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スモール・フェイセズ〜フェイセズの不幸

ローリング・ストーンズのギタリスト、ロン・ウッドや、ロッド・スチュワートが在籍していたバンド、フェイセズ。その前身バンドがスモール・フェイセズ。

それなりに洋楽に興味を持っていないとなかなか聴く機会もないかもしれないけれど、無視するにはもったいない、とっても魅力のあるバンドなんですよね。

知れば知るほど、なんとなく哀しいこのバンドのことをぼくなりに紹介してみます。少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。

スティーブ・マリオット(ヴォーカル&ギター)、ロニー・レイン(ベース)、イアン・マクレガン(キーボード)、ケニー・ジョーンズ(ドラムス)。この4人がイギリスでスモール・フェイセズとして1965年にデビューします。(実際にはデビュー時は別のキーボードなのですが、そこは飛ばしましょう)

ファーストアルバム「スモール・フェイセズ」は切れ味鋭いモッズ・サウンドで、それはそれは小気味いい。オルガンが印象的で、同時期のライバルバンド、ザ・フーのこの時期のアルバムと比べても断然かっこいい。

契約やらで揉めて、すぐにレコード会社を移籍。残ってた音源でレコード会社は勝手にセカンドアルバム「フロム・ザ・ビギニング」を出すわけですが、これもまたかっこいい。

ところが時代はサイケだヒッピーだフラワーだと大きく変わるわけですね。イギリスのバンドはみんなビートルズを追いかけていたあの時代なわけです。「リヴォルバー」や「サージェント・ペパーズ」だったわけです。

新しいレコード会社、イミディエイトから出た通算3枚目のアルバム「スモール・フェイセズ」。

え?デッカから出たファーストアルバムもタイトル「スモール・フェイセズ」じゃん。まったく紛らわしい。

いやいや、このサードアルバム、適度にサイケ入ってなかなかいいじゃないの。初期の疾走感は後退しつつも、音楽的には上がってるぞ。

で、4枚目は「オグデンズ・ナット・コーンフレイク」。「サージェント・ペパーズ」に続けとばかりにコンセントアルバムに挑戦したわけだけど、うーん、英語わからないとちょっと伝わらないよ〜。

5枚目にも編集アルバム「オータム・ストーン」が出るんだけど、個人的には3枚目までかなぁ。サイケの時代がなかったら、きっともっといいアルバムを作ってたと思うけど。ただこの初期3枚はいい。60年代のいろんな名盤アルバムと比べても負けてないね。

映像とか見ると、ヴォーカルのスティーブさんって演奏時めちゃくちゃエネルギッシュ。背が小さいんだけど、熱いモノが伝わってきます。

このスティーブさんが脱退して、バンドは一旦終わるわけです。スティーブさんはピーター・フランプトンって人と「ハンブル・パイ」というバンドを結成して、よりハードな路線に行くんですねぇ。

さて、残った3人は困った困った。そしたらなんと、ジェフ・ベック・グループを解散したばかりのヴォーカル、ロッド・スチュワートと、ベース弾いてたロン・ウッドがギター弾かせてくれいと加入するわけです。いやぁ、良かったですねぇ。そうしてフェイセズと名前を変えて再始動です。1969年のことです。(厳密にはファーストアルバム発表時はまだスモール・フェイセズと名乗っていたのですが、これも飛ばしましょう)

ところが、ひとつ問題発生です。ヴォーカルのロッドさん、この時に別のレコード会社とソロ契約を交わしていたんですねぇ。しょうがないのでソロ活動とフェイセズとしての活動と並行して行くことになるんです。

フェイセズのファースト・アルバム「ファースト・ステップ」。ん〜、イマイチピリッとしませんねぇ。68年、69年頃のイギリスロックって、なんかモヤモヤしてるアルバムが多いんです。ほら、レッド・ツェッペリンのファーストとか。そんな中途半端な空気感です。ハードな感じで行くか、ストレートな感じで行くか、バンドの方向性が定まってなかったと思われます。バンドの初期にはよくあることです。

セカンドアルバム「ロング・プレイヤー」はだいぶフェイセズのカラーが出て来ます。陽気なロックンロールバンドです。ライブをいっぱいやってわかったんでしょうね。なんてったって看板はロッドさんとロンさんですから。笑顔が似合う二人です。

映像とか見ると陽気な感じがバリバリ伝わってきます。ルックスも70年代な感じになって、そりゃもうかっこいい。

ちなみにこの時期のロッド・スチュワートのソロアルバムもいいんです。「ガソリン・アレイ」、「エブリー・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー」、「ネバー・ア・ダル・モーメント」、、、正直フェイセズの2枚目までのアルバムよりいいかも。く〜悔しいです。

そしてロッドさん、「マギーメイ」という曲がヒットしちゃいます。あ〜れ〜。ここからフェイセズはおかしくなっちゃったんじゃないかと、ぼくは推察します。簡単に言って、ロッド・スチュワートのバックバンドになっちゃうんですねぇ。そりゃしょうがない。お客さんはロッド・スチュワートが見たいんだもの。そのくらいこの当時のロッド・スチュワートはギラギラでかっこいい。若い頃の沢田研二みたいなもんです。

そしてフェイセズの3枚目「馬の耳に念仏」。やっと来たよ。これぞフェイセズ。会心の一枚じゃないですか。かっこいいロックナンバーに穏やかな切ないナンバー。天下のローリング・ストーンズにもこのアルバムのカラーは作れないでしょう。

ただ、今になってみればわかる。ロニー・レインの作る曲が明らかに違うんですねぇ。アコースティックな穏やかな感じ。やりたい音楽の方向性が違ってきてるんですね。

4枚目のアルバム「ウー・ララ」では、その辺が出ちゃってるかも。いいアルバムなんだけどバンドの一体感は薄れているような。なんでもロッドさん、レコーディングに来なかったりとかあったらしいし。

そうしてベースのロニー・レインが脱退します。日本人ベーシストの山内テツさんを入れて活動を続けようとしますが、もはやこれまで。

その後、ロッド・スチュワートはアメリカに渡り大成功。ロン・ウッドはローリング・ストーンズへ。キーボードのイアン・マクレガンはボブ・ディランのバックやったりローリング・ストーンズの80年のツアーにも参加してますね。ドラムのケニー・ジョーンズはザ・フーへ。

ロニー・レインはスリム・チャンスというバンドを組んで、アコースティックな素晴らしいアルバムを発表していきます。スリム・チャンスのアルバムはなかなか入手困難らしいけど、フェイセズとは打って変わって穏やかな音楽。いいですね〜。

両バンド合わせて活動期間約10年。時代に翻弄されたような気もするけど、愛すべきB級バンドってとこでしょうか。

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