見出し画像

【週刊プラグインレビュー】Newfangled Audio / Invigorate

残すところ、今年もあと1日であります!
皆様にとって、今年はどんな年でしたでしょうか?
どうぞ、良いお年をお迎えください・・・!

僕の方はといいますと、年末進行の繁忙期と実家への帰省に挟まれまして、1記事年始の更新になってしまいそうです・・・!
謹んでお詫び申し上げます。
書きたいプラグインのレビューを書けるほど試す時間をつくれなかったのが敗因でして、来月の上旬には記事を上げられればと考えております。

さてさて、今回とりあげたいのは、毎度目が離せないNewfangled AudioからInvigorateであります。

それではやっていきましょうプラグインレビュー!

Invigorateとは?

Eventideを母体に持つ天才枠、Newfangled Audioが放つ新作で、Invigorate(和訳:活性化)という名前が付けてられているプラグイン。
前回書いたSaturateも実にしびれる仕上がりだったが、今回もなかなかどうして、唸るものがある仕上がりだったので、皆さんに紹介したいと思う。

Invigorateはコンプレッサー、リミッター、サチュレーターを一体化したプラグインで、それぞれ違う効果を持つエフェクターで同じ効果を再現したら一体どうなるのか?を”実験”してみたといっていいモノ。

じゃあ、それってどういう効果なんですか?と言われると、
歪でもありDynamicsでもあるが、カテゴライズ不能な何か・・であるように思える。

正直言って、Dynamicsを形成するモノとしてはあまりに強気すぎるし、Satとしてはあまりにダイナミクスに介入しすぎる。
しかし、一方で、「もともとの音色が~」であったり、「演奏のニュアンスが~」などと言い訳し、結果にコミットしない弱気なプロセッシングをしがちな我々を「ならとっとと音そのものを再生成しろや!ばかも~~~ん!!」と叱り飛ばしてくれる様なところがある笑

僕の中で話題の記事。

Invigorateがリリースされた直後、これが何を狙ったモノだったのか?を理解できた人は凄く少なかったように思う。
そんな状況を知ってか知らずか、公式から非常に面白い記事が公開された。

日頃からMixingについて勉強している諸氏にとって、新しい視点を与える記事になると思うので、是非読んでみて欲しい。

Glueの要はIMD?

この記事の要旨は二つある。
・一般的にGLUEはそれぞれの要素がそれぞれの要素にリアクションし合う状況を言う。バスコンプレッサーはそれの典型的な使用例だ。
・しかし、実際にはそれだけではなく、相互変調を起こした歪が”倍音の倍音”を引き起こしていて、同時に通すから意味がある現象を引き起こしている。

前者はみんな、まぁ、そうだよね。と思うところだが、後者に関しては恥ずかしながらあまり考えたことがなかったのでハッとさせられた。

相互変調歪=IMDについて、ざっくり説明をしておくと。
IMDは、二つの信号が非線形に歪む回路に入ったときに、元の信号にない新しい周波数成分が生成される現象のことだ。
通常、信号の世界では二つの信号が同時に入力されることで、お互いに干渉しあってしまい引き起こされるエラーとされている現象で、IMDが起こりがちなスペックなものだと、音がクリアではないと評されることが多い。

しかし、この記事はこれこそGlueの要であると主張している。
お互いが変調しあって、倍音の倍音が生成されていき、これが結果としてGlueを生む。というとらえ方のようだ。

確かに、マスターバスに何らかのコンプレッサーを挟んで、うまく使った時に何とも言えない一体感が生まれるのは、それぞれがそれぞれに影響を与え合っているからと言われるとなんとなく納得できる。

特に、俗に言われるBOX TONEなんかは最たる例だと思っていて、箱を通すだけの音でなんとなく音がそれぞれくっついて丁度いい・・みたいなことはよくある話だし、むしろそれ目的でアウトボードを使う人は多い。

マスタリングにおいても、確かにそうだなぁ、と思う部分がある。
今はラウドネスノーマライズの時代だ。
本来はリミッターをかける合理的な理由は、音の内容以外に無い。
だって、音圧を稼ぐ必要自体がないわけだから。

にもかかわらず。
結局リミッターを使わないと音楽的に完成しないことがあるのは、各要素をGlueさせる、聞かれ方の互換性を担保する。
そういうところにあるように思う。
「でも、それって結局IMDでレンジとダイナミクスうまく調整してるって話なんじゃないの・・?」と言われて、
た、確かにそうだな・・と感じた指摘である。

機能面

じゃあ、そんな哲学をもとに生まれたInvigorateは一体何が出来るのか・・?について見ていこう。

Invigorateは大まかに分けると4つのセクションに分かれている。

セクションは
・ダイナミクスを調整するLevel Detectorセクション
・歪みを調整するCurveセクション。
・DryWETを調整する、MIXセクション。
・各トーン調整のEQ3つ。
これらを組み合わせることにより、色々な効果を産み出すことができる。

ダイアグラム

マニュアルより

結構ややこしい話だとおもうので、上記ダイアグラムを見てもらった方が早いかもしれない。

また、MIXスライダーは前段、後段、サイドチェーンEQ部をすべてWETととらえたかたちでのMIXであることがわかる。

多機能なので、主だった機能について絞って解説していこう。

レーダー部

目を引くデザイン!

