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マタギの館 第一話『幼子の証言』


キイィィ~

皆さま
マタギの館へようこそ
お越し下さいました |_-)))

この館では
このマタギに起こった恐怖な出来事を
皆さまに体験していただこうと思っております|_-)))

まず最初にお断りしておきますが
このマタギには
霊感は全くございません
霊体も
見えたことは一度もございません

しかし
この世の中には
ふと、些細な事で
奇妙に感じる事…
不安に思う事…
不気味と捉える事が出来る事柄が数多く存在いたします|_-)))

そんな出来事の数々を
このマタギの視点から
お話しさせていただこうと思っております

その話を聞いてみて

“それは気のせいだ…”
“考えすぎだ…”

もちろんそう思っていただいても
結構でございます

ですがもし

“怖い…”

少しでもそう思っていただけたのならば

このマタギは
それだけで本望でございます…|_-)))

第一話
『幼子の証言』

これは、私がまだ幼稚園に通う頃の話です。

その頃、私達家族は母方の祖父母の家から目と鼻の先の距離に住んでいました。
生まれた時から、いつも祖父母が近くにいる環境。
幼稚園にはいつもおじいちゃんが迎えにきてくれ、公園に連れて行ってもらったり遊んでもらったりで…
一日のほとんどをおじいちゃんの家で過ごし、いつの間にか、すっかりおじいちゃん子になっていました。
特に楽しみだったのは、祖父母の家にお泊まり。その時はおじいちゃんのベッドで一緒に寝ていました。
しかし、お泊まりの時は不安な事がひとつだけありました。
その家になんとなく恐怖を感じていたんです。

その家は木造の二階建て。40年程前の当時でもかなり古かったと記憶しています。玄関を空けるとまずは広い土間がお出迎えし、一階のすりガラスの引戸と。左手に二階へ続く、細く暗い階段が伸びていました。祖父母達はその二階部分で賃貸で生活していて、一階は空き家になっていました。
今でも不思議に思うのですが二階には最初から台所がありませんでした。外観は一軒家。それでも別々の世帯として借りられていた家…
二階は長い廊下にほぼ縦に並ぶ様に四畳半の和室が三部屋。
私が生まれる前、その家に越して来た時におじいちゃんが、唯一ある洗面台を台所に改造する為、すぐ横の押し入れをぶち抜き、細くて狭い台所をこしらえたそうです。
そして台所はないのに、トイレだけはやたら立派な印象。廊下のつきあたりに位置していたのですが、奥の個室の和式トイレと手前に男性用小便器も完備。後はトイレを出て左側にサンルームという程のものではないですが、ちょっとしたスペースがあり、一階宅の裏庭が見下ろせる様になっていました。

一階が開いているのにどうして一階は住めないのだろう…

なんでも祖父母達が越してきた時には
一階には老婦人がひとりで住んでおられたとか…
おじいちゃんは、その頃から足や腰を悪くしていてずっと空き家のままなのなら事情を説明し、一階に替えてもらえば良いのに…
小さい私でしたが、そんな風に思っていました。

そんな祖父母の家に泊まったある夜の事でした。
祖父母はいつも真ん中の四畳半の部屋で寝ていました。おばあちゃんは畳に布団をひいて、おじいちゃんと私は、おじいちゃんの寝台でいつも一緒に寝ています。(寝台=ベッド。当時おじいちゃんはそう呼んでいました)
その日なぜかふと、夜中に目を覚ましたのです。時間はわかりません。おばあちゃんが寝ている方には、背の低い箪笥が3つばかり並んでいたのですが何故かそちらにすごく違和感を感じたのです。
仰向けで寝ていたので首だけをクイッと右に向けてみました。

すると、箪笥の上から二つの目が、じっ…とこちらを見つめていました。

黒い髪の毛に着物を着た…

そう、それは市松人形でした。
部屋は暗いのですが人形のまわりだけ、なんとなくボウッと薄明るかったのでハッキリと人形だとわかりました。
祖父母の家にその様な人形はありません。
すぐ横に寝ているおじいちゃんを揺すり起こし「人形がある、こわいよ…」と訴えたのですが、おじいちゃんは「大丈夫、寝たら大丈夫だから…」と言って目を開けて見る事もせず、そう言うだけ。
私は、こわい、こわいよ…と心の中で叫びながらも、とにかく必死で目を綴じて眠ろうとしました。いつの間にか眠ってしまい、朝になりました。
目が覚めて真っ先に箪笥に目をやりましたが、既に人形はなく、そしてその話を大人達に伝えました。
“長くて黒い髪の着物を着た人形”だと…
子供の頃、その人形を市松人形と呼ぶのだとは知りません。そういう風にしか伝えられませんでした。
しかし、私が寝ぼけていたのだと誰も信用してくれませんでした。

それからどれくらい月日が経ったのか、ある日…

私はサンルームからひとり、一階の裏庭の見下ろしていました。
一階の裏庭は普段からおばあちゃんが畑を作っていて、裏庭へは一階からでなくとも家と家の間の狭い路地を進み、裏口から入れる仕組みになっていました。
おばあちゃんと度々野菜をとりに行っている見慣れた裏庭…を、見下ろしていると

一階の縁側に何かがぶら下がっていたのです。

あっ!!
女の人!?

と思った次の瞬間、今度は何故か、私は一階の縁側にたっているではありませんか!?
頭上には派手な着物を着た女の人が、ブラブラと下がり、その足は私の顔の辺りにペチ、ペチと当たります。

ひいぃぃ!!こわいよ~!

必死でもがこうとしながら、私はハッと気がつきました。
おじいちゃんの寝台で昼寝をしていて、今度は本当に夢だとわかりました。
ですが気になって急いでサンルームから裏庭を見てみると…
良かった!
そこにはいつもの裏庭があるだけでした。
大人になってから、これも解るのですが女の人の着ていた着物は長襦袢だったようです。

市松人形と、裏庭に下がる女の人…
幼い私が何処かで見聞きした怪談話に恐怖を覚え、そんな気持ちから、そういった夢を見せただけなのかもしれません。

ですが一度だけ、今思うと変だなと思う事がありました。
おじいちゃんが一階の引戸を開けた事があるんです。
私はおじいちゃんの後ろにぴったりとくっついてそっと覗き見ていました。
誰も住んでいない部屋なのに、中は家具類がそのままになっていた事。長い間誰も使っていない筈なのに、今も誰かが住んでいる様な気配…
そしてその時、気がついたのですが、一階の引戸には南京錠がかかっていて、
その鍵は何故かおじいちゃんが持っていた、という事…

おじいちゃんが鍵を管理していた事…
そして
その時、何故開けたのか…

おじいちゃんが亡くなった今となっては
知る由もありません…

如何でしたでしょう…|_-)))

幼子は何らかの影響で、つい怖い夢を見てしまい
それが現実と区別のつかなくなる事も、あるものです

しかし…

通常は見える筈のないものが
見えたり感じたりしてしまうのも
また幼子なのでは、ないでしょうか…|_-)))

では
次回もマタギの館で
お会いしましょう…|_-)))






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