴広君:「じゃあ,イカ!」

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直子:「じゃあ,お姉ちゃん,揚げるから,あっちいってて」
まんざらでもなさそうな新庄先生.

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■新庄先生宅団地前

新庄先生の家から帰る直子をクルマでつける藤村先生.

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藤村先生,歩道にクルマを突っ込み直子の行く手を止める.

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助手席のドアを開ける藤村先生.

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諦めた表情の直子.

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仕方なく乗り込む直子.

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直子の顔を覗き込んだ直後……

クラクションを思い切り鳴らす藤村先生.

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直子:「やめて!」

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団地通路から顔を出す住人たち.

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悲壮な表情の直子.

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新庄先生も出てきて様子を見が,

藤村先生だとは気付いていない模様.

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新庄先生,下まで降りて表に出たときには,クルマは去った後だった.

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02月10日(水)

■登校時の校内

羽村先生出勤.

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◻️いつもよりも賑やかと思ったら,バレンタインデーですか.
◻️なお,私の力量では,この日を2月10日に持ってこざるを得ませんでした.まあ,実際の2月14日は日曜ですし,そのままでも辻褄は合わないのですが.
◻️ドラマ内の世界線では,バレンタインデーは2月10日ということで,御了承下さいませ.

■教員下足室

下足箱を開けると手紙が入っている.

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羽村先生,中身を確認.

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『繭は停学中で学校に来てないはずなのに,誰が入れたんだろう?』な羽村先生.

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■朝の職員室

他の先生方にチョコを配る藤村先生.

学年主任(?):「毎年悪いね.これで娘に自慢できるんで」

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藤村先生:「宮原先生,今年はどなたに差し上げるんですか」

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宮原先生:「羽村先生に考えてたんですけど,若い子がお好きなようなので」

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羽村先生にチョコを差し出す里佳.

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里佳:「あぁ,すいません.あの,今日,あたしたちの歓迎会をやってくれてるというんで,あの,あたしが会費を集めて回るのもなんなんですけど」

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羽村先生:「いや,僕は,今日はちょっと.ああ,会費は払うけど」

新庄先生:「一次会だけやったら,ええやろ.ちょっと,話しあんねん」

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羽村先生:「いくら?」
里佳:「三千円です」

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羽村先生:「じゃ」

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新庄先生の誘いに,何かイヤな空気を感じる羽村先生.

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■二宮家

勉強(のフリを)している繭.

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家の中を見て回る家庭教師の兄ちゃん.

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いつもの猫の絵を描いている繭.

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家庭教師の兄ちゃん監視中.

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時計を気にする繭.

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時刻は1803.

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■居酒屋

教育実習生の歓迎一次会絶賛開催中.

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羽村先生の隣に移動しようとするが,里佳に先に座られてしまう新庄先生.

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学年主任のセクハラ独演会.

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◻️個人的に,『飲み会のセクハラ課長』みたいなのはウゼェので,詳細は割愛しますw

■二宮家

時刻は1927.

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繭:「もう,今日はいいでしょ」

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家庭教師:「勉強はいいよ.けど,僕は君のお父さんが戻るまでいなくてはならない.どういう意味かは知らないけど,外出も電話もさせるなとのことだから」

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席を外す繭.

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家庭教師:「どこいくの」

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繭:「ちょっと,お茶を入れてくる」

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家庭教師:「お茶なら,僕がいれてくる」

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家を出る機会を潰され,イラッとしてる繭.

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■カラオケ屋

教育実習生歓迎会二次会絶賛開催中.

宮原先生,ノリノリで熱唱中.

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少し離れた席で二人だけで話しをする新庄先生と羽村先生.
新庄先生:「ほなら,二宮と外泊したというんはホンマのことなんか」

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羽村先生:「ええ」

新庄先生:「なんでそんなことすんねん.終電なくてもタクシーで十分帰れたはずや」

羽村先生:「確かに,教師としては,帰すべきだったと思ってます」
新庄先生:「当たり前やないか」

羽村先生:「けど」
新庄先生:「けど,なんや」

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新庄先生:「高校生が帰りたないからゆうて,はいそうですかで,一晩付きおうてあげたわけか」

羽村先生:「いえ」
新庄先生:「ほななんや」
里佳:「失礼しまーす」

里佳:「はい,お待たせしました」
二人にグラスを持ってくる里佳

が,歌のリクエストが.
実習生:「里佳ちゃん,はやく」

席を離れる里佳.

羽村先生:「僕は,彼女を……」

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羽村先生:「愛おしいと思ってます」

新庄先生:「おまえ,まさかお前,抱いたんか?」
タバコをふかす新庄先生.

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新庄先生:「どないやねん」

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黙って頷く羽村先生.

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新庄先生:「お前,それでも教師か!」
羽村先生の胸ぐらを掴みあげる新庄先生.

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羽村先生:「教師は辞めるつもりです.もともと,好きでなったわけじゃないし」

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羽村先生を投げ飛ばす新庄先生.

