Quiz:AAの神様の問題の解説

こちらの問題について、私が用意していた答を解説を行います。
また、失敗例についても簡単に解説を加えています。

正答は、「可能」となります。以下、神様を倒す戦略を説明していきます。
また、プレイヤーを指す言葉として、「我々」「神様」という表現を用いることにします。

私の解法は、自分のハンドとしてAAを利用せずに勝利する方法になります。
(下剋上という意識もあり、最初からその前提で考察をしていました。)
AAを利用する別解については
ーーーーーー
を参照してください。

■1.Preflop戦略■

preflop raiseには、神様はAll-INを返します。神様を倒すためには、我々はpreflopをcallするところから始めることになります。

(1) Preflop戦略:
KK ~ 22でcallする。

我々に配られるハンドは 50C2 = 1225combo のランダムです。
我々がfoldする確率:1153 / 1225 = 94.1% (-1bb)
我々がcallする確率:72 / 1225 = 5.9%

トータルで正のEVとなるにはcallした場合のEVが+17bbあれば十分です:
94.1% × (-1bb) + 5.9% × (+17bb) > 0

callした時点でpotは20万bb、我々はそこに10万bb支払っています。したがって、callした場合のEVが+17bbであるためには、flop以降でpotの100017bb以上が獲得できれば十分です。そこで、神に勝ち越せることを証明するためには、次を証明すれば十分です:

(2) 神様に勝ち越せることを証明するには、次を示せばよい:
我々はflop以降で、potの50.01%以上のEVを獲得できる

2.flop厳選

◆flop厳選
不利なboardや、計算が面倒なboardは捨てます。次のboardを待ちます。

(3) 都合の良いflop
・2~Kのうち3枚の異なるカード
・KQJ, KQT, KJT, QJT, 543, 542, 532, 432 ではない組み合わせ
・スートが(s,s,s), (c,c,c)ではない

まずはこういうボードが来る確率を見積もります。

flopの確率分布は、当然自分のハンドによって微妙に変わります。仮に自分のハンドがKKであった場合、
・flopは全部で48C3 = 17296通り
・Q~2の3種の組合せ:11C3=165。QJT, 543, 542, 532, 432を抜くと160。
・その160種に対して、(s,s,s), (c,c,c)以外のスート構成が4^3-2=62
・160 * 62 = 9920通り

Kを含む場合を数えていないのはわざとです(計算の簡略化)。
最低でも 9920 / 17296 = 57%は期待するボード。自分のハンドがQQ, でも同じ方法で計算できて、結論も57%以上です。

我々の目標は、(2) flop以降でpotの50.01%の獲得 でした。都合の良いflopが57%以上存在することが示されたため、次を証明すれば十分です。

(4) (2)を示すには、次を示せばよい:
(3)で述べた「都合の良いflop」において、我々はpot 100%のEVを
獲得できる。

「都合の良いflop」以外でも当然正のEVの獲得は可能(例えばKKQ flopでKKとQQをオールインして他のハンドをあきらめると、potの6.25%をとれる)ですが、場合分けの複雑さを考慮し、これらは考えません。

■3.flop strategy■

(5) 我々のflop strategy
レンジ全体で pot の 100倍 の額をbetする。
※ 我々のレンジにはset 9 combo, pair 54 combo が含まれている。

★★神様がraiseした場合
・神様が6倍未満にraiseした場合の我々の戦略
 → レンジ全体でcallする。
・神様がpotの6倍以上にraiseした場合の我々の戦略
 → set 9comboをall-inし、残りをfoldする。

この場合に、神様がfoldせざるを得ない(call / raiseをするとfoldよりもEVが低い)ことを証明できれば、(4)が証明できたことになります。神様にとってfold < callとなるのは、turn以降でpotの約49.5%以上を獲得できる場合です(基本的なpot oddsの考え方)。

raiseについてはどうでしょうか?例えば神様がpotの2倍へraiseしたとしましょう。
・pot 1 → 我々 100 → 神様 202 → 我々 call
この場合turnの状況は、
・pot 1 → 我々 202 → 神様 call
とした場合のturnの状況と同じです。したがって、例えば「神様は 2倍raiseできない」ことを証明するためには「神様は我々が202倍にbetした場合にcallできない」ことを証明すれば十分です。神様が得するためには、turn以降でpotの約49.7%を獲得する必要があります。ノルマだけ引きあがっていて、effective stackはまだまだdeepですので、レンジ全体でcallしてもらってですら、ほとんど得ができていないことが分かります(実際には我々は弱いpairを捨ててraiseをする選択肢もあるのでなおさら有利)。

6倍raiseについても、我々のall-inに対して神様はfoldすることになり、神様のEVは0となることが分かります。

したがって、神様はflopでcallした場合、turn以降でpotの49.5%以上を
獲得することはできない。

あ、少しごまかしがありますね。神様にはraiseの選択肢もあります。例えば次のように対応しましょう。

(6) (4)を示すには、次を示せばよい:
神様は、turn以降でpotの49.5%以上の平均EVを獲得できない。
同じことだが、我々はpotの50.5%以上の平均EVを獲得できる。
(我々レンジ:引き続きすべてのKK~22)

