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The Process of Violin Making Ⅵ

胴部分が一応の完成をみたので、お次は裏板です。別に順番通りに作っていく必要はないので、表板と裏板を同時に進めても問題ないですし、ニスを塗る段階では、それが乾くまでの間に他のことを進められるので、今書いていることはあくまでやることリストみたいなものと思っていただければ良いと思います。

裏板は横板と同じくメイプル材を使用します。杢が入っていると綺麗ですが、音にも関係あるんでしょうかね。この辺は私も分かりません。木をどう使うか・伐採時の切り出し方でも、杢の出方を筆頭に様々に音への影響は出てくるので、全てを網羅的に同じ条件で調べることは不可能だと思います。1枚板と2枚板での違いももちろんありますが、またおいおい。

メイプル材は最低でも5年以上は寝かせたものを使いたいですね。人工的に乾燥を進めたものも各所で使われていますが、あまり良い結果を得られてはいないように感じます。商売をするならそれでも良いと思いますが、モノをつくるのはそんなに簡単ではありません。


さて、裏板材は縦にながぁ~いベイクドチーズケーキのような形をしています。やることととしては、

①2つに切る(2枚板の場合)
②横板との接着面をおおよそ平面に鉋掛け
③接ぎ面を寸分たがわず平面だし
④膠で接着

といったところでしょうか。

①これは既に9割がた切ってくれているものがあるので、その場合は端だけ切り落とせば終了。もし、アンカット材の場合は木目や年輪、放射組織・繊維の方向をしっかり見極めながら切り出していくことになります。普通にやれば問題ありません。縦にながぁ~いクオーターサイズのチーズケーキが1/8サイズになれば成功です(←例え話)。

②両手を合わせて、それを親指側から本を開くように(つまり両小指は接したまま)2枚したら、手のひらと手の甲のどちらを表面にするのかを決めなければいけません。共にいろいろメリット(デメリット≒個性)があるので、これらをちゃんと理解していないと上手な接着やプロポーションは完成しません。どちらかが横板と接着されるので、当座の平面を出していきます。ただやみくもに平面ではなく、年輪に対しては直交・平行するようになどなど考えながら進めます。

③2枚とも平面が出たら、先ほどの例えでいうと両小指の接着される部分を鬼平面出しします。よく40cmくらいあるような洋鉋を目にすることがありますが、あれは必要ないです。9割の鬼平面が出たら、いったん鉋の刃を鬼研ぎしなおしてガチの平面出しを行います。本気のガチです。共にガチの平面だと片方の木材を持ち上げたときに、もう片方が接着していないのにふわっとくっついてくるような感覚を得られます。これくらいぴったりが必須です。中央部をうっっっっっっすら空ける人もいます。私はそっちに近いかな。

④膠は新鮮なものを。接ぎ面は基本的に今後剥がれてきて欲しくない場所なので、剥がれることを前提にした濃度などにはしません。膠が出来上がって接着の場面になったときは精度とスピードが命です。接着が上手くいくか駄目かは腕もそうですが、窯に火を入れて待つ陶芸家さんと同じような心境です。


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