初心の記録

増田洋紀です。このエントリーは、私が2023年渋谷区議会議員選挙に挑戦する決断に至った経緯や決断当初の思いを、主にこれまでにお世話になってきた知人の皆様にお伝えすることを目的とするものです。

これから政治の現場で色んな現実に直面し、アプローチが変わっていくこともあると思います。この文章はいずれ削除するかもしれないし、過去の遺物としていずれ自分のホームページからリンクするかもしれません。
まずは現場に足を踏み入れる前の初心を記したもの、としてご理解いただけましたら幸いです。

1.経緯

(1)2021年まで

  • まず、中学生の頃から久米宏さんの「ニュースステーション」を毎日楽しみに観る子だったことを告白しておきます。高校で最も好きで得意な科目は「政治・経済」でした。

  • 学生時代に、山井和則衆議院議員の著書に感銘を受け直接メールをお送りし、議員会館の事務所でお手伝いをしました。山井さんの教え「最も政治の力を必要とする人々は、最も政治から遠いところにいる。そういう人たちの声なき声の代弁者になるのが政治の仕事だ。」という教えが私の原点です。

  • NTTデータに入社した動機は、1. 公共性の高い仕事をしたかったから。2. ITが、情報の非対称性や、身体障害などのハンデを埋める期待されていたから。応募書類には「誰もが力を発揮できる社会をつくりたい」と書きました。

  • 社会人生活の歩みはFacebookなどで発信してきたとおりです。行政のシステム開発に携わり、2016年に宮古市スマートコミュニティ事業に着任し、2018年頃から社内外で、宮古PR隊、遠恋複業課、事業仕分け、Publitech、WSD、STO創出PJ、GRゼミ。これらの日々から得られたものを改めて書き出すとキリがなくなるので割愛します。地域や分野の垣根を越えて協働する活動や場づくりにやりがいを見出し、社会における自分の役割を探ってきたのがこの5年間だったと思います。

  • 政治との接点はあまり発信してきませんでした。特定政党には属さず、共感する議員の方々に寄付や選挙のお手伝いで細々と関わってきました。自分自身も、政治の力を必要とする人々の声を代弁し、世の中に新しい解決策を提示できるような人物になりたいとは思ってきました。一方で自分自身が表に立てるタイプ、人を代表できるタイプではないとも思ってきました。

  • しかし最近5年程度の間に自治体議員の方々と接する中で、政治家とは究極の協働者だという面を知るようにもなり、少しだけ自分の指向との接点も感じてきました。もちろん政治家には協働の能力だけでなく公権力を預かる責任と人格が最も問われます。私もこの方々のように働く資格があるだろうかと無意識に自問自答をしてきたのかもしれません。

(2)2022年

  • 2022年1月、ある講座の案内がFacebookで目に入りました。立憲アカデミー東京といいます。来年の選挙を本気で目指す方々と一緒に学んでみたいと思って応募しました。「私自身は来年の立候補を想定しておらず、政策の勉強と仲間づくりのために受講したい。それでもよければ受講させていただきたい。」という趣旨のことを応募書類に書きました。

  • 1月11日の夜。応募書類をメールで提出した瞬間の心境は今でも鮮やかに覚えています。これまで応募し参加してきた様々な活動の場への応募時とは全く違う感覚。一番大事な世界に立ち返ってきた感覚。腹落ち。決意。覚悟。清々しさ。自分の内側からそんな感覚が湧き上がってきた瞬間でした。今思えば、この自分の声に気づいた瞬間に、挑戦する意志も自分の中で固まったのだと思います。

  • 受講決定後、立憲民主党東京都連の関係者と2023年の選挙についてコミュニケーションする機会がありました。自分が挑戦するならその次(2027年)だろうと思っていたので勇気の要る決断になりました。しかしもう4年会社に勤めるよりも、今行動に出て政治の場で力を尽くすべきではないか。様々な自問自答を繰り返し、両親や数人の方への相談報告を行って、党へ立候補の意志をお伝えしました。

2.なぜ渋谷区か

私が受講したのが立憲アカデミー「東京」であるため、東京都内の市区前提で調整しました。党内状況も踏まえ渋谷区で議会を目指すことにした理由を記します。

(1)第2の地元

  • 1点目は自分と地域との関係。群馬の地元を出てから5つの市区に住んできましたが、一番長く住んだのは渋谷区でした。居住年数13年。2018年から川崎市の新丸子に住みましたが、東急沿線で、出勤ごとに渋谷で乗り換え、休日ごとに渋谷区内で買い物をしたり作業をしてきました。結局ずっと渋谷区が生活圏。私の第2の地元は渋谷区です。

