妄想K国モノ小説・チョッパリ強制収容所(5)


※ 注意事項 ※

・今回はあまりに長文すぎたので分割しました。

・上記の点を許容できる方のみ本編へお進みください


※上からの続きです。

- 本編 -

それから廊下を3人の看守様の後に続いて15分ほど歩き続け、豪奢な設えの別棟に入る。

先程の冷たく無機質な、いかにも収容施設らしい廊下とは打って変わって、磨き上げられた美しい大理石の床材の上に、毛足の長い赤絨毯とゆう高級そうな雰囲気に圧倒されながら、リードを引かれるままに階段を登っていった。

ほどなくして廊下の最奥、丁度突き当たりにある扉の前に立つと、スヨン様が扉をノックした。

スヨン:『看守長様、スヨンです。例の囚人をお連れしました。』

???:『入りなさい。』

スヨン様の呼びかけに対し、部屋の中から大人びた雰囲気の落ち着いた低めのトーンの声が応答し、入室を促した。

1拍間を置いて、身なりの整った秘書のような人物が内側から扉を開け、小声で『どうぞ、お入りください』と半歩ほど身を引いて、空いたもう片方の手を部屋の方へと差し出して一同を招き入れる。

御三方の看守様の後に続いて四足歩行でオレも部屋に入室すると、秘書様のクスリと笑う声が耳に届き、興奮で心臓がドキリと跳ねた。

部屋の奥、K国の象徴である国旗や、看守長様の功績を称える表彰状やトロフィーなどを背にして、重厚なウッドのデスクと座り心地の良さそうな本革製のソファーに腰を下ろした看守長様がそこにおられた。

看守長様は此方を一瞥すると、品定めをするかの様にオレを睨み、そしてつま先から頭へと幾度も視線を往復させると、『フンっ…』と鼻を鳴らしてニヤリと笑みを浮かべ、足を組んだ。

オレは看守長様のその威厳に満ちた雰囲気と、如何にも意思の強そうな瞳に射抜かれて落ち着かず、ただただ看守長様から視線を逸らそうとしてみたのだが、それでも看守長様のお姿に目を奪われてしまうのだ…


…それもそのはずである。

何故なら『あの人』に余りにも似すぎているのだ。

まだ自身が幼かった頃に憧れを抱いた『あの人』に…



それはまだオレが幼かった頃…

まだK国様とN国が対等な関係性で、人や物の往来があった頃…

今から15年くらい前の話だ。

その頃のオレはまだ純粋でK国人様に対して差別意識もないどころか、むしろ好感を持っていて、そしてテレビなどのメディアを賑わせ、若年層の注目の的であったK国スターは憧れのアイドル的な存在だった。

その中でオレが最も夢中になっていたのが、その当時に彼女が所属していたK-POPの女性アーティストグループの中心的存在であり、最も焦がれていたのが『あの人』だったのだ。


看守長様の御尊顔は何度も見てみても、そのお方の御尊顔と瓜二つで、驚きと戸惑いで心が掻き乱されていく。

流石に15年も前の話であるが故、そのアーティスト様本人であるとゆう確証などあるわけもない。

それに加えて、オレは『彼女は実は本国ではかなりの反N国的な思想の持ち主だ』などとゆう噂を間に受け、途中でファンを辞めた人間なのだから、その後の事など分かるはずもない。

だが、それでも御本人様かと見紛うほどまでに似ているのだ。

勿論、あの頃と全く同じと言うわけには行かないまでも、それまで重ねてきた年月を考えれば一般的な人間の容姿とは比較にならない程にお美しく、今の自分の貧困な語彙では、彼女を褒め称えるどんな言葉も相応しくない様に感じさせた。



