無精子症と僕

私には結婚して4年目、31歳の妻がいる。お陰様で夫婦仲良く暮らしているが、二人には子供がいない。その原因は僕の生殖機能に問題があるからだ。

昨年の12月、僕は産婦人科で無精子症と診断された。「ダンナさんには精子がいないんです。」申し訳なさそうに医師が伝えた。僕は息を吐き目を閉じた。深い闇にゆっくりと沈んでいくような感覚になった。結婚して4年目を迎えた僕たち夫婦の妊活は早々に終わってしまった。

どうして自分が。大きな病気も入院もしたことない。それに自分も世間一般の男性と変わらない、むしろ男性としての自信は持っていた方かもしれない。しかし、現実は違った。自分は男性として不合格であった。

病院から家に着くと僕はソファにへたり込んだ。今日のショックな出来事でもう何もする気が起きなかった。目を閉じれば無精子症を告げる医師の姿が浮かんだ。自分はどうしようもないダメ男。自暴自棄になっていた。

そんな僕を見てか妻がそっと抱きしめてくれた。「俺のせいで子供が産めなくてゴメン」。僕はこの言葉を何度も繰り返した。5人兄弟の末っ子として生まれ、自分も両親のように子供を育てたい。以前からそう言っていた彼女のことを思うと本当に申し訳ないと思った。自分が情けなくなり涙が止まらなくなった。

しかし、妻は首を横に振りこう答えた。「これから二人で子供を持てる方法を考えていこう」。

妻だってもちろん悲しいし、泣いていた。でもそこで止まっててはいけない。二人でできることはあると前を向いていた。もし彼女がそのときそう言ってくれなかったら、僕はずっと無精子症のかわいそうな自分という殻に閉じこもったままだっただろう。僕も妻のおかげで前を向くことができた。

そして今、僕たち夫婦は特別養子縁組での子供を考えている。血はつながらないが、子供を育てていきたいと思う気持ちは変わっていない。実際に子供を預かるまでいくつかのハードルがあり、時間もかかると聞いている。不安もある。でもこの道を進む。無精子症でもいいじゃないか。それでも家庭を築けると証明したいし、妻とならできると思う。

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