またよみ協会 さなえさん です。
数日前に47歳になりました。
自分から言いますけど、
「若く見えますね」って言われます。
日本語って、面白いですよね。
「ワ、カ、ク、ミ、エ、ル」
そうなんですよ。見えるだけなんですね。
実際は、50肩に悩むアラフィフです。笑

さて、47歳になった私ですが
今年度、絵本と子育てについて話す講師業を始めて11年目となります。
この約2年程はコロナの影響もあり講演会自体が開催されないこともあり、講演回数は減っておりますが、それでも講演活動を始めてから少しずつ話す場が増えていき、累計すると何千人という親子さんに
お会いしたことになります。

そんな私がまだ講師になって2年と少しの頃に書店イベントで出会ったママとのエピソードと、私が「絵本を使った子育て」で大事にしていることを今日はお伝えしたいと思います。

8年前のその日は、
書店で
おうちでの読み聞かせの
悩みにお答えするイベントを開催しました。
イベントの最後に
「まだしばらくいますので何か質問ある方は個別にどうぞ」とお声かけをしました。
すると、あるママが(3歳くらいに私の目には見えた)男の子の手をひいて私のもとにやってきました。
そしてこう言ったのです。

「なんでもよく食べるようになる絵本はありますか?」

はい、出ました!
これが、できるようになる絵本問題(と私は呼んでいます)
「○○できるようになる絵本」を知りたい問題です。

なぜ、私が問題視しているか。
それは、こちらの記事もお読みいただきたいです。

絵本導入期の5要素「せいかつ」

さて、先の質問をくれたママ。
隣にいる男の子は自分のことを言われているのがわかっているので私のことをじーっと見ていました。
(※今回のエピソードの話からは脱線しますが、子どもの悩みを子どもに聞かれてしまう場で話すことには注意が必要です。というより私は大反対派です。
子育て広場などで、親子が輪になり子育ての悩みをシェアしよう!というものがたまにありますが、そういうの、子どもの人権に対する意識が低すぎると私は思います。
この件に関してはまた別の機会にお伝えできたらと思っています。)

私は男の子にそっとアイコンタクトしたあとに
ママにこう聞きました。

さ「ふーん、なんでそんな絵本知りたいの?」
マ「この子、なんにも食べないんです!!」
※以下 さなえさん→さ
    ママ→マ
さ「ほー。ところで、この子何歳?」
マ「2歳です」
さ「(デカイやん、食べてへんってうそやん)」
※(心の声)
さ「2歳ねー。ところで、なんも食べないって言うけど、何食べてほしいの?」
マ「野菜です」
さ「(でた!また野菜食わしたいを絵本でどうにかしたい系)」
さ「なにも食べないって言ってるけど、この子がっちりいい身体してるねー!何食べてんの?」
マ「ごはんです。お米です、お米しか食べません!」
さ「ふーん。でさ、絵本って家で良く読む?」
マ「家ではあまり」
さ「そーかー」「でな、ちょっといい?」
マ ???
さ「この子、ごはん好きなんやろ?」
マ「ごはんしか食べません!」
さ「ごはん好きなんやなー」
さ「私、ごはんがめっちゃ美味しそうな絵本知ってるよ」
マ ???
さ「絵本読んで野菜食べるようになるってのは、あるかもしれない。すごい確率低いって私は思うけど。そーいうハナシ、良く聞くやん?これ読んで食べるようになったーっとか」
さ「でもそれな、普段から家で絵本読んでる家やからってハナシやで、うまくいったとしても」
さ「私、こう見えて絵本詳しいから、ここで野菜の絵本、2.30冊挙げること簡単やねんけど」
「今日は、ごはんが美味しそうに描いてる絵本すすめるわ」
マ「はい、、、」

困惑していたでしょうね。こんな変化球。笑。
完全に話が斜め上に向かってる!!
ママに私が書店の棚から出しておすすめした絵本がこちら。

『おにぎり』
平山英三ぶん
平山和子え
福音館書店

未読の方がいましたら、これを機にぜひ。

さ「この絵本見て!(中を見せながら)めっちゃごはん美味しそうやろー」
マ「はい」
さ「これ、買ったら?」
マ「うーん、はい、そうします」
さ「そうしとき」
マ「はい」

