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『あきらめの悪い男』それがオレが人生賭けて貫くスジ。

地平線会議という冒険野郎たちの月刊誌への今月の寄稿(なので普段とは違う独特の文体)。オープンソースな記事なので転載。
『あきらめの悪い男』それがオレが人生賭けて貫くスジ。
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11月4日。南極遠征の延期をSNSにて一般発表した。南極のスタート地点に行くための飛行機をチャーターしなければならないのだが、契約交渉が折り合わず来年11月に丸々1年の延期を決定した。行けなければ達成者になることはおろか敗残兵になることすら叶わない。人が行かないルートを選択した極点遠征においてロジスティクスは最大の障害だ。金がかかる。交渉に賢くならなければならない。

延期発表時、円安により米ドル立てのチャーター費が集まらなくて行けなかったとの意見が散見されたが、資金の算段はすっかり立てて、相手方の請求書さえ届けば、いつでも払えるところまでこぎつけた。装備も揃えてあったし、後は行くだけ。交渉は本当にギリギリまで粘った。こちらから強めに意見したが飛ばすことができなかった。

実行する以上に延期することはパワーを使う。ポジティブではないことをお伝えしなければならないのだから、決して楽しいものではない。心から悔しいが、落ち込んでいる暇はない。

今年、南極に行くというので人さまから金を集めているのだ。行けなければ“詐欺師”と罵倒されるのを甘んじて受け入れる覚悟がいる。まずはご説明をして、希望があれば返金をする。2018年にも飛行機契約がうまく行かず南極遠征を延期にした経験がある。その際は約300万を返金した。現在11月14日の時点で返金は5000円のみだ。その事実が、いかに僕の活動を信用してくれているかというリトマス紙になっており、持つべき責任の深さと高さを感じる。

よく人から、「それって世の中の為になるんですか」と聞かれるが、「ならないんじゃないですか」と答える。そんな事はやってみなければ分からないし、諸手を挙げて迎合されるなら冒険でも何でもない。挑戦者は理解されないもの孤独なものだ。人から理解されて生きたかったら舞台を降りればいい。理解されようがされまいが、やりたい事をやる。そんなワガママを人に応援して貰っている。

鶏が先か、卵が先か。資金が先か、遠征が先か。
ジレンマと矛盾。夢と現実。相反する中で迷いながら苦しみながら己に立ち向かう。

延期発表の文章を書きながら浮かんでいたイメージは、植村直己さんがフォークランド紛争により南極遠征を中止せざるをえずソリを自ら解体している姿だった。先人の心情に比べたら自分の心情などチンケなものだ。

南極に行くつもりでやってきたので、スケジュールが南極と被る可能性がわずかでもある仕事はお断りしてきたし、南極後の遠征計画の妨げにしたくないので、来年の仕事も同様にお断りしてきた。狂愚でありたい、自分の生き方のスジを通すため。

来年11月の確実な南極遠征の実行と達成。それが本懐。
簡単に叶わないからこそ夢。だから人生を賭ける価値がある。オレはしつこいぞ。

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