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巣立ち

屋根裏に巣をつくった椋鳥たち
月明かりで森の姿もはっきり見えるのに
椋鳥たちはぐっすり眠る
夜中に眠れない私が寝返りをうつと
椋鳥がもぞもぞ動く音
椋鳥も目が覚めて、まだ朝ではないと
二度寝しているのかな
太陽の陽がひとふさ現れると
椋鳥母さんは起き出して外に飛び出す
子どもたちは「腹減ったー」と大騒ぎ
子どもたちが巣立つまで
この騒ぎがつづく
こんな時代がわたしにもあったのだ
子どもたちの腹を満たすことを使命として
とびまわり台所にへばりついていた
あっという間に
椋鳥の子たちは巣立つ
ヒトの子の巣立ちまで時間はかかるが
過ぎてしまえばあっという間だ
遠くに飛びたて
海も越えろ
私が見ることが叶わなかった世界を
見て欲しいと思った
そのとおりに子らは飛び立ち
帰ってこない
巣立ちすれば別個のヒトなのだ
椋鳥母さんは
どこかの森で巣立ちした子らを識別できるのだろうか
わたしの前にも知らない子が立つ
役目を終えたのに、生活はつづく
 
 
 
※2024年7月8日に岩手日報に載った詩です。今回は、詩歌をしない知り合いの方たちの反響がありました。親だからわかるあるあるな話だからです。喜びも悲しみもたくさん味わって、私たちは最後はひとりで生きていかなくちゃいけない。


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