財政支出がいくら必要かを考えてみる

2021年7月6日、内閣府が2021年度の経済指標についての試算を公表しました。実質国内総生産(GDP)の成長率は3.7%と、1月18日の政府経済見通し4.0%から下方修正された試算ながらも、「GDPは2021年中に感染拡大前の水準を回復することが見込まれる」と書かれています。

感染拡大前とはいつのことを指すかは明示されていませんが、それを19年度(20年3月まで)だとすると、内閣府の国民経済計算(GDP統計)によると2019年度のGDP(実質、以下同じ)は551兆円です。20年度のGDPが526兆円なので、試算結果通り3.7%成長しても21年度末でも545兆円(=526兆円×1.037)にしかならず、感染拡大前の水準を回復していないのですが。。。

さてそんなツッコミはともかく、政府が本当に21年中に感染拡大前の水準にGDPを戻したいと考えているのなら、まだコロナ禍が収まっていない中での消費や投資の回復や、外国頼みの輸出増に期待するのではなく、補正予算を組んで大規模な財政支出を行うしかないように思います。

そこで今回は、コロナ感染前、それどころか消費増税前の水準までGDPが回復するためにはどれだけの財政支出が必要なのか、単純な算術&思考実験をしてみます。

前述の通り、コロナ禍前の2019年度のGDPは551兆円でした。しかし、2019年10月に消費増税を実施したため、2019年10−12月期GDPが前期比-1.6%と大きく減少しました。よって、コロナ禍前でGDPが最も高かったのは2018年度で、GDPは554兆円です。

この値を仮に、潜在GDP水準とします(あくまで仮です。私自身はもっと高い水準だと思っています)。潜在GDP成長率は内閣府推計より0.9%です。これも低いような気もしますがとりあえず受け入れます。そうすると2020年度の潜在GDPは564兆円(=554兆円×(1.009)^2)となります。

しかし、実際の20年度のGDPは526兆円でしたので、推計された潜在GDP水準からは約38兆円のギャップがあることになります(下図)。

潜在GDPvs実際のGDP画像

上記では18年度GDPを仮の潜在GDP水準としましたが、本来の水準はもっと高いと思われるので、そこまで達するにはおそらく50兆円以上の追加財政支出が必要だと思われます。

そうすればGDPは600兆円に近づきますが、以前政府はGDP600兆円を目標に掲げていたので(みんな忘れてる???)、ちょうどよいのではないでしょうか。また、アメリカも大規模な財政支出によってインフレ懸念が起こっていますが、日本もこれだけの財政支出を行えば同様に、インフレ率も目標値である2%にも近付いていくことが想定されますので一石二鳥でしょう。

目標だけ掲げて達成しなくても放置したり、楽観的な見込みだけ示して全くそれを達成しようとする行動を起こす気がないことにはもうウンザリしていますので、政府はさっさと財政支出をして下さい!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?