LIFE IS NOVEL #27

僕は口が上手い方ではまったくなかったし、どちらかといえば無口な方だった。
僕はこの窮地を脱するために「シンドウシンタロウ」の力、というか経験を利用してしまったわけだ。かつて彼がやってきたことを思えば不本意だったがやむを得なかった。
そう自分に言い聞かせた。

結果としてイグチカナエには違和感を抱かせてしまったが、完全に安心させるよりは良かっただろう。多少の警戒心を持ってもらった方が良かったのだ。
そう自分に納得させた。

彼女と教室で別れたあとすぐ、もう一人の当事者に連絡を入れた。というかクレームだ。

メッセージを送ったあと、すぐに電話がかかってきた。

「すみませんでした。ウラベくん。この件については私が至らないばかりに、迷惑をかけてしまって…」
「何を今更。犯人はわかってる。教えてくれないか?あいつの連絡先を。」

イグチカナエに送られてた写真から考えた撮影位置、その場所にいた人間が容疑者で僕には心当たりがあった。そしてカノウが漏らした証言から確信になった。

「わかっていましたか。でも連絡してどうするんです?」
「別に、一言だけ言ってやりたいだけだよ。
それに、この件は彼が独断でやったことなんだろう?君も対応に追われてるんじゃないか?」
「…ええ。どうやら、今回のことについて責任を感じているようです。挽回するための役割を与えてはいるんですが、満足できていないみたいなんです。」
「ああ、気持ちはわかるよ。あいつに同情もしてるさ。」

僕があいつだったら、同じ感情になるだろう。そこにつけ込むことで、僕は犯人と約束を取り付けることに成功した。

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