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【週刊プラグインレビュー】sonible / smart:comp2

さて、今月最後のプラグインレビューになります。
今回は、発表当初より話題沸騰のsonible smartcomp2について触れていきたいと思います。
最近、AIにまつわる議論が僕のタイムライン上では活発に議論をされていますが、sonibleもまた、程度の問題はあれ学習を反映するという意味では先進的にAIでの判断で仕事の効率化を行おうとしているメーカーです。
今回の”2”は一体何を効率化してくれるのか?
そして、それがあることで使うときに、どうラクになったのか?
などを解説していきたいと思います。

特に、「コンプレッサーを使う前のお作法がわからない・・・。」「そもそもコンプレッサーをかけるとなんか変になるから嫌い。」そういう方に大変おすすめできるエフェクターです。その魅力を少しでもお伝えできればうれしいです。

それではやっていきましょう!プラグインレビュー!

(なお、いつまでやってるかわからないんですが、今のところ3割引きセールをやっているようです。)

smart:comp2とは?

smart:comp2は小回りの利いたコンプレッサーに簡易的に設定の提案機能を搭載したsmart:comp1と比べると、かなりコンプレッサーの実用的な部分まで提案とカスタムができるようになっている。

特に目玉の機能となるのが以下だ。
・AIプリセットによる解析によって、コンプレッサーに入る信号の周波数特性を分析→最適化するSpectral Compression機能
・非常にカンタンにダイナミクスをエディットできるUI設計
・学習後の設定から3つのノブでトーンの領域にもアクセスができる。
・入力信号の大きさをざっくりとざっくりと調整してくれるINPUT RIDING

smart:compと重複するところはあるものの、正当な進化といえる機能を堂々とひっさげてきた印象だ。

機能面

では、もう少し細かく機能をみてみよう。

・Spectral Compression機能

Spectral Compression機能では、入力信号を2000以上の帯域ポイントで連続的に分析をすることで、超高解像度のマルチバンドコンプレッサーのように機能をして、音色のアンバランスさを動的に滑らかにすることができる。
必要な部分を分析したうえでコンプレッションをしていくので、解像度と透明性を保ったままコンプレッションを使っていくことができる機能。
とのことだ。

Spectral Compressionの何が革新的か?についてはsonibleがこの記事にまとめてくれている。要約をしてみよう。

シングルバンドコンプレッションは周波数単位での信号を見ていないので、トランジェントがスレショルドを超えた瞬間に周波数バランスに関係なく作用してしまうことが悪影響を及ぼしてしまうことが多い。
その対応策としてマルチバンドコンプレッションがあるが、以下の欠点がある。
・パラメーターが複雑であること。
・スペクトルに対しての均一性がないため一貫性のないサウンドになりがち。
その対応策として生まれたのがSpectral Compression。
継続的にスペクトル分布を2000以上のポイントで分析することで、ある帯域が、他の帯域に対して不均衡になっていないか?をチェックをしながらコンプレッションをかけるという技術だ。
例えばキックの大きいドラムのブレイクにコンプレッションをかけるときに、分析によってキックのエネルギーが多い場所に対して圧縮が適用されるようにうなっており、必要な場所のみクリーンにコンプレッションをかけていくことができるとのことだ。

何それ、すごい便利じゃん・・・。

これに関しては、あくまでも僕の憶測では、ある基準値に対してのインターナルサイドチェーンを動的にかけているんじゃないか?という話のように思える。
これをさらにわかりやすくざっくりと言うと、Sonibleの弁の通りの話になるが、「音のバランスが崩れた箇所でコンプレッションをしてくれる」機能と考えてもよさそうだ。
実際、使ってみた感想としても同様で、ダイナミクスの安定だけではなく、トーンの安定性を担保してくれている印象である。

