愛の病
カサヴェテスの映画をみたあと
あまりのかなしさに呆然となって
僕らは部屋を出ることにした
行くあてもなくとぼとぼ歩いているとやがて海についた
コールタールのような色をした波
気づけばかすみのような雨が降ってた
僕らはどちらともなく手をつなぎ腕をとり
抱き合って浜を歩く
砂が濡れた脚にからんで
そのまま倒れこんだ
「外でするのはなしよ」
なんて笑いながら君は言って
そのまま波の音を二時間聴いていた
で、
すっかり風邪を引いた僕らは
部屋に戻り
はちみつを溶かせたホットワインを飲みながら
愛の片鱗をかじった
病のときに愛は浮かび上がる
ほんのちょっとだけ
僕ら重なった
体全体と心の一部
本格的な愛の病がこれからはじまる
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