見出し画像

歌人 枡野浩一さんの絵

「枡野書店イラストレーション教室」のイラストレーションの基本指導項目にあるように、「文章に絵を描いてみる」ということはイラストレーション上達の秘訣です。画像は教室で枡野さんが描いた絵ですが、すでに枡野さんにしか描けない絵になっています。歌人枡野浩一さんは文章の名人であり、伝えたいことが強いだけでなく、すでに”短歌”の中にその「伝えたいこと」が整然と無駄なくデザイン、レイアウトされているから絵もよくなります。そもそも皆自分が何を「伝えたい」かがあまり整理しきれていないものです。
枡野さんの短歌は文章の力に絵が引っ張り上げられる文章です。イラストレーションを描く側としては、この「描きやすさ」に甘えないようにアイデアを絞らなければならず、解説的な絵でも抽象的な絵でも文章の力で包み込んでくれるとしても、文章と五分に対峙したい、さらには絵の力でさらに文章に力をもたせたい、となればなかなか難しいです。
自主的に名文ばかりを選んで絵を付ければ良いイラストレーションを描いているような錯覚に落ち入り、やがて(文章の力に)呑まれてしまい、自分の絵を見失ってしまう可能性があります。呑まれるというのは、次第に文章をよく理解せずテクニカルな「マンネリ化」「惰性」といった方へ呑まれていくということです。研ぎ澄まされた文章はそう簡単に自分の絵の中の世界観に押し込められるほど甘くはないからです。
枡野さんの場合には、逆のトレーニング方法として、絵には自信が無い(と自負される)ご自身で先に絵を描いてみて、そこに後から文章を付けていく方法がありますが、枡野さんはそういうことも得意そうなので、枡野さんには枡野さんが好きでも嫌いでも無い文章(むしろ嫌いな方がいいかも)をランダムに選んで絵を描いて頂くというようなことがよいトレーニングになるかもしれません。そういうトレーニングをしてから、改めて自分の好きな文章に絵を描いてみると、より効果的な構図を編み出すことができるようになります。
このような理由から「文章に絵を描く」という課題の場合は、自分が好きではない文章にも描いてみることが一つのポイントになります。

目黒雅也

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?