【掌編小説】最後の一葉(肺葉的な意味で)

某所に芸術家たちが集まるアパートがあった。
ジョンジーとスーはそのアパートの一画に共同でアトリエを構えていた。

ある冬のこと、アパートに肺炎が流行した。
ジョンジーも肺炎に侵され、少しも動けなくなった。

「窓の外の蔦の葉が全て落ちたら、私も死ぬの」

ジョンジーは生きる気力を失っていた。

スーはアパートの芸術仲間である老人ベーアマンに相談をした。
「ふん、バカなことを考えるヤツがいたものだ」
しかし、彼はスーを冷たくあしらった。

蔦の葉が次々と落ちていくにつれ、ジョンジーの病状は悪化し、息もゼロゼロとしていた。

葉が一枚になった日の夜、嵐が吹いた。

翌朝、ジョンジーが目を覚まして、窓の外を見ると蔦の葉は全て落ちてしまっていた。
しかし、ジョンジーの息はとても快調になっていた。

「ああ、あの葉がきっと私には生きろと言ってくれたのだわ」

ジョンジーは生きる気力を取り戻した。

「ねぇ、スー。心配をかけたベーアマンさんにもお礼が言いたいわ」

「ああ、ジョンジー。ベーアマンさんは今朝から、入院をしているんだ」

「え、まさか、激しい雨の中で蔦の葉の絵を描こうとして、寒さで肺炎をこじらせてしまったの!?」

「違うんだ、ジョンジー……」

スーは首を振った。

「……昨晩の嵐で、最後の一葉が落ちたとき、実は君の息が止まったんだ。
そこにベーアマンさんが颯爽と現れて、気管挿管をして、一晩中手動で人工呼吸を続けてくれたんだ」

「!?」

「君の息が楽なのは、彼が気管内吸引でしっかりと痰を取ってくれたからだよ」

「つまり、ベーアマンさんが入院しているのは……」

「腱鞘炎と筋肉痛」

【注意】

☑︎息も止まるような人がそんなすぐに元気になる!?

☑︎抜管が早すぎる!

☑︎鎮静薬は入れてあげた?

☑︎抗生剤は?もちろん痰培は出したよね。

☑︎腱鞘炎や筋肉痛で入院するわけないでしょう…

…というツッコミは野暮でございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?