■3.turnの分類と頻度■

turnがこちら、相手にとって都合が良い・悪い場合があります。

(a) Aが落ちる
(b) boardにpairができる:KdQs2s + Ks など
(c) AAにflushまたはstraightのdrawができる:KdQs2s + Js など
(d) 我々に新しいsetができる:KdQs2s + 6c など

turnで落ちるカードには、相手のハンドとflop3枚を除き、47枚の可能性があります。(a)に該当するのが2枚、(b)に該当するのが9枚。(c), (d)が合計36枚です。(c), (d)のカードは、flopにもよりますが、(c)は最大で15枚ですね。

確率は2/47, 9/47, …とやると少し間違いです。一応ちゃんとやりましょう。我々のレンジがblockしていないAは1/45 = 2.22% の確率で落ちます。
(d)のような、63comboのうち3comboがblockしているカードは1/45 × 60/63 = 2.116%の確率です。その辺も含めて、

(a) 4.44%
(b) 19.36%
(c) + (d):76.19%
(d):44.44% 以上

という出現確率であることがわかります。(6)の目的のためには、次を示せば十分です:

(7) (6)を示すには、次を示せばよい:
我々はターンの種類に応じて、
(c) potの50%のEV
(d) potの80%のEV
を獲得できる。

実際、(a)や(b)のターンは完全に捨てても、(7)により我々は
(76.19% - 44.44%) × 50% + 44.44% × 80% = 51.4%
のEVを獲得できます。

■4.turnの戦略■

(8) 我々のturn strategy
★(c)の場合
set 12comboとpair 18comboをbetする。pair 30comboをfoldする。
★(d)の場合
set 12comboとpair 36comboをbetする。pair12comboをfoldする。

いずれもbet sizeはpotの100倍を用いる。

それぞれレンジの50%, 80%をbetしているので、神様はこのbetにcallできないことを示せば十分です。raiseした場合の議論についてはflopについてのそれと同様なので省略します。

■5.riverの戦略と、EVの計算■

(9) 我々のriver strategy
我々のhandには、
・nut(AsAcに勝っているハンド) n combo
・air(AsAcに負けているハンド) a combo
がある。nut n comboとair 0.99n comboでall-inをする。

(a < 0.99n の場合にはこの通りの戦略をとることはできませんが、今回の状況では結論には影響しないので省略します)
超deepの条件下で、神様はこのall-inに対してcallをすることができません。
我々はnutを持っている確率の1.99倍の確率でpotを全て獲得できます。

(10) 
・我々の river EV = pot × [1.99 × (riverでの我々のEQ)]
・神様の river EV = pot × [1.99 × (
riverでの神様のEQ) - 0.99]

が成り立つことが分かります。なお、riverで神様がnutになる場合も含めて (9) の戦略および (10) のEVの計算は修正をする必要がありません。

■6.turnのEVの計算■

(10)の式を、riverで落ちるカードについて平均をとることで、次が分かります:

神様のriver EV の平均 = pot × [1.99 × (riverでの神様の平均EQ) - 0.99]

「riverでの平均EQ」というのは、「turnにおけるEQ」と等価です。

神様のriver EV の平均 = pot × [1.99 × (turn での神様のEQ) - 0.99]

このことを用いて、(8)の戦略に対して、神様がcallできるかどうかを確認します。神様がcallするには、riverにおいてpotの100/201の獲得を見込む必要があります。

100/201 < 1.99 × (turn での神様のEQ) - 0.99
  ⇔  (turnでの神様のEQ) > 74.7%

となることから、次が分かります:

(11) (7)を示すには、次を確かめればよい:
(8)のbet rangeに対してAsAcのEquityが74.7%以下である。

■7.Equityの概算、証明の完結■

適当にEQを概算しましょう。折角なのでここも手計算で乗り切ります。
turnカードやbet rangeは一例ですが、どちらかというと神様に有利な設定を選んでいます。
(c) turn:KdQsJs2s、我々bet range:set(12), pair(18) とする。
setのEQ = 31/44(アウツを数えましょう)。
我々のEQ >= 31/44 ×12/30 = 28.18%
神様のEQ < 72% → (11)が確かめられた。

(d) turn:KsTc7d4h、我々bet range:set(12), pair(36) とする。
setのEQ = 42/44
pairのEQ = 2/44
我々のEQ = 42/44 ×12/48 + 2/44 × 36/48 = 27.27%
神様のEQ < 73% → (11)が確かめられた。

以上で、我々は神様に対して正のEVが得られることが証明できました。


長くなりましたが以上です。よければ

Quiz:AAの神様の問題の解説(付録)

もご覧ください。

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