うどん屋のアイスクリーム

 昭和46年の夏、遊びに行ってる近所の公園に町営のプールができた。当時、町に本格的なプールが無かったので多くの子供たちで賑わっていました。私も毎日のように友達と泳ぎに行ってました。

 ある日、友達がプールの帰りにかき氷を食べようと言いました。そこは夏になると店先にかき氷の旗を吊るす年寄り夫婦が営むうどん屋でした。夏になるとうどんは売れないのでかき氷やアイスクリームを売っていました。お店は商店街の中心部に近いところにあり、側には小さな川が流れていました。店先には狸の置物があり、その横に朝顔の植木が置いてありました。
 私は大きく「ふじや」と書かれた暖簾をくぐり、店の中へと入って行きました。壁には手書きでうどん100円などとお品書きが貼ってありました。木製のカウンターが店の奥へと向かって伸びていました。そのカウンターには鉄製のパイプ椅子が8個並んでいました。子供の私たちには高くてかき氷を食べることが出来そうになかった。それで店の真ん中にある木製のテーブルがあり、その椅子に座りました。

 店の奥から眼鏡をかけたおばあさんがやってきて「何にする?」と聞いたので友達二人は小遣いの百円を出して「かき氷」と言いました。私は五十円しかもってなかったので恥ずかしくもじもじしていたら「アイスもあるで」と言うのでアイスクリームにしました。しばらくすると銀の皿にのった半球形のアイスクリームとかき氷がテーブルに運ばれてきました。銀のスプーンで食べようとしたら、友達の一人がスプーンでもう一人の友達のかき氷をヒョイッと掬って口の入れました。とうとう言い争いになり、けんかをはじめました。その時に友達から押されてアイスクリームは皿ごとテーブルから落ちました。騒いでいるとおばあさんから「けんかしなさんな」と怒られました。
 泣きそうな私に大丈夫よと言って、新しいアイスクリームを持って来てくれました。あの時のアイスクリームの味は忘れられない。
      




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