(2)多様性を行き渡らせたい

  • 2点目は区政の方向性。渋谷区基本構想では「ちがいを ちからに 変える街。」という多様性のある街づくりが掲げられています。官民連携による先進的な企画が沢山行われています。これをやりっ放しにしない。しっかり効果を検証したい。その効果を一過性のものにせず、生活レベルにまでしっかり行き届ける区政を行いたい。

  • また、渋谷から全国へ広がった「同性パートナーシップ制度」のように、良い取り組みを定着させて、他地域に広がっていくような区政に取り組みたいと思います。

(3)緩やかに助け合う社会

  • 3点目は区民特性。渋谷区の居住年数10年未満者の割合は54%。単身世帯の割合は63%。渋谷区は転入者や1人暮らしが多い地域です。私も転入者で単身者。同居家族がいない、顔を知っている近隣者が少ない住民が、地域の中で緩やかに助け合って暮らせる政策づくりにも知恵を絞りたいと思います。血縁者同士や世帯に過度な責任を負わせず、地域全体で声を拾い合える、「援助希求」がしやすい街を目指します。

(4)国と都と区で連携

  • 4点目は政治的環境。渋谷区は衆議院も(東京第7区 長妻昭衆議院議員)都議会も(渋谷選挙区 中田都議会議員)立憲民主党が議席を有している区です。区政レベルで対応しにくい課題は都や国と連携する。国政や都政で議論されていることを区のレベルで説明していく。そうやって政策立案能力も実行力も高め、地域に貢献していきます。

3.なぜ立憲民主党か

事前に相談した方々からは「与党から出たほうがいい」「無所属がいい」という意見もいただきました。厳しい党勢も承知の上で、立憲民主党から立候補する理由を記します。

(1)自由と多様性を尊重する理念

  • 政党を選ぶ拠り所は理念です。政党の理念の拠り所は「綱領」にあります。皆さんは政党の綱領を読まれたことがありますか?各党のホームページで公開されているのでそれぞれ読んでみてください。

  • 立憲民主党の綱領には『「自由」と「多様性」を尊重し、支え合い、人間が基軸となる「共生社会」を創り、「国際協調」をめざし、「未来への責任」を果たすこと、を基本理念とします。』と書かれています。

  • 他党が示す「家族、地域社会、国への帰属意識」や「自助自立」も大事なことだと思います。しかし私はそれ以上に、立憲民主党が掲げる「自由と多様性を尊重」する「共生社会」、「多様な価値観」や「公正な分配」が広がる世の中をつくっていきたいと思います。

(2)選択肢のある国へ

  • 政権の選択肢をこの国に作らなければなりません。

  • 私は自民党の組織に接していたこともあります。長い歴史と多様な人材を抱え、団結力と実行力に富んだ素晴らしい組織だと素直に思います。しかし1つの組織が権力を握り続ける社会は必ず硬直化します。腐敗もします。国や地域を担える別の政党が存在しなければならない。条件は、全国に強い地方組織を持つ開かれた党であることです。いまこの国に存在する政党を見渡した時、その役割を果たすべき党は立憲民主党だと思っています。

  • そのためにはもっともっと、地方議員が強くならなければいけません。ある仲間の言葉。「国会議員が静脈や動脈だとすれば、地方議員は毛細血管。体の末端にまで張り巡らされているように、地域の隅々まで根を張り、声を受け止め、政策を届ける。どちらが機能しなくとも体(国、地域)は異常をきたす。地域の隅々まで根を張れるようにしたい。」国政政党の一員であるという自覚と、地域で活動する1人だという自覚を両方持って、同じ志をもつ仲間と共に働きたいと思います。

(3)縁

  • 政治の現場に初めて接した山井事務所、異業種交流会で出会った方々、今回の立憲アカデミー東京。縁があるのは党名が変われどいまの立憲民主党の方々です。価値観が近いから縁が繋がり続けているのでしょう。

  • 政権再交代以降、党の再編や党勢縮小の中でなお、地域で地道に真っ直ぐに政治に取り組む先輩議員の方々を見て尊敬してきました。これからは自分も自党の使命を負って道を拓いて行きたいと思います。目的は、自由で多様な社会、選択肢のある社会の実現です。

4.どんな社会をつくりたいか

以下に記すのは、政策よりも漠然とした私の羅針盤のようなものです。
これらを実現するためには新しい負担も必要です。区政レベルでは解決できない話が多いですし、区民の皆様が直ちに求めていない話かもしれません。それでも自分が目指していきたい北極星として方向性を書き示しておきます。

(1)そもそも:政治の仕事は人権を守ること

  • いきなり堅いところから入りますが。政治家の仕事をひと言でいうなら「人々の人権を守ること」だと考えます。

  • 日本国憲法に書かれている基本的人権だけでも日本国民には「平等権、参政権、請願権、自由権(身体、思想、良心、信教、集会、結社、言論、表現、居住、職業選択、学問)、生存権、教育を受ける権利、勤労権、労働三権、財産権・・・」という人権が保障されています。

