花綵列島
壺という壺に月光脈打つ
独り居の星食べるよう猫まんま
寄席ひとつ魂食べて繭ひとつ
わたしたちバベルの塔に着ぶくれて
手足冷えカラスきれいな空食べる
鹿の血の雪に染み入る静けさや
白衣脱ぎ全ての紙燃やし雪
雪野にてキツネノママゴト緋毛氈
花綵列島ちいさなちいさな老夫婦
誠実なあなたの吃音蝶が来る
演芸場
うつっぽい状態で、やる気が起きないとき、ネットで桂枝雀(二代目)や古今亭志ん生(五代目)など一昔前の落語を聞いていました。「饅頭こわい」「代書屋」などの知っている話を聞いて笑って、なにか安心するのです。
演芸場へ行き落語を聞きたい。夫が「最初に行くなら、鈴本がいい」と言います。今年一月に時間がとれて、上野の鈴本演芸場へ行きました。
一七時の開場前から並び、前から三列目に座りました。前座というか、プログラムに載っていない男の子が落語を一席しました。その子は、そのあと舞台で雑用係もしました。
終演は二〇時四〇分。三時間笑ってわらって楽しめました。落語家は、名前も顔も初めての人ばかり。落語だけではなく、高齢な漫才師、人の良さそうな手品師、若い紙切り師。 紙切り師は、客からのリクエストで紙を切って作品を作ります。女性客がリクエストした作品をもらうとき、さっとおひねりを渡していました。やってみたいです。
休憩時間に隣の人がお菓子を食べています。「私もお菓子を持ってくればよかった」とおもいました。鈴本演芸場のお稲荷さん弁当は売切れでした。
印象に残った落語家は、春風亭百栄。サッカーの試合で、オフサイドをとった審判に抗議するフェルナンデスとそれをとめるガルシア。バカバカしいやり取りが続きます。印象が強すぎて、家に帰っても百栄落語が頭でリピートされニヤニヤしていました。
トリは柳家喬太郎。客から声がかかります。マクラが長くてみんなが笑い機嫌よくなります。でも、最後はほろりとさせておしまい。落語で泣くとはおもいませんでした。
正月席の千秋楽でしたが、私は繭玉に包まれたように幸せになって、しばらく席を立てませんでした。
※「豆の木」No.21 May.2017 より
「豆の木」に参加したのはこれが最後だったかしら。俳句を書かない時期があってやめてしまったけれど、続けていればよかったなあ。下手糞でも載せてくれていたのだから。
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