別冊群雛 2015年 02月発売号 感想
この感想については、ポリシー2015年版をご参照ください。
この別冊群雛は、群雛創刊1周年を記念して「記念日」をテーマにした作品を掲載しています。
晴海まどか『エブリデイ・アニバーサリー』〈新作読み切り・小説、編集〉
……ふわっとした話が重いテーマを持っている。楽しめる。幅広い読者を対象としている。
君塚正太『愛の断想』〈新作読み切り・小説〉
……信じられない話。歯がゆい。この長さでは伝わりきれないのではないか。
和良拓馬『普通の凡退』〈新作読み切り・エッセイ〉
……感想対象外。普通であることの大切さを気持ちよく表現してくれている。過不足ない文章に好感。
夕凪なくも『赤い猫』〈新作読み切り・小説〉
……際どい話。先に進まざるを得ない巧みさと迫力。
絵空『症例フェリックス』〈新作読み切り・小説〉
……読む人を選ぶタイプ。面白いところは多い。感心してしまう。
神楽坂らせん『決めた日』〈新作読み切り・小説〉
……問題が好きな人向け。うまく書けている。終わり方は私としては残念。
小林不詳『邪気眼は定年に隠る』〈新作読み切り・小説〉
……エンタテインメントに徹している。山田風太郎を思い出す。最後まで「目」が離せない。
米田淳一『記念運転』〈新作読み切り・小説〉
……人の技能の伝承が感動を呼ぶことを改めて気づかせてくれた。ドラマは抑えめ。
Cot『表紙イラスト』〈新作描きおろし・表紙イラスト〉
■■■■今月の気づき■■■■
作品に仕掛けをするときに、それが大きくなるとそれだけ仕掛けが印象に残り、そこだけで良否、優劣を判断されることが多くなります。たとえばミステリーでは、犯人捜しが主になりやすく、その犯行を隠すためのトリックだとか、意外な動機を仕掛けていくわけです。その場合、読者は「ミステリー」と意識して読みます。そして著者も、仕掛けだけで論じられないように社会的な問題であるとか、感動を呼ぶ人間関係、感情の機微などを加えていき、満足度を高くする工夫をしています。「犯人は途中でわかっちゃったけど、こういうエンディングとはなあ」といった作品も多数あります。ミステリーである前に「小説」であるという点を著者は意識しているのでしょう。仕掛けを組みこむときは、読者に対してフェアで繊細な気遣いをする方が得だと思います。誰がどんな気持ちでその作品を読むかはわからないのですから。なお、「試される」ことを嫌う人は世の中にはけっこう多いのです。
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