LIFE IS NOVEL #26

なぜこの写真をイグチカナエに送ったのか?
こんなことをする意味はあるのか?
だれが犯人なのか?
そんな疑問よりも前に、僕がその瞬間考えたことは、この写真をイグチカナエに見られたくないということだった。

何とか僕は誤解を解こうとした。誤解?いったい何の?僕が女性と会っている写真を見られたからといって、何が問題なるのか?何を誤解させるというのか?
浮気をしたとか二股をかけたとか、そんな疑惑ではないし、そもそも彼女とはそんな関係性ではない。

では、彼女はいったいなぜこんなにもショックを受けているのか?なぜ見せるのをためらったのか?

僕にはこんな修羅場未満の状況を解決するには、経験が不足していた。では、どうする?僕には無理だ。

「…この写真は、ああ。誰が何でこの写真をカナエさんに送ったんでしょう。確かに、ただのいたずらですね。気にしないでください。」
「そう…この人ってその…ウラベくんの…」
「この人?一緒に写っている人ですか?単なる知り合いですよ。知り合いって言っていいのかな?気になりますか?」

「うん、気になる。何もなければ、いたずらにしても、私にこんな写真送ってこないでしょう?」
「本当にただの知り合いですよ。先週、道でぶつかってしまって、その後で入った店でまた顔を合わせたので、ちょっと話をしたんですよ。それだけです。」

「こっちの写真は仲良さそうに見えるけど…」
「ええ、この時はやたらと機嫌が良かったですね。たまたま入った店で再会して、食事を一緒にしただけです。」
「偶然会っただけってこと?」
「はい、どんな人なのかも知らないですからね。」
「そう…でも、かなりあやしいね。偶然を装ってるだけかも、ウラベくんも気をつけてね。」
「確かに迂闊でした。あまり女性と話すことがないので舞い上がっちゃいました。気をつけましょう。お互い。」
「そうだね。でもなんだろう。」
「どうかしましたか?」
「ウラベくん、なんだか雰囲気変わった?すごく落ち着いているから、まるで、別の誰かと話しているみたい。」

カナエさんは、なかなかの観察力を持っているようだった。

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