LIFE IS NOVEL #29

「驚かないのか。リアクションが薄くて、少しがっかりだ。」
「ご期待に添えなくて悪かったね。感想としてはむしろ、予想より余裕があるな、と思ったよ。僕がカノウに提供した情報をもとにした、スケジュールなのかな?
もしそうなら、君たちの言う『あの日』は、今日から数えて、10日間から2週間以内にやってくるわけか。」

「ああ、ご理解頂いた通りだ。ターゲットに憑依した後、今のお前の記憶が残ってる期間内に事が起きる、そういうタイミングだ。かといって今から殺して、俺や俺の仲間に憑依させるまでの時間はない、微妙なとこだ。
さて、それまでどうするんだ?
逃げてみるかい?」

「逃げる?逃げさせてくれるのか?」
「まさか。逃亡するなら、ここで脚を潰しててでも止めるね。
俺なら。」
「でも、あんたの上の奴らはそれを選択しないわけだ。あくまでも、僕に協力という形を求めてる」
「そうだよ。まったくもって、まどろっこしい!」
「理解はできるよ。あんた達のターゲットさんに憑依したところで実行するのは、結局のところ僕だ。僕が実行したいと、実行しなくちゃいけないと考えなければ、意味がない。
あと7日でそれが現実にできるかは、わからないけど。」

「だからさ。家族でダメだった。お前の脅迫材料としては効果は薄い。なぜ、あの日の後、お前の姉は俺に何事も無かったかのように連絡してくる?忠告のひとつでもお前がしていたら、いくらなんでも探りのひとつでもしてくるものだろう。それがなかった。効果は今ひとつだった。
だったら別の人質を取らないと。
そこで、俺が選んだのが。」
「カナエさんというわけか?本当にご苦労様。僕が気付いた時点で無駄になった。」

「そうかい?何なら彼女を襲ってもいいんだぜ。お前の秘密を教えてやってもいい。現にお前は頭に来て、俺を呼び出した。人質としての価値が保証された証拠だ。」
「カナエさんが人質として価値がある?本当にそう思ってるのか?だったら、やっぱり僕との交渉担当はあんたには無理だ。」

「何?どういう意味だ。彼女を傷つけたくないだろう?失いたくないだろう?それはウラベタケヤス、お前が避けたいことじゃないのか?」
「だから、その駆け引きが間違っている。今僕とあんた達の間に必要なのは、脅迫関係じゃない。必要なのは、いわゆる信頼関係じゃないのか?その点カノウって人は上手くやってるよ。話は何にも進展してはいないけど、関係性はできてきている。」
「信頼関係なんかできると思っているのか?俺たちはお前を利用しようとしてるのに?」
「ああ、難しいだろうね。今はまだ。だけどこれから先はわからない。なにせ、まだ7日もある。人間何をもって心変わりするかわからないし、もしかしたら、僕が想定していない切り札を準備しているかもしれない。そんなものがあっても、あんたには伝えないだろうけどね。」

「お前はそれでいいのか?家族に、周りの人間に、手が回っている。お前の姉なんか、俺を恋人と思ってるんだぞ。」
「ああ、それはしょうがない。姉は残念な恋愛経験しかないから、簡単に騙される。あんたが騙してなくても、近いうちに別の誰かに痛い目にあってたさ。それも人生経験さ。
もちろん程度ってものはあるけど、ね。」
「それでも家族なのか?まるで他人事じゃないか。」
「他人事だよ、家族でもね。所詮は姉は姉の人生を歩くのさ。ワタナベはワタナベの、カナエさんはカナエさんのね。でも、さっきも言った通り程度を考えないといけない。
やりすぎは良くない。僕はそう思うよ。」

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