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オレらはお前の味方やから

中学2年のある日。
部活のない日だった。学校帰り、最寄駅から家へ向かっていると、金髪でダボダボしたシルエットの服を着た男二人組から声をかけられた。
「向こうの駐車場で人倒れてんねん。ちょっと助けてくれへん?」
「何中学?阪急で通ってんの?」
クラスで話せる友達も少ないのに、なんでこんな陽気に話しかけてくれるんやろう?断りづらいしついて行くしかしょうがない。

「サイフ落としたねん。オレなんかいま1円しかもってへんねん」
「ちょっと金貸してくれや。必ず返すから」
やっぱそういうことなんやな。断れへんよな。断ったらひどい目に遭わされるよな。

「これ、親とか教師に言ったら、お前のことボコボコにするからな」
「さっきボコったやつ、口からめっちゃ血出てたで。歯が唇に刺さったんやな」
「でも、何も言わへんかったら、オレらはお前の味方やから。ムカつくやつとかおったらボコボコにしたるわ」

金出して、返ってこないんやろうな。なんか感じ悪いあいつはボコってほしいと思うけど、もうこの人らと会いたくないな。小遣い全部取られて、家帰って、そっからどうしたらええんかな。

「おい、お前ら何してるんや」
警察官が数人やって来た。通りがかった人が通報してくれたらしい。連行されていく二人。どういう目で見たらいいのかわからない。今日はいいとして、この人らにまたバッタリあったらどうなるんやろうか。

「おい、ますみくん、どうしたんや」通りがかった、近所のクリハラさんが訊いてくる。状況を説明しようとおもうけど口がまわらない。

パトカーで警察署に連れて行かれる。若い警察官がずっと調書を取っている。
「オレらはお前の味方やから、か。調子ええ奴らやな」
「あいつら〇〇高校やけど全然学校行ってへんで」
「あいつら、ホンマに1円しかもってへんかったわ」
「上の取り調べ室、めっちゃ怒鳴り合ってるな。どっちがヤクザかわからへんな」

もう一度現場に連れて行かれ、警察官が犯人役をして現場検証写真を撮り、さらに取り調べは続いて、夜10時くらいにパトカーで家に送り届けてもらえた。

しばらく、現場の駐車場に近寄れなかった。
先生が、「お前らみたいな奴らは、カモがネギしょってるようなもんや。変なとこ寄り道すんなよ」って前言ってたけど、ホンマやな、こんなヒョロいまんまで、ええんかな。
そう思ったけど、どうにかするにはどうしたらいいのか、全然わからなかったし、何もできず、平坦な中学生活は続いていった。


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