???:『お前は囚人番号 A-107085番で間違いのね?。私はこの収容施設で看守長を務めているイ・チェリョンよ。良く覚えておきなさい。』


…一瞬、呼吸が止まった

今、看守長様は何と仰られたのだろうか?…

オレの聞き間違いなのだろうか?…

看守長様のそのお名前は、嘗ての憧れの『あの人』と全く同じお名前で…

そして瓜二つの容姿をしておられて…

「あ、あの…チェリョン様…もし間違っていたら申し訳ございませんが、15年前にN国でK-POPアイドルの活動をしていた事はごさいませんでしょうか?…」

オレの疑問にチェリョン様は不快そうに溜め息を吐いて、此方を睨みつけて舌打ちをした。


チェリョン:『はぁ?、お前…まさかアレを知っているの?あんな過去、思い出したくもないわ!この私が下等なチョッパリ共に媚びて笑顔で歌やダンスをしていただなんてね!』


…あぁ、不味い事をした。

完全に失敗した。

そう思った。


「チェリョン様のご気分を害してしまったのであれば謝罪致します!申し訳ございませんでした!…ですが、コレだけは言わせてください!私は貴女様を不快にさせたかった訳ではありません!私は…私はただ、貴女様の事をお慕いしていた事をお伝えしたかったのです!…まさか…こんな風に、チェリョン様にお会いできるだなんて思ってはおらず、チェリョン様にお会いできたその感動をどうしても言葉でお伝えしたかったんです!」


恐怖をなんとか抑えながら、ただひたすらにチェリョン様へと自身の思いを吐き出し続けていた。


チェリョン:『…フフフっ、アっハハハハハ(笑)…そう。まさかあの頃の私のファンとこんな形で再開するだなんてね。人生って不思議なものね。…それで?、お前はそれを私に伝えてどうしたいの?私にどうして欲しいの?あの頃の私と違って、今の私はお前の理想とは程遠いオバさんよ?本音ではガッカリしたんじゃないかしら?』

チェリョン様が自身を卑下するかの様な、或いは此方の反応を試しているかの様なそのお言葉を聞いて、オレは直ぐに首を横に振ってチェリョン様の発言を否定した。


「滅相も御座いません!幼い頃に憧れた、あの頃よりも更にお美しくなられていて、その感動をどの様に言葉にして良いのか分からず、ただただ圧倒されていました。チェリョン様にこうしてお会いする事が叶っただけでも光栄なことで御座います!」

幼い頃に憧れていた人と今、直に会い、こうして言葉を交わしている…

その事実だけでも鳥肌が立つ…

あの当時はまだ幼いこともあり、親に泣き付いてまでお金を出して貰ってファンクラブに入会していたし、毎回送付されてくる会報には心が踊ったものだ…

ライブも応募したが競争率の激しいライブチケットは負け続きで、運良くチケットが手に入っても、料金が安い遠くの観覧席から応援しているだけだったし、毎回ライブに参戦できるほど裕福ではなかった為、殆どはテレビなどで遠くから声援を送る事が多かったが、それでも何かに夢中になって、熱意を全力で注ぐ生活は充実していて、実に幸せであった…

15年もの歳月を経ても尚、高貴な美しさを保ち続けるチェリョン様のお姿を見て、そして直に会話をしているとゆう、あり得ない状況に理解が追いつかず、まるで死を目前にした走馬灯の様に幼い頃の思い出や感情が吹き出してきて心が掻き乱される…

気が付けば、いつの間にやら涙が頬を伝い、チェリョン様のお姿を見上げながら泣いていた…

急に気恥ずかしくなって、顔を隠す様に再びチェリョン様へと土下座をしたのだった。




チェリョン様はそんな私に対し、目の前にしゃがみ込むと私の顎に手を添え、クイッと顔を上げさせると、私を見つめながらもう片方の手で優しく涙を拭ってくださった。

チェリョン:『そう。…そんなに私の事が好きなのね、お前は。それなら、私の専属奴隷になってみる気はない?事前に聞いて知っているでしょうけど、前の奴隷は壊してしまったから、丁度新しい奴隷が欲しかったところだしね。いずれ、もし私が飽きたら、その時はお前の事もきっと壊すでしょうけど。お前が私に壊される覚悟があるのなら、専属奴隷として飼ってやってもいいわ。』


(6)へ続く

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