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第13話 脱皮

一方、アイは豚達を手作り小屋へと連れて行った。

そしてその後、涙によってデターに戻ったメデタを再び人化する為の培養液を取りに一旦研究所へと戻った。

アイが向かった先は、メデタと最初に出会った第5研究室。

その部屋にはアイが研究と実験のために培養液に浸けられた昆虫が棚の上に沢山並べられている。

「あったわ。これなら丁度良いわね。」
アイはデスクの引き出しから手の平サイズの小さなスティック状の容器を取り出した。

それから冷蔵庫の中から緑色の培養液が入ったビーカーを取り出しすと左手に持つスティック状の容器のフタを親指でカチッと開けた。

そしてその中に右手の培養液入りビーカーをそっと容器の入り口に添えると慎重にこぼれないように注ぎ入れてフタをすると、アイはそのまま急いで給仕室へと向かった。



一方その頃、マーブル博士とジョン達はエレベータの前へと来ていた。

扉が開くとマーブル博士、ジョンが先に入り、その後ルイス、ネルソンが入り2人に背中を向けるように立っている。

「兄さん、覚えてますか?子供の頃に一緒に昆虫採集に行った時の事。」

「あぁ、もちろんだとも。バカみたいに毎日行ってたのぉ。雨の日も風の日も、飽きる事なく昆虫を探しとった。じゃが、ジョンは本当はわしに合わせて付いて来とったんじゃろ?」

「え?何故分かったんですか?」

「そりゃ分かるよ。何故ならジョンは昆虫よりも動物が好きじゃったからのぉ」

「いやいや。別に昆虫が嫌いだったという訳ではなくて、確かに動物は大好きでしたね。それは今も変わりません。

あの日、生まれ育った田舎の裏山で1匹の迷い子豚を見つけてペットにして飼い始めたのがそもそもの始まりでしたね。

友達からはその時から『ブタなんかペットにして、変なヤツだ!』なんて、変わりもの呼ばわりされたものです。

『ピギー・ジョン』という名前もその友達が付けたあだ名でしたが、今ではその名前が定着し沢山の方々に覚えてもらえるようになったお陰でこうして養豚家としても他の事業でも成功する事が出来ました。好きこそ物の上手なれとは良く言ったものですね。」

「わははは!そうじゃったなぁ!ピギー・ジョン(豚太郎)と言う名前はジョンにぴったりじゃ!

おぉ、その話で思い出したが、わしが採集した昆虫の標本にさしとったコオロギやバッタをその豚のエサにして喰わせたことがあったなぁ。あの時は流石のわしもショックじゃったわい。」

「あははは。そんな事もありましたね。豚は雑食なのでエサが無い時は兄さんの昆虫には助けられました。」

「そうかそうか!豚の助けになっとったなら良かった良かった!わははは!」

エレベーターは1階へ到着し扉が開く。
扉側のルイスとネルソンが先に出て両サイドに立つとマーブル博士、ジョンの順番に出た。

「この研究所を出て裏手に回ると小さいが畑があっての。野菜などを作っとるんじゃが、そこにアイちゃんが作った小屋で豚の世話をしとるはずじゃ。」

「そうですか、楽しみですね。では参りましょうか。」

4人は外へ出ると建物の裏手へと向かった。


その頃、アイは給仕室へと戻っていた。

「メデタ~?どこにいるの~?出て来て~。」アイはメデタの姿を探していた。

すると「ここだよ~!」と言う声がかすに聞こえた。

カサカサ、カサカサと冷蔵庫の下から10匹程のデターがゾロゾロと現れた。

その中で先頭にいる1匹のデターがアイに近づいて来た。

「アイ!僕だよ!メデタだよ!」
メデタは大きな声でアイに話しかけた。
その声に気付いたアイは中腰の姿勢になりその姿を確認した。
「良かった。メデタ、おいで。」
アイが右の手の平を差し出すとメデタはカサカサカサっと近づいて手の平に乗った。

「アイ、仲間達に全て伝えたよ。そしてみんなが協力してくれるって!」

「本当?良かったわね!それじゃすぐにマーブル博士に知らせに行きましょう!」

「あっ!でも僕この姿のままだと」

「大丈夫よ!その為にこれを持って来たの。」
アイはポケットからあの容器を取り出して、メデタに上から液体をたっぷりと振りかけた。

するとすぐにメデタの体に変化が起きはじめた。アイはすぐさま地面にメデタを置いた。

メデタの体はムクムクムクと徐々に大きくなっていく。

「うあぁぁぁぁ‼︎あぁぁぁ‼︎」
メデタは苦しそうにバタバタと暴れ始めた。

「メデタ⁈大丈夫⁈」

心配するアイをよそにメデタはみるみる人間サイズになっていく。

するとメデタはうつ伏せになった状態で動かなくなった。

その後、背中に亀裂が入り、ベリベリという裂ける音がした。

その裂けた背中の辺りからゴソゴソと何かが動いた。

そして、中から何が頭を見せ、いきなりドバーッ‼︎と飛び出て来た‼︎

「うおーー!脱皮ー!」と叫びながら中から出て来たのは全裸で両手を上げた人化したメデタだった。

背中には羽根が生えている。

「ビックリしたぁ!メデタさっきよりなんだか身体つき良くなってない?」

「驚かせてごめんね!なんだか最初人化した時よりも格段に最高に良い気分だよ!」

「人化すればさらに成長速度も加速するのかしら?」

「分からないけど。とにかく前とは違うのは確かだよ。」

「まだまだあなた達についての研究は必要ね、未知数だわ。それよりさぁ服を着て、急いでマーブル博士の所へ行きましょう!」

「ああ!行こう!そうだ僕の仲間も数名連れて行って良いかな?」

「ええ、もちろん。」

メデタは他の仲間達を10匹ほど両手に乗せると白衣のポケットに忍ばせた。

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