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店員が止めに入るが……
店員:「ちょっとお客さん困ります」

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新庄先生はお構いなし.
新庄先生:「ちょっとこい」

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■お店の外

羽村先生を壁に投げ飛ばす新庄先生.
新庄先生:「ふざけるな!」

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羽村先生をぶん殴る新庄先生.

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通りまで吹っ飛ぶ羽村先生.

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さらに投げ飛ばす新庄先生.
新庄先生:「やめたらええやと? 何がやめたらええじゃ!」

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新庄先生:「立て」

新庄先生:「腐った根性,叩き直したらあ」

立ち上がる羽村先生.

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新庄先生:「オレはなあ,お前はもうちょっとマシな奴や思とったんじゃ.少のうてもな,他の連中よりは.それを」

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ドアに叩きつけられる羽村先生.
里佳:「警察呼ばれちゃいますよ!」

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新庄先生:「お前は辞めたらええわい.けど,その後のこと考えとんのか」

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新庄先生:「認めたことなんねんぞ.二宮退学や」

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新庄先生:「何が愛おしい思いや.お前,単なるエゴイストやないかおらぁ.自分さえよかったらええいうエゴイストじゃお前は!」

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他の先生方を押しのけて店に戻る新庄先生.

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ドアにもたれてへたり込んだまま,呆然の羽村先生.

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■二宮家

繭,紅茶の滴を太ももに落として,何やら画策中.

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紅茶のカップを……

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わざと床に落とす繭.

繭:「あちっ」

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家庭教師:「あ〜あ」

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『お前がカーペットを拭けよ』って感じでティッシュの箱を差し出す繭.

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繭:「あち〜」
色仕掛けで状況打開を図る繭だが……

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家庭教師:「悪いけど,誘惑には乗らないよ」

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家庭教師:「正直言って,君は僕の好みではないからね」

作戦不発で開き直る繭.
繭:「わかるわ.フリフリのスカートタイプでしょ」

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余裕の笑みの家庭教師の兄ちゃん.
家庭教師:「どうかな?」

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繭:「できました」

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家庭教師:「そ.でも,君って見かけによらず,問題児なんだね」

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家庭教師:「こんな見張りみたいなことまでさせて」

家庭教師:「どんな問題を起こしたんだい」

家庭教師:「まあいいさ」

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家庭教師:「僕には関係のないことだから」

家庭教師:「バイト代も破格なんだし」

時刻は1945.

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約束の時間が迫ってきて焦りの色を隠せない繭.

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家庭教師:「ああ,ここ,違ってるね

家庭教師:「これはまず,xとyの点を中心に円を描いて」

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家庭教師:「コンパスない? コンパス」

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黙って机の引き出しを開ける繭.

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家庭教師の兄ちゃんがコンパスをとろうと手を出した瞬間,思い切り引き出しを閉める繭.

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繭,その隙に部屋を飛び出す.

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■家を出たところの階段

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途中,後ろを振り返りながらも……

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走って階段を下りる繭.

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電車で学校へ

■学校前

繭,走って来る.

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正門に到着するが,羽村先生は来てない.

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校内の時計は2012.

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■教育実習生歓迎会後の公園

噴水のフェンスに腰掛けてる羽村先生.

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羽村先生に駆け寄る里佳(ハンカチをどこかで濡らしてきた?).

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ハンカチを羽村先生のキズに当てる里佳.
羽村先生:「痛ぁ」

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◻️羽村先生の『痛ぁ』は,小声ですが確かに入ってます.

里佳:「久々に見ちゃった.男の人の喧嘩.熱血教師って感じでいいな」

羽村先生:「オレは,教師を失格なんだ」
里佳:「え?」

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羽村先生:「救いようのない男なんだよ」

時刻を確認する羽村先生.

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羽村先生の横にくっついて腰掛ける里佳.
里佳:「なんかいいな.殴り合ったあとのそういうセリフ」

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里佳:「母性本能をくすぐられちゃうな」
羽村先生,里佳の話は耳に入ってない様子.

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里佳,もう一度,羽村先生の口元のキズにハンカチを当てようとするが,羽村先生の頭の中は(多分)それどころではない.

羽村先生:「いま何時?」

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里佳:「八時半ですけど」
羽村先生:「そう」

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鞄を持って一人行く羽村先生.足元がちょっとふらついてる.

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後をついて行く里佳.
里佳:「大丈夫ですか.送りますよ」

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羽村先生:「あ,いいよ」

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タクシーを止める里佳.

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里佳:「明日学校で!」

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振り返らずに右手を挙げて答える羽村先生.

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見送る里佳.

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■学校校内

繭,正門を入って校内で待つが,羽村先生は来ない.

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繭:「くしゅ」

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校内の時計は2058.

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■羽村先生のアパート

羽村先生帰宅.

食卓に玄関の鍵を置く羽村先生.繭からの留守電を聞いている.

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『今八時十五分,遅いぞ,遅刻だぞ.せっかくウチ抜け出してきたのに』

脱いだコートを椅子の背もたれにかけ,マフラーを椅子に置く羽村先生.

