町医者のぼやき

最近はサラリーマンの方などお忙しい方から、長期処方を希望する方が増えています。特に、大学病院などから逆紹介を受けた方などは、「大学では3ヶ月分出してもらっていたんですが?」とおっしゃる方も。

実は、診療所と大学病院との大きな差があります。

大学病院などの担当医は、患者さんをたくさん診たからと言って給料が増えるわけではありません。(今は変わっているかも知れませんが、少なくとも私が大学病院で外来をしていたときはそうでした。)ですから、そうでなくても混み合って、9時から12時迄の診察のはずが、2時、3時とずれ込むことも稀ではありません。そんな時、患者さんの方から「2ヶ月分お薬を出して欲しい」という申し出があれば、(患者さんが減るので)大歓迎のはずです。

ところが我々開業医は、今の診療報酬体系では、患者さんに「来てもらってなんぼ」の世界なのです。もし3ヶ月分お薬を処方すると、最初の月こそ、再診料を初め、特定疾患療養管理料(これが一番利益が大きい)などを頂けるのですが、2ヶ月目、3ヶ月目の分は薬価の分しか頂けず、製薬卸業者に薬剤費を支払った後の薬価差益しか収入がありません。薬価差益は、発売後間もない新薬はそこそこありますが、殆どの薬は、例えば薬価100円の薬を、85円で仕入れて、消費税9円を払って、残り6円、といった状況なので、本当に雀の涙しか利益がないのです。その辺りをお話しすると、たいていの患者さんは1ヶ月に1回の受診で納得して頂けるのですが、大学病院等の担当医の先生方には、かかりつけ医に逆紹介されるときには、一言、その辺りの説明をしておいて頂ければ大変助かります。

本当を言うと、特定疾患療養管理料(225点=2250円)は月に2回まで算定できます。ですから高血圧、糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症など)などで通院されている方には、本当は月に2回以上来て欲しいのです。その方が我々は儲かります(笑)。診療所によっては初めから投薬は2週間以上は出さないと決めているところもあります。でも例えば高血圧の方で、お薬が決まって、血圧が良好にコントロールできている方は、本来は2週間おきに経過を追う必要はないはずです。しかし「この方は1ヶ月に1回の経過観察で十分。」という判断は、何人も患者を診てきた熟練医にしかできないことなのですが、そういう判断に対しては何の報酬もありません。今の診療報酬体系では、経験の少ない医者が、「心配だから来週も来てください。」という方が、「儲かる」仕組みになっています。

書き始めると止まらなくなってくるので、この辺で止めますが、他にも色々な矛盾や不合理なことが山ほどあります。また機会があれば書いてみたいと思います。

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