頼むから全人類【動物のお医者さん】を読んでくれ

好きな漫画をひとつあげろ、と言われたら1週間は悩む自信がある。せめて部門を作ってほしい。

だけれど、この世の中に1作品しか残らないよと言われたら、私は迷わず「動物のお医者さん」を挙げる。

『動物のお医者さん』(どうぶつのおいしゃさん)は、佐々木倫子による日本の少女漫画。(中略)札幌市にある「H大学獣医学部」を舞台に、獣医師を目指す学生の日常をコメディタッチで描いている。基本的に一話完結型。ただし、作中での時間経過は連載中の実時間と一致しており、物語の導入部終了後、主人公ハムテルの獣医学部3年から6年までと、大学院博士課程2年目までの6年間が描かれる。                  
                         Wikipedia「動物のお医者さん」

文学部出身なので、Wikipediaから貼り付けとか担当教員にぶち殺されるレベルではあるがやっぱり便利なWikipedia、わかりやすい。今日だけ許して。

「動物のお医者さん」は、なんでもいいから物語が読みたくてしようがなかった小学生の時、両親に勧められた。

絵柄が古くて、「ちゃお」みたいにキラキラしてない。きっと恋愛ものだ。お医者さんとつくから感動物語で、沢山動物が死んじゃうんだ。
そんなふうに検討をつけながら、でも父も母もどちらかと言うとポップな話(高橋留美子さんとか二ノ宮知子さんとか)が好きなので、訝しげだったけれどとりあえず読み始めてみた。

最初は恐る恐る読みはじめた。身の回りには虫ばかりで動物が居なかったけれど、幼い私でも「動物の絵が上手すぎる」ことだけは分かった。

私の前世からの宿敵のネズ●が出てきた時は、あまりにも本物に似すぎて卒倒するかと思った。
(嫌いすぎて文字面を見ると鳥肌が止まらなくなるので伏字で失礼。千葉にあるテーマパークでよく「ハハハッ」と笑っている彼である。彼自体は嫌いじゃない。)

たまに目を背けながら、気がついたらあっという間に全巻読み終わっていた。

ハムテルのシュールさに笑い、おそらく前世は私と血を分けた兄妹であっただろう、ヤツが嫌いな二階堂に全面的に頷き……と、ただただ緩急なくひたすらに楽しく読んだ。合わない登場人物はいるかもしれないが、嫌な登場人物が驚くほど誰もいない。

まだ読み足りなくて、続きが読みたくて、PCで続編が出ていないか調べた。
続きがないと知った瞬間に、物語が終わる爽快感ではなく寂しさを初めて感じることができた気がした。

その後は好きな話を何回も何回も繰り返し読んだ。

だいたい漫画は1回読めば3年くらいは飽きて読まない。
だけれど、「動物のお医者さん」は1ヶ月に1回は読みたい波が来るし、実家を出てからも帰省するたびに読んだ。今これを書いている枕元にも積んである。


動物たちに勝手に吹き出しやら字幕がついて喋らせているような動物番組は好きじゃないのに、なぜか「動物のお医者さん」の動物の横にかかれる明朝体は好きだった。

動物は正直そんなに得意じゃないけれど、「動物のお医者さん」のチョビやミケやヒヨちゃんや平九郎やスナネ●ミは嫌いじゃなかった。

今になってもなぜ彼らが魅力的に見えるのかはハッキリとしない。

それでも私は、「世界から1作品だけしかあなたは漫画を読めません。選んでください。」と言われたら、多分いつ聞かれても「動物のお医者さん」と即答する。

いつぞや世間を沸かせたエキノコックスも、ネズ●が卵を産まないことも、オペラのトスカのストーリーも、クラーク博士が見つけづらいことも知ることが出来る。

読むことで九死に一生を得ることは無いかもしれないけれど、ふとした時に少しだけ楽しい気持ちになることは保証できる。

頼むから全人類読んでくれ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?