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『八時半だよ! もうこっち向かってると思うけど.一応,念のためでした.裏門と間違えてんのかな』

洗面台で濡れタオルで口元のアザを拭く羽村先生.

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『マッチはいかがですかぁ.はぁ,寒いよう.んもう怒ってるよ.ぷんぷん.帰っちゃうからねぇ.だってもう九時過ぎだよ』

『あのね……』

留守電の繭の声のトーンが変わったことに『ん?』となる羽村先生.

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『今日ね……どうしても,会いたかったんだ.先生,あたしのせいで,迷惑掛かっちゃったから……お詫びもかねて.なんちゃってね』

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部屋の時計を見る羽村先生.

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時刻は2323.

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鎌倉でのことを色々思い出す羽村先生.

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『壊れちゃったみたい』
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腕時計を手に取る羽村先生.

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窓の外を見ると雪が降り始めていた.

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ベランダの窓から外の雪を眺める羽村先生.

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電話が鳴る.

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とるのに一瞬躊躇する羽村先生.

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羽村先生:「もしもし,羽村ですけど」

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耕介:「繭と代わってくれ.いるんだろ? 繭を出してくれ」

羽村先生:「ウチには来てませんが」
耕介:「ウソを言うな!」

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時計を確認する羽村先生.

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時計は2324.

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◻️さっきの2323から,ドラマ内でも本当に一分しか経ってないです.

耕介:「もしもし」

耕介:「もしもし?」
繭がまだ学校にいると確信した羽村先生,耕介の声を無視して電話を切る.

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コートを手に取り部屋を出る羽村先生.

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■正門前

雪が降る中,学校に向かって走る羽村先生.

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正門に着いたが,繭がいない.

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少しあいている正門から校内に入る羽村先生.

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■校内電話ボックス前

羽村先生,周りを見渡すがやっぱり繭はいない.

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時計は2352.

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学校まで来ては見たものの,為す術なしの羽村先生.

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◻️ところで,この電話ボックス.セットじゃなくて,本物の電話ボックスだったらしい.

繭:「はっくちゅ」

◻️このくしゃみになってない繭のくしゃみ,嫌いじゃないw

くしゃみに振り向く羽村先生.

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電話ボックスの中で立ち上がる繭.

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その繭を見て,『しょうがないな』という溜め息交じりの羽村先生.

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羽村先生が来たのに気付いて笑顔になる繭.

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電話ボックスを出て……

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羽村先生に向かって走る繭.

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が,足を滑らせてこけてしまう.

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繭:「きゃっ」
駆け寄る羽村先生.

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繭:「よかった.12時前で」
ポケットからチョコの箱をとり出す繭.

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繭:「チョコ.バレンタインの」

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チョコを受け取る羽村先生.
羽村先生:「バカだなあ.こんな遅くまで」

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立ち上がる二人.
羽村先生:「風邪引くじゃないか」

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羽村先生,自分のコートを脱いで繭にかけてやる.
繭:「きっとね,来てくれるような気がしたから」

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繭:「遅くなっても来てくれるって」

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羽村先生:「オレは……」

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羽村先生:「もう二人で会うのはやめよう」

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羽村先生の突然の言葉に手が止まる繭.

繭:「え?」

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繭:「どうして?」

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羽村先生:「面倒なのはヤだよ」

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笑顔が消える繭.

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羽村先生:「教師,クビになったら困るしね」

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羽村先生から突き放されて呆然とする繭.

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立ちすくむ二人.

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目に涙を浮かべる繭.

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言葉が出ない繭.

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繭はコートを脱ぎ捨て行こうとするが……

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とっさに羽村先生が繭の腕をつかんで,傘をさし出す.

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羽村先生:「おぃ,傘…」

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羽村先生の手を振り払う繭.

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落ちるチョコ.

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繭はそのまま走って正門を出て行く.

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走り去って行く繭を見ていることしかできない羽村先生.

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コートを拾って呆然と立ち尽くす羽村先生.

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02月14日(日)

■校長室

羽村先生,校長に「繭との宿泊はデマで,耕介の勘違い」と報告.

校長:「それじゃあ,単なるデマだと言うのかね」
羽村先生:「ええ」

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羽村先生:「彼女の父親の勘違いです」

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校長:「そうかぁ,いやぁ,ホッとしたよ」

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教頭:「キミはもう帰っていいよ」

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羽村先生を見る繭.

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繭の方を見て,黙って小さく頷く羽村先生.

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無言で校長室を出る繭.

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校長:「いやぁ,報告を受けたが,まったく私は信じてなかったよ.理事長から君のことは,朴訥過ぎるくらいの好青年だと聞いていたからね」

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校長:「昭和理科大の研究室でも,三沢教授から最も信頼を受けているということらしいし・・・」

あのときからキミは……

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……もう決して笑わなくなってしまったね.

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僕が犯した小さな裏切りを……

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……いつまでも忘れないように.

サポートして頂けると,ベランダで踊ります.