LIFE IS NOVEL #35
食事の後、イグチカナエと別れてから僕はメモを取り出した。そこに書かれている住所に向かうことに決めていた。
僕の家とは駅と同じ方向ではあるが、商店街を挟んで反対側。歩いて10分かからない。
目的地に向かう道程、周囲に目を配る。歩き慣れた道ではない。見覚えのあるところもいくつかあった。
小学校の頃、友人がこの辺りに住んでいたこと、中学生の頃自主トレのランニングでここまで足を伸ばしていたこと、記憶にあるこの住宅地は5年程前に止まっていた。
目的地に到着する。そこに建っていたのは僕の家よりも1.5倍は大きい庭付き一戸建てだった。
どの部屋にも電気はついていない。幼児がいるとは言え、全員が就寝するには早い時間帯だ。
おそらく不在にしているのだろう。
「うん…ただいまって気分にはならないな。」
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