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レイアウト① 負の連鎖のスタート地点

■レイアウトとはアニメの制作工程で絵コンテの次にある作業、作画打ち合わせ(作打ち)に従ってアニメーターが自身の担当カットの画面設計をすること。

L/Oとも省略表記され、一原(第一原画)とも言われる。上がったレイアウトは演出、監督、作画監督の元をへて担当者に戻され、原画(第二原画)作業を行うが、レイアウトシステムにより技術レベルは崩壊へと突き進み、業界として止められるすべを私は知らない。

今の主流はレイアウトラフ原

■基礎③で示した
「絵を組み上げるビジュアル的なイメージ」
「画面を構成する素材の組み方のイメージ」

をより具体的に絵や指示を示して設計する。

・背景原図…
 背景美術が背景を描く元にするもの。
・ラフ原とカメラワーク…
 カット内で原画時にセルになる絵と動きのラフ、カメラ指示
・タイムシートへの記入…
 セル番号の記入やカメラワーク等の撮影指示記入

ざっくり言ってこれらの項目を丁寧に破綻なくスピーディーに作業しなければアニメーターは食ってはいけない。が、これらを上りとして全クリアしている人は多くない。

クオリティが技術を下げる

■なぜ技術破綻が起きてるの?
現在のアニメのタイトル数の増加による慢性的な人材不足が続き、
求められるクオリティも上がり続け、今の業界は作るのだけで精一杯。
それ以外の事は振り返る時間も予算もないのが現実。

危うさに気づいた一部の会社や個人の方で対応している所もあるのは事実だが、かなりの年数を放置したため、一定の技術を持たずそれに慣れ、自覚なきまま歳を重ねている人が一定数存在する。

修正をする立場の人は、「仕事が基準を満たさない人」の上りを使えるラインまで持っていくことはあっても、「仕事が出来る人」にするのは業務ではない。

■経験上、優秀なスタッフが集まる作品や個人のつてがない限り一般的なテレビアニメにおいて一話数で参加する8割以上のアニメーターが上がりで何かしらの条件を満たしていないと思われる。

なぜ負の連鎖が起きる?

■かつてのアニメーター技術的成長を現した図①

循環例

■現在のアニメーターの多くが置かれている図②

悪循環例

複雑化する作業
現在のアニメーションはデジタル作業に移行中なので基本的な知識・技術に加えアニメーション制作ソフトの使い方、使用する機材への費用、コロナでの自宅作業推奨による人との交流が生まれずらいなど図②以上に複雑です。

アニメーターは図②の場合でも作品を選ばなければ仕事はありますが、そこから先に進めることはほぼ無くなります。

どうすれば技術が上がる?

■元々アニメーターは原画まで作業するのが一般的
動画経験で業界知識の下地を作り、原画に上ってレイアウト作業後に戻ったレイアウトに入れられた修正などを見て引き出しや知識を増やして次の作業にフィードバックしていくのが技術向上の流れ。

クオリティ維持の為、レイアウト作業者に戻すまで膨大な時間を必要とし、結果原画作業を描いた本人がしない事が増え、修正後の見比べも出来ないまま、すぐに次の仕事に取り掛からなければならず、よほどな人でないと新人は技術の停滞が発生、負のループが始まる。

動画も在り方が変わってしまい、かつての知識や技術を吸収出来る内容ではなくなっている可能性もあり、社員制を敷く会社ですらレイアウトが本人に帰って来るのが難しい所も多いだろう。

腕を上げたいのなら、自身の描いたレイアウトは原画まで作業するのが一番確実だが、ここで業界に長年横たわる問題が発生する。

そう。賃金問題だ。

クオリティ維持のため大勢の人間の手元でチェックされている間(ここで数ヵ月以上かかる場合も多い)、アニメーターは単価であれば無給。例え拘束だったとしても必然次の仕事を入れざる得ない。

まとめ

新人は可能な限り、教えてくれる人を探すか付けてもらい、自身のレイアウトは原画まで作業して、原画作業時に何を修正されたかを理解し、アニメーターとしての技術を積み上げるのが理想。

だが、教えてくれる奇特な人は多くなく、原画を待っていては生活が成り立たない。新人が育つまで作品のクオリティもスケジュールも待ってはくれないのだ…。

もし商業アニメーターに憧れる人が居るならば業界に入る前の準備期間が重要だと伝えたい。一度足を踏み入れると他に何かをする時間はほぼ無くなると思ってほしい。

自身の為にも作品の為にも…何をすればいいんだ?
この負の連鎖を今だ止められるすべを私は知らない。

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For the glory of Animation

最後まで読んで頂きありがとうございます。小さな知識の積み重ねが力になり、あなたがより自由な表現が出来るよう応援しています!