【米国判例メモ/著作権】水着のデザインが著作権による保護を受けるか否か(分離可能性など)Triangle Grp. Ltd. v. Jiangmen City Xinhui Dist. Lingzhi Garment Co (S.D.N.Y June 22, 2017)

【キーワード】

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本判決:Triangl Grp. Ltd. v. Jiangmen City Xinhui Dist. Lingzhi Garment Co., No. 16 Civ. 1498 PGG, 2017 WL 2829752 (S.D.N.Y. June 22, 2017).

【事案の概要】

 原告Triangl Group Limited(以下 "Triangl"。他の原告と合わせて "原告ら") は、ビキニのトップ及びボトムに黒色の装飾的なトリムがあり、このトリムがビキニのカップ部分に T の形を成すことを特徴とする女性用の水着を販売している。

 (原告らの主張によれば)原告らは、2013年、被告Jiangmen City Xinhui District Lingzhi Garment Company(以下 "Lingzhi"。他の被告と合わせて "被告ら")を水着の製造委託先として取引を開始した。Lingzhiは、Trianglのために商品を生産する一方で、Trianglの商品のレプリカを生産、販売等していた(そのうちのいくつかを、"Brakinis"と称していた)。これを知り、原告らは、Lingzhiとの取引関係を解消し、Trianglの知的財産を使用しないこと、LingzhiのオンラインストアからTrianglの写真を削除すること、Brakinis商品を生産、販売等することを中止することなどに関する合意書を取り交わした。
 しかし、Lingzhiは、その後も、その商品の画像を掲載したオンラインストアを運営し、その商品の販売等を継続した。

 原告らは、著作権侵害(画像及び水着のデザイン)等を理由として差止め等を求める訴えを提起し、その後の手続にLingzhiほか被告が出席しなかったことなどを受け、欠席判決 (default judgment) を求めた。

 両当事者の水着の画像及びデザインは、次のとおりである(画像はこちらのウェブサイトより)。

画像1


画像2

【本判決の判断】

以下のとおり著作権侵害等を認定し、請求認容。

 (Star Athletica事件合衆国最高裁判決を引用し)「第一に、『見る者は、[注:Star Athletica事件における] 当該装飾を、絵画、図形又は彫刻の属性を備えた特徴として識別することができる。第二に、[注:同上] 当該チアリーディングユニフォームの表面上に施された色彩、形状、ストライプ及びシェブロンの配列は、当該ユニフォームからこれを分離し、他の媒体(画家のキャンバスなど)に応用した場合、平面的な美術の著作物に該当する」 (Star Athletica, L.L.C. v. Varsity Brands, Inc., 137 S. Ct. 1002 (2017))。
 「本件において、原告らは、原告らの商品の画像が、原告らが権利を有する著作物であること、また、Star Athletica事件合衆国最高裁判決を踏まえると、原告らのデザインの大部分は、その黒色の装飾的なトリム及び T の形を物理的に分離することができ、かつ、美術の著作物として実証し得るものであるゆえに[引用略]、著作権による保護を受けることができるものであることを適切に主張した。」

 「原告らは、ビジネス関係があったのことの結果として被告らが原告らのデザインに対するアクセスを有し、また、原告らのウェブサイトを通じて当該デザイン及び画像に対するアクセスを有していたことを証明した(引用略)。被告らが使用した画像のいくつかは原告らの画像と同一であり、また、その他の多くは原告の著作物であるデザインを使用していた。」
 「また、被告らが原告らの画像を実際にコピーした可能性があるという証拠がある。なぜなら、当該画像のうちのいくつかのソースコードは、それらを "Triangle" のデザインであることを示している(引用略)。これらを要するに、当裁判所は、原告らが著作権を有するデザイン及び画像を被告らが無断でコピーしたことを、原告らが証明したと認める。」

【ちょっとしたコメント】

 本判決は、水着の表面に施された平面的なデザインについて分離可能性を認め、著作権侵害を肯定した事例である。Star Athletica事件合衆国最高裁判決及び前回の記事で紹介したDiamond Collection事件(ハロウィーンコスチュームについて分離可能性を肯定した事例)を含めて、平面的なデザインについては従来から分離可能性が認められやすい傾向にあり、本判決もこれに沿ったものといえる。
 もっとも、本判決は、欠席判決であったこと、また、原告らと被告らがもともと取引関係にあり、被告らの商品がほぼ丸パクリの商品であったことが影響したのか、分離可能性を肯定する実質的な理由をほとんど述べていない。
 なお、本判決は、ソーシャルメディアにおける数百万のフォロワーの存在、様々なニュースサイトによる報道といった証拠に基づき、原告らが、原告らの商品は消費者の間に広く認識されているなどと主張したことに対応して、そのデザインが識別力を獲得したこと、また、(ほぼ丸パクリの)模倣品であるがゆえに出所混同のおそれがあることを理由に、トレードドレス侵害も認めている。

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