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小学生のポケモンぬりえから学ぶポケモンの収益世界一のメディアミックス2

「いま学童でメンコ(面子)がはやってるの。」
とダイホくんがダンボールを貼り付けた自作のメンコをいくつか持ってきてくれた。あいにく、先ほど僕は君のメンツ(面子)を潰したばかりだが。
「いっちょ勝負でもするか。」
と今度はメンコ大会に。これでメンツをひっくり返したいところ。メンコなんて小学生以来だろうか。床にメンコを叩きつけた時に生じる風で相手のメンコをひっくり返す。単純な遊びだがコツがいる。相手のメンコに横付けして打ち付けるのも少しの慣れが必要だ。ダイホくんは普段からかなり遊び慣れているらしく、手加減などしていたわけでもない僕のメンコは簡単にひっくり返されてしまった。
ダイホくんの顔がほくほくしてきた。実に誇らしげだ。既に1時間ほど一緒に遊んでいる。チャンスは今しかない。
「ところでポケモンのぬりえが好きって聞いたけど、良かったら見せてくれないかな。」
決まった。我ながら100%自然な流れだ。
「うん、いいよ。」
とダイホくんは笑顔で答え。部屋に戻ると、4冊ものクリアファイルを頭に載せて現れた。

6月下旬からポケモンぬりえにハマり始めて、この2ヶ月で数百点を塗り尽くした。始めはぬりえの本を買い与えていたが、市販ではそんなに種類が多くないことに気づき、ポケモンの公式サイトのぬりえを印刷するようになった(※1)。ぬりえまで用意しているポケモンの気配りにも驚く。このサイトでは80体以上のぬりえが用意されている。最近では塗った絵を集めること自体も好きになっているようだ。創作意欲だけではなく収集意欲まで魅惑してくるとは。

ダイホくんは、ポケモン図鑑を見て忠実に色を塗っていたようだが、塗るだけではなく描くようになる。始めこそ、お母さんやお姉ちゃんに描いてもらっていたようだが、次第に自分で線を描くようになる。もともと、ぬりえが好きなわけではなかったがポケモンが好きなので始めたそうだ。ここで重要なのは周りがやっているという理由ではなく、自発的に始めたということだ。ポケモンという媒介を通してクリエイティビティーが萌芽したとも言える。

「外国の子どもたちもぬりえをするのかな?」
とお父さんが何気なく話す。僕は南米で子どもがぬりえをするのを見たことがある。これは世界的な文化のなのだろうか?気になる部分ではある。

「ぬりえほん」の展望に関する基礎的考察(※2)によると、ぬりえは人間の装飾本能の顕在化だ。約1万年以上前の旧石器時代のアルタミラ遺跡が彩色で塗られているのも装飾本能によるもののようだ。日本では江戸時代に本の挿絵に塗られた形跡が見られるという、もっとも江戸時代までは紙が貴重なので民衆までは行き渡っていなかっただろう。明確にぬりえという形が日本で登場するのは明治時代になってからだ。
各国にぬりえの文化は存在し、アメリカでは幼児教育にぬりえが取り入れられている。ただし、線を自分で書かせ色を塗らせ解説までさせる。もはや絵画のようなスタイルだが、自由さを大事にする文化らしい手法だ。

僕も公式サイトからぬりえを印刷して、クレヨンでピカチュウを塗ってみた。ぬりえをするのは小学生以来だろうか、無心に塗りたくると。世の中の煩わしいことを忘れ、リラックスする効果もあるように感じた。

論文では、ぬりえとは子どもの内的世界の具現化である、と表現する。
ただ、子どもが、印刷されたぬりえ、いわば規定のルールをなぞり塗るだけだったのを飛び出して、自分で何もない白紙に線を引き始めたなら、すでにクリエイティビティーの世界だ。誰でも未来は白紙だ。どのような線を引き、塗っていくかがあくまで各個人の手に委ねられているのかもしれない。

ぬりえ好きなお子さんをもつ親御さんは、次は白い画用紙とクレヨンだけを与えてみたらどうだろうか?

次回は、このいよいよポケモンのマーチャンダイジングについて。

※1ポケモンだいすきクラブ https://www.pokemon.jp/play/paint/
※2「ぬりえほん」の展望に関する基礎的考察 宮城大学事業構想学部紀要 第12号 2009田邉夏子 伊藤真市 
https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&ved=2ahUKEwil2KLYy4DsAhVPMd4KHYUxBwcQFjAMegQIAhAB&url=https%3A%2F%2Fmyu.repo.nii.ac.jp%2F%3Faction%3Drepository_action_common_download%26item_id%3D162%26item_no%3D1%26attribute_id%3D19%26file_no%3D1&usg=AOvVaw0UopUQDVqep6Y4o72-pcml


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