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ブルース・ウィリス主演、レニー・ハーリン監督『ダイ・ハード2』

 1988年のジョン・マクティアナン監督、ブルース・ウィリス主演の『ダイ・ハード』は、それまでのアクション映画の流れを変えるエポックメイキングな作品として人気が高い。その大ヒットを受けて1990年に作られたのが続編の『ダイ・ハード2』だ。ウォルター・ウェイジャーの小説『ケネディ空港着陸不能』を基にブルース・ウィリス演じるジョン・マクレーンを主人公としたものに脚色された。担当したのはダグ・リチャードソンとスティーブン・E・デ・スーザ。監督はフィンランド出身で、1987年の『プリズン』、1988年の『エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃』などで注目されたレニー・ハーリン。アメリカでは1990年7月、日本では同年9月に公開され、前作の配収を遥かに超える約33億円を記録した。ほぼ同時期に公開されたハーリン監督、アンドリュー・ダイス・クレイ主演の『フォード・フェアレーンの冒険』はあまりの不入りで早々に打ち切られてしまうという悲劇に見舞われる(実際、映画は面白いんだどなぁ……)。
 筆者が『ダイ・ハード2』を観たのは劇場公開される2週間前、今ではまったくなくなってしまった“先々行オールナイト”上映で、かつて日比谷にあった旧日比谷スカラ座。最初の上映を観てしまうと終電には確実に間に合わないので、2回連続で観て、始発電車を待って家に帰るという、今では全然できないであろう荒業をよくやっていた。その後、テレビ初放送されたのは1992年10月3日のフジテレビ『ゴールデン洋画劇場』で、ウィリス=村野武範さん、ボニー・べデリア=吉田理保子さん、ウィリアム・サドラー=大塚明夫さん、フランコ・ネロ=小林清志さんというボイスキャストだった。その2年後の1994年4月10日にはテレビ朝日『日曜洋画劇場』で2回目の放送があり、ウィリス=野沢那智さん、べデリア=弥永和子さん、サドラー=堀勝之祐さん、ネロ=田中信夫さんで、ソフト版はウィリス=樋浦勉さん、べデリア=駒塚由衣さん、サドラー=大塚芳忠さん、ネロ=吉水慶さんだった。ちなみに、2023年6月、スターチャンネルでテレビ朝日『日曜洋画劇場』の放送時にカットされた部分を追加収録した追録ノーカット版も放送され、キャストはウィリス=岩崎ひろしさん、サドラー=白熊寛嗣さん、ネロ=丸山壮史さんが担当したとのこと。
 今回の舞台はワシントンのダレス国際空港。ウィリス演じるマクレーンがべデリア演じる妻のホリーを迎えに空港にやってくるところから始まる。そこに、アメリカに移送されてくるネロ演じる麻薬王エスペランザを奪還するべく、サドラー演じるスチュワート大佐以下、テロリスト集団が空港のシステムを混乱させるべく攻撃を仕掛けてくる。異変に気付いたマクレーンがたったひとりから徐々に仲間を増やしながら、テロリスト集団と戦いを繰り広げるというのがあらすじだ。前作からの続きということで、前作を観ていれば思わずニヤニヤしてしまうネタが散りばめられていて、まず、それが楽しい。マクレーンとテロリスト集団との丁々発止の頭脳戦、ド派手なアクションの連続と、ハーリン監督はかなり無茶なことをしながらも勧善懲悪の物語を進め、息つく暇を与えないほどのパワーがあふれている。某登場人物の裏切りなど、捻りを加えた終盤の展開など、前作を上回る破天荒さは、まさにハーリン監督お得意の語り口と言える。ウィリアム・アザ―トン演じるおさわがせリポーター・ソーンバーグも再度登場し、ホリーと同じ飛行機に乗り合わせ、前作以上に足を引っ張る活躍(?)を見せ、彼に相応しいオチまで用意されているというのもお楽しみのひとつ。そのほか、『ターミネーター2』でシュワちゃんの敵役を演じることになる無名時代のロバート・パトリック、同じく無名時代のジョン・レグイザモがテロリスト集団のメンバー役として出演している。前作ではヴェートーヴェンの「歓喜の歌」が印象的に使われたが、今作ではハーリン監督の出身国であるフィンランドの作曲家シベリウスの「フィンランディア」がここぞとばかりにクライマックスとエンドロールで堂々と流れる。クラシックファンならご存じの曲だろうが、この映画でシベリウスという作曲家や「フィンランディア」という曲を知ったという映画ファンも多いはずだ。数年前、テレビ東京の大みそかの恒例番組『東急ジルベスターコンサート』のカウントダウンでこの曲が演奏されたときは、やはり『ダイ・ハード2』を思い出してしまったものだった。
 大ヒット作の続編はあまり面白くないというのが定説だが、『ゴッドファーザー』や『ターミネーター』など、続編が前作に匹敵、またはそれ以上に面白いという場合がある。この『ダイ・ハード2』も個人的には前作に匹敵するほどの面白さがあると思う。そんなバカなありえんだろう、というツッコミは野暮というもので、普通の警官の中年男が1年後のクリスマスに、今度は空港でまたまた事件に巻き込まれ、それをどう解決していくかということを純粋に楽しむのがいいと思う。この作品も劇場の大スクリーンといい音響で観てこそ映える作品だと思うので、4Kデジタルリマスター版、IMAX、ドルビーシネマなどで再上映されないものかと密かに期待している。
 

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