僕のTwitter漫画の作り方!【転】
こんにちは、Twitterをアジトに暗躍している漫画家きたむらましゅうです。
今回は「僕のTwitter漫画の作り方!」の前回の【承】に引き続き【転】の記事です。思いのほか長編になってますが、最後までお付き合いいただけると幸いです。
今回は【転】にふさわしく賛否が分かれそうなお話をしていきます。
最初にお断りしておきますが、
この【転】でお話しすることはある意味作画における手の抜き方に関する話です。
ただ、めんどうだから手を抜いているのではなく、
丁寧さや精緻さと、生産力や継続性を天秤にかけたときに僕の場合は後者の生産性を優先したいがためにそういう作戦をとっているというお話しです。
本来なら僕ももっとしっかり描きたいと思っています。しかし丁寧さの天井は自分で決めるしかないので、Twitter漫画を自主連載するにはある種の妥協をすることもあるのです。
特にこの『俺みそ』はストーリーを進めてちゃんと完結をお見せしたい!と強く思って描いているので未完で終わるぐらいならラフでも出してやる(第16杯)ぐらいの気持ちでいます。
なので【転】の本質はどうやって生産スピードを上げているかをお伝えする章と思って読んで頂けると幸いです。
【STEP.3】ペン入れ・清書
こちらがペンと少しの装飾のみの原稿です。
【STEP.3-1】背景に写真
1コマ目の大学の講義室のシーンは僕が大学で撮ってきた写真を加工しています。
この写真加工というのが…まぁバカにされる。
『ここほれ墓穴ちゃん』第2巻で墓穴ちゃんたちが初詣に行くシーンがあるのですが、その背景に写真を使いました。それには明確な意図があって、二人の普段と違って口数が少ないサイレンスな雰囲気を醸し出すために背景の情報量を高めたかったのですが…担当さんからもう少し描いてる感を出すように単行本収録時にリテイクが出たり、(この指摘についてはキャラ絵との調和のために必要なことなので一切不満はないですよ!)ニコニコのコメントでボロクソ言われました。今思えばリテイクがかかるような背景ベタ貼りがよくなかったのだと思い、その反省が生きていたりします。
本筋の『俺みそ』に戻るとして、背景の写真加工は下手にすると本当に手抜きしているように映るので使いどころを見極めないといけません。
今回は最初の1コマで、「ここは大学の講義室ですよ」という説得力をもたせるコマとして使っています。さらには他の学生がまばらに座っているような影を追加して「講義前なのかな?」と思わせています。そうして講義前に着席しているような真面目な学生像を小梅ちゃんに付与しています。(もちろんそこまでは伝わらなくてもいいのですが…)
ここを使いどころと見極めたのは、このコマがメインキャラが映らない場面だったからです。写真は現実そのものなので説得力が凄く高いです。反面、情報量が非常に多く、デフォルメされたキャラクターとの相性は悪いです。なのでキャラクターと写真加工の背景の同居を避けて使うことで、時短と、ページ内の説得力を有効に補強して写真加工の旨味を生かせるのではないかと僕は思っています。
【注意】これはあくまでTwitter漫画というフリーコンテンツを継続して生み出すための処世術であり、商業作品などでは許さないとする読者の方々・編集者さん・漫画家さんが大勢いると思われます…。僕も前述の経験から、『墓穴ちゃん』では背景をしっかり自分で描くよう心掛けております。そのあたりは場合分けして考えて頂き…ご容赦頂けますようお願いします…。
【STEP.3-2】花束より一輪挿し
「全部のコマに気合入った絵を入れるのがプロだろ!!!!!!」
という考えは美徳です。
漫画を読みにのれんをくぐってきて下さったお客様に対して、気の抜けたコマの入った漫画なんて出したら…あわわ
新人時代に僕も担当さんから言われました
「集中線の一本一本魂込めた線を引け」
…有償コンテンツはそうであってほしいとは思いますが、Twitter漫画においては僕は美徳より即席性や生産性を優先です。