  • 人権を守るために、治安を維持し、制度を作り、インフラやサービスを整え、公共投資をし、自然環境を保護する。すべての人に幸せになってもらうためにまず守るべきものは人権です。これを踏まえて(2)〜(6)へいきます。

(2)ビジョン:自由と多様性の尊重

  • 自由と多様性が行きわたる社会。

  • 総論としてこの言葉に異を唱える人は少ないでしょう。しかし各論になるとまだまだ日本社会には様々な壁が立ちはだかります。

  • これまで社会を動かしてきた多数の人の効率性や安定性を保つために少数の人(政治やビジネスの場における女性、障がい者、セクシャルマイノリティ、相対的貧困家庭の子ども…)が我慢を強いられる世の中を、変えて行きましょう。

(3)アプローチ:相互理解と合理的配慮と社会保障

  • 自由と多様性を尊重する社会の実現のためには、まず各自が自助や自立という責任を果たすべきだという考えがあります。しかし今の日本に、全ての人が自助や自立をして暮らせる社会環境が整っているのか。環境を整える方が先ではないのか。問い続けたいと思います。マイノリティの方が力を発揮する環境を整えずに自助や自立を強いていないか。その結果自助や自立できなかった人を努力不足だと切り捨てていないか。自助や自立が困難な人への支援を世帯や血縁者に押し付けていないか。

  • 自由に生きるための責任とは、人の自由も認める責任。相互理解相互承認を目指す責任であるべきです。

  • 私は相互理解を促進し合理的配慮を広げ、配慮のための社会保障を拡充する立場を取ります。それがあって初めて、自由と多様性が行き渡る社会が成り立つと思うのです。

(4)アプローチ:誰もが、助ける側にも助けられる側にもなる

  • こちらは2022年に日本GR協会のGR人材育成ゼミで半年間学んだことを1枚にサマリしたスライドです。

  • 社会課題とは誰もが当事者になりうるもの。だから本人や家族の自助を強いるのではなく、社会で受け止め支援する必要があります。自分が困り始めたとき早めに助けを求め(「援助希求」と言います)やすい世の中にしていく必要がある。 参考:生き心地の良い町

  • 課題が多様で、行政だけでの対応には限界があるため、NPOなどと連携して支援することが求められますが、しっかり受け止め切る姿勢を示すのは政治の責任だと思います。

  • 2021年に社会福祉法の改正により「重層的整備体制支援事業」が創設されました。いま各自治体でこの事業を地域に実装するための計画やモデル事業が行われています。デジタルの力も使ってこれを進める提案をしていきたいと思います。

(5)アプローチ:学び直せる。働き直せる

  • 私は40歳前後に会社の内外で沢山の学び直しの機会に恵まれました。沢山の出会い、経験、思い出、新しい自分の可能性の発見、という形でその恩恵享受けてきました。学べば学ぶほど、学び方が上手になる。次の学びの機会を得やすくなる。そんなサイクルも経験したような気がします。

  • 学びに時間を投じられる生活環境は贅沢な環境だと思います。その環境を得られない方々も社会には沢山います。学びの機会の格差はなくしていかなければなりません。

  • 就職前の若者はもちろん、学校に馴染まず学びの機会を逸してきた方、コロナ禍で職場を失った方、就職氷河期世代の求職者の方。何歳からでも新しい学びに時間を投じられるよう、学べる機会を質量ともに拡充したいです。

(6)トライ:家族主義の制度からの脱却

  • 少し気が遠くなる見出しに聞こえるかもしれません。

  • 世界でも日本でも、家族が担ってきた機能(例:介護は家族が担う)は公的制度や民間のサービスによって社会化(例:介護は保険で賄う)されてきました。しかし日本はまだまだ、経済問題や心身のケアなど、深刻なことほど家族で解決することが前提の社会になっています。社会構造もライフスタイルも変わった今、家族主義の制度によって、1.家族を持つことがリスクとなる。2.親から子への階層の固定化を加速する。という問題が起こっているという意見もあります。

  • 2021年に一般社団法人Public Meets Innovationという団体が「家族イノベーション」という政策ペーパーを発表しました。従来家族に期待されてきた機能を9つに分解して理解し家族像を相対化する試みです。決まりきった家族の形がなくなり、家族・世帯単位だった制度も個人単位に改められるという将来像が示されています。

  • 私も、家族に過度な責任を負わさず、個人を社会が支える制度へ転換することが、この国でも必要というか自然な流れだと思います。これを阻む構造的な問題を解きほぐし、小さな解決例を作りながら、持続可能な社会保障制度を構築することを、私のライフワークにします。