ここまで読んで皆さん、
嘘でしょ?って思いますよね。書いてる私もです。
だって、「野菜を食べるようになる絵本」を知りたいママの要望に応えず、なぜか?!「ごはんが美味しそうな絵本」を買わされるまでのやりとり。
「これ、買ったら?」って押し売りですよね。

でもですね。やはり会話とは
その場にいる自分たちにしか感じられない
ものってありますよね。
私はこのとき、このママの苦しみを痛いほど感じていました。
○○しか食べない、という「偏食」は単なる好き嫌いとは違う領域の、発達上、非常に向き合うのが難しい案件です。
子どもの特性により、いわゆる一般的に言われている「子どもの食事」のマニュアル通りでは到底解決できないことも多く、場合によっては専門家のアドバイスが必要でしょう。
とにかく、私に「なんでも食べるようになる絵本はありませんか?」という質問に来たママは、SOSを私に発していました。
この人に話を聞いてもらいたいという感覚が私に対してあったのかもしれません。
会話を文字化すると軽いやりとりに見えますが、私はこのママの辛さを全力で受け止めていました。

私のすすめで、書店で「おにぎり」を買ったママ。私に「ありがとうございました」と言って帰っていった声と私に向けた目を何年も前のことですが覚えています。
こんな言い方悪いですが、要領のあまり良くなさそうな真面目な人柄をひしひしと感じながら、「このママはしんどいやろなぁ」という気持ちで見送りました。

それから1ヶ月半くらいたった頃です。
私にメールが届きました。
そのメールの書き出しに
「以前、○○(書店名)で読み聞かせをしていただいたときに野菜を食べないと相談したものです。」
とありました。
はいはいはいはい、あのママね!
すぐに思い出しました。
(ホンマは、なにも食べないって言ってたけどね!)

そのメールを読みすすめると、
大袈裟ではなく、「絵本講師を一生の仕事にしよう」と決意させることが綴られていました。
それが、次のような文章です。

「あれから毎日、「おにぎり」を読んでいます。
なぜなら、息子が毎日「読んで」と持ってくるからです。


私は息子が生まれてからずっと、この子にいいと言われていることは全部やってあげたいと思って頑張ってきました。
だけど、「おにぎり」を読んでいて気がついたことがあります。
私は、「おにぎり」を読んでいると、この子が望んでいることをしてあげていると子育てをしてきて初めて実感しています。
相変わらず野菜は食べなくて悩んでいますが、教えていただいたとおり、市の発達相談の予約を入れました。
(私が発達相談のことを話しました。)

このママは、あの日、私に会って、私と話して
悩みを解決させた訳ではありません。
それどころか、知りたかった「野菜を食べるようになる絵本」という情報も得られませんでした。
それでも、1月半経ってわざわざメールをしてくれるほどの「何か」を得たのです。

「何か」とはなんなのでしょう?
読んでいる皆さんに考えていただきたいです。

私にとってあの日、野菜がテーマの絵本を
数冊挙げて「野菜食べるようになるといいですね」と優しそうな声かけをすることは、とても容易いことでした。
それでも、なぜ、そうしなかったか。

多少大小はありますが、子育てに悩みは付き物です。
子育てに対して「絶対的自信」を持つのも難しいでしょう。
ですが、ただ一つ。
「これだけはできている」
というものを持っていれば、それが
子育てをする自分を自分が支えます。
それが、「強さ」だと私は思います。

できることが多い人
器用で要領良く物事をこなせる人
そういう人が「強い」のではないのは
確かです。

「これだけはできている」
この実感をどの親にも持ってもらいたい。

私が絵本を使った子育て
「待ちよみ」を提唱する理由です。

「待ちよみ」について、マタニティ期から
知ることができ、赤ちゃん誕生までに
準備をすることができる。
それが「またよみ」です。

今日は、まだ駆け出しの絵本講師だった頃の
エピソードと、その頃から変わらない私の思いについてお伝えしました。

2021.6.14
またよみ協会代表 内田早苗









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