還暦七夕Ⅲ

 case 1
 今日は七夕、心待ちにしていた。天気は?曇り降水確率60%うーん微妙。待ち合わせ時間は午前10時。ちょっと早いけど車に乗っていざ出発。15分前に到着。駐車場に車を停めて、ブラブラしてこよう。浜公園もすっかり様変わりしてしまっている。松林だけ何となく昔の面影を残していた。曇り空から時々見せる陽の光、木漏れ日をあびえ、爽やかな風にまるで高校生時代に戻ったような気がする。
 待ち合わせは浜公園とだけ、特定の場所を指定していない。これで会えるのか?縁が残っているなら会えるかな?って来てくれる前提の話なのか?お気楽なやつだよ俺って!それより、来てくれるのか?急に不安になりながらも散歩を続けた。松林を折り返し少したったあたり。こちらを見ている女性がいる。もしかして?優しく微笑み軽く頭を下げた。頭を上げたその顔は高校生の君だった。来てくれたんだ。お互い歳をとったよ45年も経っているんだ。太ってるよ、顔もシワだらけだよ、分かっているけど僕の目には女子高生の君にしか見えないようだ。
 近づいて「やぁ、久しぶり。元気だった?」不甲斐ない、これが精一杯だ。ただ涙が溢れて、拭うこともせず、ただ君を見ていた。高校生の時よりもドキドキしてるのかも。奇しくもこの場所は初めて口づけをした場所に近い。あの頃のように松林を二人して散歩した。時間の許す限り何往復も。近況報告して、君は幸せだと言った。良かった良かった。私も幸せだよ。でも、癌治療があまり上手くいっていない事を告げた。お互い歩んできた人生に、お互いの家族に敬意を表するよ。また来年会ってくれたらうれしいよ。また一年生きようって頑張れるから。

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