年越し

「あら、おかえりなさい、おばあさん」
おばあさんが寝室に戻ってきました。
「すまないねぇ、華」
昨日から、息子さんやお孫さんが戻って来ています。
私は人形なので、動いたり話したりしているところを見られない方がいいだろうということで、おばあさんの寝室から出ないことにしたのです。
「大丈夫ですよ。
人形だからじっとしているのは得意なんです」
おばあさんはありがとう、と言って布団をしきはじめました。
すると、ふすまが開きました。
「おばあちゃんと寝るー!」
見ると由美ちゃんです。
…思いっきり目が遭いました…
「あのお人形さん、こっち向いたー」
…いえ…頭は動かしてないんですけど…
目だけで見るとおばあさんも固まっています。
「えっと…じゃぁ、おやすみなさいって手をふろうか」
おばあさん、ナイスです!
うまくごまかしました。
「うん、そうする」
由美ちゃんは思いっきり手を振ってくれました。
そして…ついうっかりなんですが…


私も手をふってしまったのです…

「………」
おばあさん…表情までなくなって…
多分私もなんですが…
その時、奇跡が起きたのです。
由美ちゃんが楽しそうに笑ったのです。
「お人形さんも手をふってくれたー!」
それはもう、きゃっきゃと大騒ぎです。
すかさず、おばあさんが言いました。
「そ…そうかい、よかったねぇ。
じゃぁ、これは夢だから早く寝ようね」
「はーい」
そういうと、電気を消して二人は布団に入りました。
なんとか助かりました。
…来年は美子ちゃんの神社の手伝いに行こうかしら…

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