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<下流老人 Life Wreck> 女性議員は「デキる人間」か、招き猫か?

 その同棲カップルの彼女は有能なキャリアウーマン、というかほぼ社畜。彼の方は雪の夜に公園のベンチの下で死にかけていたのを彼女に助けられ、現在は専業主夫。コイツもとんでもなく有能で、あらゆる家事を完璧にこなし、卵かけ御飯(飯はすでに炊かれている状態)さえ作ることが出来ない彼女を支えている。とは言え彼の目的は自分の食い扶持を維持するために彼女を毎日働かせることにあった…
 最近では珍しくなくなった、伝統的な男女の「役割」を入れ換えたドラマ…ではない。違っていたのは、彼は大きな黒猫だったのです!
 今期のテレビアニメで、ぼくイチ押しの『デキる猫は今日も憂鬱』の設定である。面白い。手書き風3DCGも良い出来だ。人が猫を飼うのではない、猫が人を支配しているのだとか、猫を飼う独身女性は結婚できないとか、猫好きあるある的なイメージを上手く取り込んでいるようにも見える。
 にしても、大きなヒグマくらいの怪物である。これがテレビを見て、パソコンで検索し、炊事、掃除、洗濯、のみならず自分用の割烹着やら(抜け毛対策の)炊事用手袋を縫い上げ、ゴミ出しをし、スーパーに買い物に行き、近所づきあいまでしているのだ。ニュースになるだろ、普通。まあ隣の老婦人は猫が拾われてきてからずっと成長を見てきたので驚かないし、スーパーのバイトは着ぐるみを着て町中を歩く変態だとしか思っていないのだが。
 ぼくもずっと専業主夫をやってたし、はっきり言って家事嫌いの母と比べたら、たいていの事はぼくの方が上手かったと思う。だから家事をする男にも、家事は苦手だけど外での仕事はバリバリ出来る女にも違和感は無い。それが猫だったら別だけど。
 さて、自民党女性局の議員さん達はどうなんだろうか。
 総勢三十八人のフランス研修で、松川るい局長や今井絵理子局長代理などがはしゃいでいる様子の写真をSNSに上げたことから、いま自民党内外問わず袋叩き状態だ。この方々は本当に仕事の出来る方なのか、伝統的な男女の役割を打破する側なのか、逆なのか、ぼくは何も知らない。研修も必要だと思うし、遊ぶことも必要だと思う。型にはまった「あるべき議員像」から単純に批判するのも間違いだろう。
 ぼくもあれこれやってきた関係で、男であれ女であれ、地方議員や政党関係者とお会いしたり、一緒に仕事をしたりしたことがあり、政治家の良い面も悪い面も見てきてはいる。完璧な人格者もいないし、絶対的正義のヒーローもいない。どうしようもないろくでなしもいるはずだ。
 しかしひとつだけ言えることがある。議員は有権者が選ばなければ議員になっていないということだ。税金の無駄遣いだと言うのなら、そういう無駄遣いをする奴を選んだ有権者が大勢いたということになる。
 日本は女性の社会進出では最後進国だ。女性議員の数も少ない。自民党女性局は、だからより強くアピールしたかったのかもしれない。だが、そこで何をアピールしようとしたのかを見れば、彼女たちの姿勢、方向性が分かってくる。見た目も気にせずバリバリ仕事をこなす姿より、優雅でリッチな生活を満喫する姿の方が有権者にアピールすると思っているのだ。そしておそらく、そこに同調する人が多くいて、彼女たちを議員に押し上げるという構図が存在しているのだ。
 それが女性の社会進出なのだろうか? 自民党女性局のホームページを見てみた。メンバー紹介ページでは男性議員の方が多い。だからダメだと言うつもりも無いが、これが実態なのではある。
 自民党の女性議員のひとりひとりは、おそらく様々な困難に負けず、自分のやりたいこと、やるべき事を貫いてきたのだと思うが、それが結果的に(もしくは目的意識的に)今の社会のあり方を肯定し、維持、存続させることに繋がっている。はた目から見ると自民党のエラい爺さん達は、自分達の実権をより確固とするために女性議員をイメージアップの道具、集票の人寄せパンダ、否、招き猫にしているだけのように見えてしまう。
 「デキる猫」の飼い主の彼女が、猫に使役され続け、会社では社畜のまま、おまけにイケメン上司に骨抜きにされてしまうかどうかは今後の展開のお楽しみだが(物語であれば面白いだけだが)、女性議員が現状の男社会、行き過ぎた競争社会の下支えのための存在でしかないのであれば、それは笑い事で済む話では無い。

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