Twitter漫画はお客さんが日々の忙しさの隙間で読んで癒しやエンタメを感じてもらうものであり、インスタントみそ汁のように、手軽に美味しく摂って温まってもらうものだと思っています。本枯れの鰹節と羅臼の昆布を使って丹念に出汁をとったみそ汁はもちろんうまいはずですが、作れる量が限られることで飲める量も人も限られちゃいますからね。『俺みそ』は広くいろんなお客さんに読んでもらいたいのでTwitter漫画においては少し作画を省略しています。ときに丸々ラフで上げたりもしました。ごめんなさい。
しかし全部のコマを抜くと広くいろんなお客さんに読んでもらいたいのに、誰の目にも止まらない画になってしまうので、最低1ページに1コマは気合を入れた絵を入れます。
短い製作期間で本気を出す画を見極めるのもコンセプトからです。
このページだと3コマ目の小梅ちゃんです。
ツカミのページであり、物語のヒロインの登場シーンなのでここは可愛く描いてあげます。コンセプト③ラブコメを作画から支えるには、そのラブコメを展開する主人公たちの表情をしっかり描かないと花がないです。
もちろんそのほかのコマの小梅ちゃんもしっかり描くべきなのですが、とりあえずコンセプトに沿った優先度に従ってまず1コマだけはしっかり魅せる絵を描いていきます。最初から花束のページをつくるより、まずは気合の一輪を挿していってます。
ちなみに各ページそれぞれの一輪の気合の入った作画のコマを赤枠で目立たせてみました。
そうでもないコマと比較すると作画にかけたコストの量の違いが分かりやすいと思います。ですが、この赤い印がなければその違いを意識して読む人はそうそういないと思います。【起】の記事で読んだとき気になりましたか?
まぁ、回を重ねていくと他のコマとのバランスを考えてページ全体のクオリティを上げたい欲が出て、少しずつ画力も上達していつかは花束になっていくと信じてます。時間との闘いですね。
ぶっちゃけ作画は商業化なり同人化するにあたってあとから直していけばいいのです。やっぱりネームまでで面白さの8~9割が決まってくると僕は思います。
【STEP.3-3】グレーで彩る
僕は作画時にトーンを使うのではなく、グレースケールで描いて出力時にトーン化しています。
これは、貧乏時代にオンボロNPCとフリーソフトのメディバンで漫画を描いていたときのこと…
トーンってドットの集合体なのでけっこう処理が重くなってしまうのです。作画に支障が出まくりだったので、グレーで着彩し、最後にレイヤーを統合して統合レイヤーを8bitに変換してトーン処理していました。これが『墓穴ちゃん』単行本化のとき結構大変でした。
その癖が残っていて、クリスタにしてからもグレーで着彩しています。クリスタはレイヤーのままでも出力時にトーン化が可能なのでレイヤーを統合する必要もなく便利です。
ただ、この方法にもメリットとデメリットがあります。
メリット
・塗るように絵を描けるので料理などをリアルに描くときはすごく便利
・重くならないので低スペPCでも快適
・Twitterにグレースケールであげられるのでモアレの心配がない
デメリット
・完成原稿が思ってた暗さと違う
・つい原稿を暗くしてしまいがち
・スプレーやぼかしなどを多用すると「デジタル臭さ」が出てしまう
こんな感じでしょうか。
ちなみにグレースケールで描いた原稿とそれをトーン処理した原稿はこちら
この処理はもっとうまいことできそうなので、きたむらが「これが一番早いと思います」と言ってるだけレベルで捉えてもらえるとありがたいです。僕はトーンを貼るよりグレーで着彩ですね。③の内容めちゃ薄い…ここに関しては僕もデジ歴1年なので日々勉強、日々進化していかねばなりませんね。
【STEP.3-4】まとめ
僕がTwitter漫画をシリーズ化していく上で作画面においては
緻密性<生産性
というスタンスであるということ。そして生産性を向上させるために、
背景に写真を加工して使ったり、
ページ内でコマの作画優先度を決めたり、
塗るようにトーン処理をしている
などなど工夫を凝らしてますよ~って話でした!
とにもかくにもこれで原稿が完成しました!
次回いよいよ「僕のTwitter漫画の作り方!」最終回である【結】です。
この完成した原稿をアップロードする過程までご紹介して一先ずの「僕のTwitter漫画の作り方」の完結としたいと思います。
ではでは~
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