還暦七夕Ⅳ

 case2
 七夕の午前10時。しまった、待ち合わせ場所浜公園としか伝えていない。どこに現れる?車で来るだろうから、駐車場の近く。浜辺に降りる階段の途中に座って待とう。曇り空から時々見せる太陽が眩しい。座っているだけでも汗が吹き出してくるよ。君は来てくれるかな?
 15分‥‥まだ来ない。30分‥‥やっぱり来てくれなさそうだよ。ブラブラ散歩でもしながらもう少し待ってみよう。松林を吹く風が心地よい。軽くランニングをする人、夫婦で散歩をする人。遠くからこちらを見ている人がいる。ちょっと足早に近づいてみた。残念人違いだ。1時間過ぎてしまった。電話もLINEも無し。このままだと、これで終わりって事でしょうか?
 毎年送っていた誕生日おめでとうメール。返信などなかった、でも今年は私の癌の告知に返信してくれたね。少しは気に留めてくれてるんだ。年に一度って事なら会ってくれるかもしれない。私が甘かった。惚れたの腫れたのなんてこの歳じゃお笑いですよ。ただ君に会いたい。理由なんて無い。心がそれを望んでいるそれだけなんだ。
 松林をもう一往復して君が来なければ諦めよう。
 君にさよなら言われた日覚えていません。寒い日だった気がします。弥生冷たい風を震える声で歌いながら、涙流し帰ったっけ。同じような気持ちがする。今日の気分は?ふきのとうの初恋?赤い傘、やさしさとして想い出として、心は涙で一杯、溢れ出そうだよ。来年まで一年待ってみよう。あと一年生きて行くよ絶対。だから来年は会いに来てください。私の青春時代のステキな恋❤️にまだ終止符は打てない。

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