  • 念のために書きますが、家族の絆を否定するものでは全くありません。私は家族に恵まれて生まれ育ち、今回の出馬をめぐる過程の節々でも、家族の愛情、理解、信頼関係、絆というものを改めて大きく感じました。私にとって家族はかけがえなく貴い存在です。しかし必ずしもそうでない環境で育つ人もいることを想像する必要もあります。

  • 逆に、社会保障制度が家族主義から脱却することで、かえって家族を持ちやすくなる人が増えるのではないでしょうか。社会の支えを得ることで、かえって絆を深められる家族も増えるのではないでしょうか。少し話を飛躍させれば、制度の家族主義からの脱却は、少子化対策にもつながるのではないかと思います。

5.どんな政策に取り組みたいか

(1)原案

  • 以前一度下書きした政策原案のうち、見出しを示します。中身もここで公開して色々ご意見をいただいてみたいですが、一旦ここまでにします。政策に関心ある方、ご意見くださる方はぜひご連絡ください。

 1. 積極的に支え合う 新しい福祉のまち
 2. 備えを万全に いのちを守る防災を徹底
 3. こどもファーストで 育て育ちやすい街に
 4. いつでも誰でも 学び直して働く機会を
 5. ホッと息をつける 緑のある憩いの街に
 6. 区民目線で政策を評価 対話で創るまち

6.どんなスタイルで活動したいか

現実はもっと泥臭く、もっと必死に、タフに行う仕事だと思っています。それでも自分が理想とする議員の姿を示しておきます。

(1)ともに考えともにつくる

  • 自分から情報提供と論点整理をした上で、区民の方と一緒になって議論し、政策案を作りたい。政策ワークショップを開いてファシリテーションも行える議員になるのが理想です。その時に出た賛否の声も背負って議会へ届けたいです。

(2)垣根を越えて前向きに対話する

  • 議会は熟議の機関。立場の異なる相手をリスペクトし、建設的な対話をします。

  • 会派の中では忖度なく妥協せずに議論します。会派で決まった結論には従ってやり切ります。

  • NPOや企業の方と積極的に関わってアイデアを出し合う。他地域の実践に学び自地域への展開可能性を検討する。超党派で勉強し合える関係を作る。など異分野から学びます。

  • 説明責任を果たしたい。ステークホルダーが多い中で、どこまで発信をオープンにできるかはその職に就いてみないと分かりませんが。人のせいにせず、自分の言葉でしっかり説明できる議員になりたいと思います。

(3)前向きなトライと失敗をする

  • 行政の無謬主義を正したい。そのために政治家の無謬性も否定したい。VUCAの時代に全く失敗しない政治家などいません。いるように見えるとしたらそれは失敗を隠しているか認めない政治家でしょう。前向きなトライと失敗をして、失敗を認め、反省し、繰り返さず、改善し続けることがこれからの政治家に求められる姿勢ではないかと思います。

7.会社を退職せずに臨む理由

私の勤務先には、退職せずに議員を務められる制度が存在しています。日本にもっとそのような制度が増えたらいいなと考えていることです。
いま実際に自分が復職を前提に考えているという訳ではありません。ただ、以下のような先例になる可能性も残して臨むことは良いことだと、本気で思っています。

(1)「回転ドア」のように出入りする

  • 海外では、会社に勤めながら議員を兼業したり、休職して議会に入り一定期間務めた後で会社に戻るような政治文化が当たり前の地域もあると聞きます。入ったり出たりするため「リボルビングドア(回転ドア)」と形容されます。

  • 日本でも生涯続ける議員ばかりでなく、子育てをしたり介護をしたり、普通に働く立場の人が一定期間議席を持っては回転ドアのように入れ替わるような議会の方が、多様な意見が反映されるのではないかと思うことがあります。

(2)生活者視点を企業に持ち帰る

  • 最後に私の勤務先の話をします。当社は官公庁の情報システムを受託開発している会社です。当社でも事業に生活者の視点を持ち込む方針が打ち出されています。しかし事業の現場では当然ながらクライアント(お客様企業やお客様官庁)の声が最優先にされ、生活者の声を直接聞いて事業に反映しようという行動はなかなか取れません。そこで議員です。

  • 社員が、選挙の洗礼も乗り越えて議員を務めたとしたら、究極の生活者視点が身につくと思います。議員を経験した社員が会社の事業の現場に戻ったら、それまで会社になかった多くの新しい視点がもたらされます。また、それによって生活者の声が企業の事業活動に反映されるため、生活者や行政にとっても良い結果が生まれることになります。

  • 世の中に、こんな社員が、こんな議員が、何人かいても良いのではないかと思うのです。

以上です。お読みいただきありがとうございました。
知人の方でご感想やご意見のある方は、ぜひメッセージください。日々勉強しながら、考え方や行い方をアップデートしていきたいと思います。

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