「社会的共通資本」宇沢弘文を読んで

スタンフォード大学、カリフォルニア大学で研究し、シカゴ大学で教授となった、数理経済学者である、宇沢弘文氏の代表的な著書。

図書館で借りようと思ったら、以外と予約件数が多かったので、Kindle版を購入した。

まず社会的共通資本とは何かということになるが、それは

一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置を意味する。

ジョン・デューイのリベラル思想を根拠とした、経済学者ソースティン・ヴェブレンの制度主義の考えを具現化したものだ。

ここでいう資本とは、社会的インフラストラクチャーである、自然環境、水道、ガス。制度資本は、教育、金融、医療などを指す。

農業、都市、教育、金融、医療、自然環境について、これらの共通資本の現状と問題点を上げ、より良い社会的共通資本とするべく提議している。

今、宇沢弘文が注目されるのは、その予見性だろう、

例えば医療については、保険点数性の偏向による実際的費用との乖離。それによる医療体制の劣化。
それが現在、日本は病床数は多いが、その多くを開業医が占め、コロナへの医療体制が整わず、逼迫してしまうような現状の一つの要因にもつながっているのではないか。

やはりこのコロナ禍で見直されている農業の発展は、社会的、文化的な発展にも大きく寄与するという。そんな農村を社会的共通資本とし、持続的な発展を遂げるコモンの形成をする。ここでもやはりコモンの必要性が、斎藤幸平氏の「人新世の資本論」と同じく謳われている。

やはり問題は資本主義へと言及され、それが生み出す不平等の解決には、教育の平等化が必須という。しかしそこにも資本主義が浸潤し、大学では支配的な利潤論理が適用され、抑圧的な非民主主義的なヒエラルキーで占められていことを危惧している。

最後に環境問題においても温暖化を嘆き憂いているが、その解決の道程は民主主義にあると、スウェーデンの取り組みを紹介しつつ希望へと繋げている。


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