LIFE IS NOVEL #31

その男は似ていた、かつての僕であるシンドウシンタロウと。

使命感にあふれ、実行力もあり、責任感を持っている。そして利己的なところがそっくりだった。時に暴走もするが、それが周囲からどう見られているか理解できていない。

かつての僕がそれに気づいたのは、おそらく自分が家庭を持ち、子供を授かってからだった。本当に自分勝手な存在を知り、自分を初めて省みた。

まあ、反省と自覚はしたが、だからといって自分を変えることはなかったけれど。

「なあ、シンドウさん。あんたが俺だったらどうしてた?」
「え?」
「俺は、あんたの調査も担当してたんだ。それで、結構リスペクトしてたんだぜ。自分の信念を持って仕事をしてた。羨むような成果を上げていた。俺もあんたのようにありたいとさえ思ってた。」
「まさか、あんな男に憧れていたのか?そりゃ、他人から見たら成功していたかもしれない、社会的にはね。でも、人間性は自分のことではあるけど、尊敬できる気がしない。むしろ軽蔑すら感じてる。」
「ウラベタケヤスから見たらそうだろう。
でも、俺たちみたいに他人に知られず、時には恨まれる仕事をしてる立場としては、目標だ。
彼のストイックなまでに冷徹だったところは、そうありたいと感じた。」

「そうか、だったら今の仕事は天職なんだろう。考え方を改めて欲しいとは思うけど、あんたの年齢を鑑みれば、しょうがないか。」
学生である自分のセリフはないなと、自嘲しながら男に告げた。
「だったら、なおさらラッキーだったと思って欲しいな。もしも僕ではなく、そっちに憑依していたら、あんたは死んでたんだ。生きてこれから、もっと大きなことを成し遂げればいい。
そうだな、いつか思うんじゃないか?『俺はこれをするために、あの時シンドウシンタロウに選ばれなかったんだ』ってね。」

その言葉を聞いて、男は笑い出した。その声は店内に響き、他の客もこちらに振り返った。

「そうだな、そうあって欲しいよ。そんな日が来るといいな。すべてはお前次第だ。今となっては俺の将来も、この店にいる連中の命運ってやつもお前にかかってるんだから。」

「そこまでの大仕事なのか?言えないまでもヒントをくれないか?いい加減、もったいぶられるのもウンザリしてきた。」

ここでようやく、今日の目的に触れることができそうだった。カノウから情報を引き出せないのであれば別の人間から。可能性があるのは、この男しかないと思っていた。
もし、手を出してきたら、そのチャンスを逃すまいと待ち構えていたところで殴りかかってきてくれたわけだ。

「ヒント?いいだろう。ニュースはしっかり見ることをおすすめする。お前も知っているように、本当に重要なことは小さく隠されているから、隅々までチェックするといい。」
「なるほど、多少は表に出ることなのか。むしろ隠したいけど、隠せないほどに重大なことなのかな?」

「さすが察しがいい。あともう一つオマケだ。
ターゲット、つまり憑依の対象は、お前の知らない人物だ。しかし、そいつの近くにはお前の知っている奴がいるぜ。超が付く有名人だ。
まあ、サインはせがめないだろうけどな。」

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