・Sound Shape機能

学習させたSpectral Compression機能の微調整をたった3つのノブでサクサクと調整していくことができる。
それぞれ見ていこう。

・Style
モダンでクリーンなサウンドから、がっつり歪んだ音のキャラクターを創り出すことが出来るノブ。
・Spectral Comp
分析したSpectral Compの適用具合を調整できる。
0でただのシングルバンドコンプレッサーになるように出来ている。
・Color
ブライトからダークまで、コンプレッサーのトーンを調整するノブ。

また、Spectral Linkは、コンプレッサーが読み込む帯域(サイドチェーンフィルター)の外にある帯域にたいして、SpectralCompをどのぐらい適用するか?を調整できるパラメーターだ。
これによって、完全にコンプレッサーがフィルター外の信号を読み込むことをやめてしまうことなく、地続きで反応させる度合いを調整できるようになっている。

Free-form Transfer Function

いわゆるコンプレッションカーヴに対して、複数ポイントカーヴを描いていくことができるようになった機能。

いわゆるコンプレッサーはなんとなく理解はできても、自由に書けますよ!となると「うっ・・・」となる人は多いと思う笑
なので、補足説明を以下に書いておく。

このグラフの読み方は簡単で、X軸がINPUTでY軸がOUTPUTだ。
なので、X軸の音量がどのように変化していくかを下から読んでいけば良い。
コンプレッサーは音量を圧縮するエフェクターなので、インプットよりアウトプットが下がるのが普通で、レシオに準じてアウトプットが下がっていく。

smartcomp2では、例えば、ただコンプレッションをおこなうだけではなく、インプットの音量に応じて、コンプレッションのされ方の種類を追加したり、小さい音量のときに、音量を大きくするように設定したりすることができる。
斜めにひかれている正比例の線を上側にはみ出ていれば、「音量が上がる」下側に折れていれば「音量が下がる」とざっくり把握しておくとよい。
後はどの音量のときに音量を下げたいのか、上げたいのか?で書くべきカーヴが変わってきて、ついでに現象の呼び方が違う。

補足説明
アップワードコンプレッション。音量が小さいときにアウトプットが大きいパターン。
ダウンワードエクスパッション。音量が小さいときに音量が下がるパターン。

Input riding機能

どうしてこの機能が、こんな隠れた位置にあるのか非常に勿体なく感じる機能だが・・・笑
これも特筆すべきメインの機能と言っていいだろう。




画面右のインプット信号メーターの上に「Input Riding」という機能がある。
これは入力された信号の大きさをあらかじめある程度整えてくれる機能で、これによって、そもそも信号の大小をある程度均した状態でコンプレッションをかけていくことが出来る。
これをたった2つのパラメーターで調整していくことができる。

・Speed
どのぐらい素早く、インプットのレベルの調整を適用するか。
・Intensity
ゲインライディングをどの程度の大きさで適用するか。

あらかじめインプット信号の大きさが均されている状態でコンプレッサーを使うメリットは、コンプレッサーのトーンの安定にある。
実際これを手動でやっていくのは、当たり前ではあるんだがなかなか骨が折れる話で、ここが簡略化されたのは個人的にかなり大きい。
もちろん、だからといってそれらをやらなくてもいいという話でもないんだけれども。

他の機能については、A/B機能のスロットが8つになってより便利になった以外は、以前からの小回りの利いた機能をそのまま踏襲をしてくれている。
アタックシェイプ、リリースシェイプを触ることができたり。Spectral Duckingができたり。インプットとアウトプットの音量を自動調整してくれたりだ。以前のシリーズから使っている人にとっては馴染み深いんじゃないかと思う。

検証してみる。

smat:limitと同様、基本的には学習ありきなのでざっくりとしか測定できないが、わかる範囲で分析をしていきたい。

まず、Smart Comp2の歪みかたを見ていこう。

Styleはクリーンで一番歪まない設定にしてある。

特徴なのは、低域に行くほど倍音が立ち、高域にいけばいくほど素のままで出力されている。超クリーンと謳っているものの、ある程度のキャラクターは素のままの状態でもあるように見える。

続いてStyleパラメーターを見ていこう。

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