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『トランザム7000』に関する個人的な話

 テレビの洋画劇場で初めて吹替版で観て、あまりの面白さで好きになった映画が数多くある。そんな中でもお気に入りの1本が1977年制作の『トランザム7000』だ。監督はスタントマン出身のハル・ニーダム。主演はバート・レイノルズ。このコンビはこの後、続編となる『トランサム7000VS激突パトカー軍団』、『グレートスタントマン』、『キャノンボール』シリーズ、『ストローカーエース』という作品を生み出す。
 この『トランザム7000』、筆者が初めて観たのは日本テレビの『水曜ロードショー』での2度目のテレビ放送だった。テレビ初放送は1982年4月17日放送のフジテレビ『ゴールデン洋画劇場』で、レイノルズ=石田太郎、サリー・フィールド=井上瑤、ジェリー・リード=日高晤郎、ジャッキー・グリーソン=富田耕生という吹替キャストのバージョンで、2度目の放送は『ゴールデン洋画劇場』版だった。石田と日高の丁々発止の絶妙な掛け合い(セリフを聞く限り、かなりアドリブも混ぜていただろうと推測)、井上のキュートな声、富田のコメディー演技と、日本語吹替版としてはかなりのハイレベルで出来も良く、吹替版で映画を観る楽しさを味わえたことを記憶している。
 レイノルズ演じる伝説のトラック野郎・バンディットが、リード演じる相棒のスノーマンと組み、パット・マコーミックとポール・ウィリアムズ演じるイーノス親子との賭けで、テキサス州からジョージア州まで、クアーズビール400ケースを28時間で持ち帰ることになる。バンディットは速い車トランザムに乗って先導し、スノーマンがトラックを運転するという体制で向かい、ビールを積んで戻ってくるときにバンディットがフィールド演じる逃げた花嫁キャリーを拾い、その花嫁をグリーソン演じる保安官のジャスティスが息子と追うという展開。物語はいたってシンプルで、バンディットとスノーマンのバディーもの、バンディットとキャリーの恋、バンディットとジャスティス保安官の追っかけという要素がいい具合にブレンドされている。レイノルズとリード、レイノルズとフィールドのテンポのいい掛け合い、トランザムとパトカーとのカーチェイス、警官や保安官などという権力に対する辛辣なユーモア、バンディットとトラック仲間たちとの連帯など、軽快に見せる演出が本当に楽しい。日ごろの悩みなんかどこかに吹っ飛んでしまうような痛快さで、続編が作られるのも頷けるほど出来も良い。
 実は、この映画を未だにスクリーンで観たことがない。昨今、デジタルリマスター版公開や午前十時の映画祭での上映など、旧作が劇場のスクリーンで上映される機会が増えているのに、なぜかこの映画はそういう機会に恵まれていない。こんなに楽しい映画、劇場の大スクリーンで観ないでどうするのだろう。日本の配給会社、もしくは、午前十時の映画祭の関係者の方々、ぜひ、『トランザム7000』をスクリーンで観られる機会を作っていただけないだろうか。筆者のような映画ファンは全国に数多いるはずだと確信している。


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