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レイアウト② 観察

■レイアウトでキャラクターや背景作成時、大事なのは描く対象物をじっくりと「観察」すること。

「観察」と聞くとなんだか軽い印象を持つかもしれない。だが、アニメーション作りではとても重要な事柄で、ここをさぼるとすべてが破綻する。
レイアウト①で紹介した負のループに入らない為にも少しづつ考え方を学んでほしい。

アニメにおいての「観察」は設定や実際に在るものを注意深く見て捉えて分解し、その立体や構造、特徴を絵に生かすこと。

仕事のレベルが基準以下の人や新人によく見られるのは「立体や構造、特徴を捉えること」への甘さだ。
そんな当たり前なと思うかもしれないが、ありのままに立体を線画で置き換える時、「観察が甘い」人は謎フィルターが発生して絵が崩れる。

観察が甘いって?

まず簡単な例で見てみよう。
図①②を写し取ってみてほしい。

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これを観察が甘い写し取りだとどうなるだろう?

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どうだろう?
これは写し取れてますよ。と言う人は観察が甘いと考えていい。
もしどうしても写し取れないなら商業アニメーターは諦め個人作家になる事をおススメする。


■もう少し細かい例を見てみよう。
図①②③を写し取ってみてほしい。

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同じくこれを観察が甘いとどうなる?

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何を馬鹿な。これじゃあデタラメだと思うかもしれないが観察が甘い人はこれが普通であり、これを仕事として出してくる。

正確にミリ単位で写し取ってほしいわけではないが、形や特徴が違うと要求される仕事の基準は満たせない。

雰囲気で描いてはいけない。
これは以前説明した基礎④キャラクターの頭身のシルエットににつながって来る。


物体を立体的に捉える為の観察

物体の立体観察とは?

■参考に出した家で簡単な「観察」例を考えてみよう。
まず、この家を一番簡単な形に分解。立体構成を把握。

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■立体の中心などを頼りに各パーツの位置・数・厚みなどを把握。

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■後は全体の印象が変わらない程度に落とし込んで完成。

これらの事を丁寧に考えて描くことがうまさに繋がってくる。
慣れれば一連のタスクを無意識で作業出来るようになる。


観察の準備

■では観察はあるものをそのまま写し取れば良いのか?ということではなく、その為の準備が大切。

よくイラストレーターなどで描きたい物の資料を集めるといった話を聞いたことはないだろうか?実はアニメでもこれは非常に重要。

例えば木を描く時、設定のはじに描いてある木を見て描くと言えばそれも間違いではないがより描きたい木のイメージを補強する為に実際に見たり、画像検索して近い森や木、季節、木の種類などを具体的に考えて資料を集め観察して画面に落とし込む。

これを勘がいい人やうまい人はごく当たり前に行う。
資料がないので描けませんではなく、探すのだ。


これはネットがない時代ならいざ知らず、現代において資料を探すことはうまく描くための必須作業と言っても違いない。ただしそのまま上からトレース禁止などのリテラシーの問題も同時に持っておきたい。


キャラクター立体の観察

■この時必要な準備はキャラクター設定と人体比率の基礎知識

キャラクターの表面的な部分だけでなく、パーツ位置や立体の繋がりを理解したうえでなければキャラクターは立体的にならない。

人体比率の基礎知識などは検索すればすぐに出てくるのでぼんやりでも覚えて欲しい。特に顔を描く上で大事なのは「耳の位置」新人ほどおろそかにしやすいので基本的な耳の位置は絶対に頭に入れて欲しい。
新人の描いたキャラクターの肘が伸びやすいのも比率を甘く見ているからだろう。

なぜここまで立体的に捉えることに注力するのか?
それはアニメが物体やキャラクターを「動かす」からだ。
この時に把握が甘いと立体的に描けない。何となく描いているだけでは立体は生まれない。

空間の観察

■物体の観察から空間の観察へ
アニメの観察は描きたい対象物の立体や特徴だけに収まらない。

コンテを読み込み美術設定を比べ観察して必要な空間を導くこともまたアニメの観察の言葉に含まれてくる。

例を見てみよう。
空間が分かる美術設定があり、空間内に3人のキャラクターが居て、三枚のコンテ絵がありその絵を描いてほしいとなった時、まずどう観察するのだろうか?

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観察が甘い人はコンテの背景をただ美術設定に合わせてなんとなく描く人が多いがそれではどんなに丁寧に描いても意味はない。

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自身で分かる空間の分解を行い、真俯瞰図を意識してどの位置にキャラが立って居るのが一番このシーンに置いて良いかを考え配置してから距離感などを考える。

真俯瞰図の①②であるようにA・Bの位置が違うだけで背景は変わって来る。
細かく言えば画角などのカメラのレンズ意識などが入って来るがそれはさて置いてもまずは観察して位置決めと距離感を掴むことが重要。

大きく見れば空間観察も物体観察とさして変わりないことに気づくはずだ。

画面フレーム外を空間として捉えると、距離感への理解が深まり、絵や動きをコントロールしやすくなる。

まとめ

アニメにおいての観察は設定や実際に在るものを注意深く捉え分解し、その立体や構造、特徴を大まかに理解、把握して絵として再構築すこと。そして、それには準備が大切。

■観察を甘く認識すると絵、動き、空間すべてにゆがみが生じる。
自身が思った以上に観察を大事にして「立体・特徴・空間」の把握に努めてほしい。

自身の為にも作品の為にもより丁寧な観察を

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For the glory of Animation

最後まで読んで頂きありがとうございます。小さな知識の積み重ねが力になり、あなたがより自由な表現が出来るよう応援しています!