VOL. 14 羽村先生のモノローグ
ドラマの各話の冒頭と終わりにあった羽村先生のモノローグを文字起こししてみました.
まあ,タイムラインの方に書いたものをコピペしただけなんですけどね(大笑).
VOL. 01 禁断の愛と知らずに
運命はほんの小さな出会いで変わると人はよく口にする.その言葉にしたがうなら僕の運命は紛れもなく変わっていった.高校教師になった冬の朝,出会ったこの少女によって.
自分のかつて出会った教師たちの事を思い出していた.しかし,それもほんの一瞬だった.理想の教師像を模索するなど,自分にはどうでもよいことだから.
できれば無難に時を過ごし,春からは自分の研究と平凡で穏やかな家庭を築くんだ.平凡,それこそが僕の理想だ.優しいときの流れはいつもそこに用意されているのだから.
VOL. 02 嘆きの天使
次第に彼女に振り回されている自分を感じていた.ただ,そう,まだこの頃は溜め息をつけばそれで消える.その程度のことだったけれど.
あのときの僕には失うものが沢山あるような気がして受話器越しの彼女の声が震えていたことにまだ気付いてはやれなかった.
VOL. 03 同性愛
昨日と同じように穏やかな朝の日差しで一日が始まりを告げる.そして,僕のささやかな希望といえば,あしたも同じようにこの朝を迎えられる.ただそれだけだった.
あのときの僕には誰の声も届きはしなかった.キミの告げる言葉が事実であれ真実であれ,あのときの僕には.
VOL. 04 僕のために泣いてくれた
教師という職業にもともと未練などはなかった.あのとき僕が見つめていたのはぼんやりとした霧に隠された自分自身の不安定な足元だけだった.
あのときキミはいつまでもそばにいて一緒に泣いてくれたんだね.こんなちっぽけで弱虫な僕のために.
VOL. 05 衝撃の一夜
キミは覚えているかい? あの頃から僕たちは徐々に自分の存在をお互いの心の中に見ることができたんだね.誰かに見られたら壊れてしまう.そんな儚く消えてしまいそうなキミが僕の中にいた.
例えばそれがどう思われようと,例えばそれでどうなろうと,彼女を愛おしいと思う気持ちは変わらないだろう.僕は彼女を愛していた.
VOL. 06 別れのバレンタイン
あの頃の僕たち二人の関係は一体なんと呼べばよかったろうね.恋と呼んだらきっとキミは怒ったろう.けれど愛と呼ぶにはまだ僕たちはあまりにも幼過ぎたんだ.
あのときからキミはもう決して笑わなくなってしまったね.僕が犯した小さな裏切りをいつまでも忘れないように.
VOL. 07 狂った果実
あのときの自分の気持ちは今でも良く覚えている.そう,ただ残ったものといえばキミにもらったキーホルダーと救いようのない喪失感だけだった.
キミの小さな肩がいつまでも震えていたね.ひとりぼっちになろうとしたキミをひとりぼっちの僕が抱きしめていたあのとき,僕だけの胸の中にキミはいた.
VOL. 08 隠された絆
あの頃の僕は一日がとても長く感じていた.自分の気持ちを伝えられないもどかしさにキミもまた苦しんでいたね.
僕はもっと早くはっきりとした意思表示をキミにするべきだったんだ.別の大学の研究室に入るために論文を書いていること.きちっとしたかたちで教師を辞めてからキミと向かい合おうとしていたこと.
僕もまた素直に態度で示せないジレンマがあったこと.キミが生徒であり僕が教師であるという社会的なモラル.そういったことすべてが何年かあとの二人にとってはきっと笑い話になっているに違いないのだから.
VOL. 09 禁断の愛を越えて
心の中で小さく安堵のため息を漏らしていた.あのときの僕はキミの顔をまともに見ることすらきっとできなかったから.
生まれて初めて「愛している」という言葉を口にした.あのときの僕は一方でキミにまだ拭い切れない嫌悪感を抱いていた.
VOL. 10 ぼくたちの失敗
あのときの僕たちはただそこに砂の城を築こうとしていたんだね.ほとんど人の来ることのない小さな公園の片隅に.
いつかキミと僕は同じ一線で結ばれた優しい放浪者だった.
VOL. 11 永遠の眠りの中で
指先の震えが止まるまで気付くことができなかった.あれから僕たちはすべてを失ってしまったね.
僕は今,本当の自分がなんなのかわかったような気がする.いや,僕だけじゃなく人は皆,恐怖も怒りも悲しみもない.まして名誉や地位やすべての有形無形のものへの執着もない.ただそこにたった一人からの永遠に愛し愛されることの息吹を感じていたい.そう,ただそれだけの無邪気な子供に過ぎなかったんだと.
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