このレーダーディスプレイは二つのパラメーターを調整するように出来ている。
一つが、Curveに適用するゲインの量。
もう一つが、Compress、Limit、OverDriveのパラメーターの制御だ。

横軸のエフェクターの種類の変化をMorphと説明書は書いている。
オプション+クリックでゲインを変えずにMorphのみのコントロール。
コマンド+クリックでMorphを固定し、ゲインを変えられる。

また、右クリックをしながらドラッグでMIXの割合を変化させることが出来る。

Curve セクション

Curveセクションは、サチュレーションをコントロールを司る部分。
3つのパラメーターを併用することで、色々な組み合わせをつくることが出来る。


Curveセクション。

・Shape
ソフトクリッパーのShapeであったり、コンプレッサーのKneeに似ている。
Shapeノブの値が高いほど、ニーが鋭くなり、スナップ感やバイト感、ハーモニクスが強くなるように出来ている。

・Squash
モーフセクションが、COMPかOverDriveの方向に設定されているとき、Squashノブはカーブに下向きの圧力を加えて、聴覚的にはオーバーコンプされたような音を創り出すことが出来る。
Shapeノブと連動して、攻撃的なサウンドを作り出す。

・GATE
カーブの中心をクリップすることで、ゲートのような効果を産み出す。
例えば、コンプレッションやオーバードライブのキャラクターを適応したいが、弱音はそのままにしておきたいときに有効。
モーフセクションがコンプレッサー側に設定されているときは、ゲートやエキスパンダーのように作用し、Over Drive側に設定するとファズのようなトーンをつくりだすことが出来る。

Level Detector セクション

基本的には普通のコンプレッサーと変わらないので、割愛。
LINKがチャンネルリンクの機能で、ANTI-PUMPがHPFサイドチェーンとして機能している。
ただし、アンチPUMPについては、コンプレッサーやリミッターのときのみ適用される効果なので、例えばオーバードライブで低域を当てたくないときは、Sensitivity EQで調整をして欲しいとのこと。

TONEセクション

Invigorateが小回りの効くツールとしてつかえるかどうか?は割とこのTONEセクションにかかっている部分。
3つのEQで構成されているのだが、詳しく見ていこう。

Invigorateに搭載されているEQはLOW MID HIGHバンドに分かれて構成をされていて、クロスオーバーが共有されるように仕上がっている。
また、ドライ信号にも同様のフェイズシフトを加えることで、EQをしていたとしてもパラレル処理をしたときに位相の問題が起きないように配慮をされているとのこと。

逆に、他のEQで調整をしたいが、パラレル処理を加えたい場合はリニアフェーズEQを使わないと、位相がズレる結果になることに注意。

Sesitivity TONE
ダイナミクスセクションのインターナルサイドチェーンEQとして効くように設置されている。
例えば、ドラムバスにかけたときに高域のシンバルがかかりすぎていると感じた時には、ここでハイを落とすと良い。

Input Exciter
ダイナミクスセクションの前段、プリEQとして位置していて、カーヴセクションとLeve Detectorセクションにまたがるように配置されている。
コンプレッション、オーバードライブをしたい帯域を下げてやればそこを和らげてやることもできるし、上げてあげればわざとらしくなく強調することが出来る。

OUTPUT TONE
全てのノンリニア処理の後(ダイナミクス・SATの後ろ)に配置されていて、全体のトーンを最後に均すEQセクション。
いわゆるスマイルトーンを形成して中域を整理したり、ハイを少しカットすることで暖かいトーンを作ったり・・などの調整が出来る。

MIXセクション

全てのセクションの後に搭載しているDRY WETのコントロール。
音量に騙されないようにするために、LERNを使ってより厳密にレベルマッチが取れるようになっている。

検証してみる

まず最初に気づいたポイントとしては、最近のKiiveとは方式は違うものの、常に信号がずっと揺らいでいるということだ。

ここから先は

2,713字 / 3画像

¥ 150

記事のご購入をいただきましてありがとうございます・・! 読者さまの中にときどき、サポートをくださる方がいらっしゃって、すごく励みになっております泣 いただいたサポートは全額次回記事に向けての研究&出版の費用に使わせていただきます・・・! 次回更新もお楽しみに・・!!