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リスクを取らないリスク

円の総合的な実力が50年ぶりの低水準に迫ってます。国際決済銀行が2022/2/17に発表した2022年1月の実質実効為替レートは67.55と1972年の水準67.49に近づきました。実質実効為替レートは様々な国の通貨の価値を計算し、物価変動も考慮して調整した数値です。高いほど海外製品を割安に購入できることを示します。
円の実質実効レートは1995年の150が最高で、当時から50%強低下してます。下がっているのは物価上昇率の内外格差を為替レートの変動で調整できていないためです。本来物価が上がると購買力は下がるため、通貨の価値は低下します。逆に物価が安定していれば通貨の価値は保たれます。1995年から直近までの日本の消費者物価指数の伸びは4%なのに対し、アメリカは84%です。
 
2020年の日本の一人当たりGDPはOECD加盟38か国の19位で、日本経済研究センターの試算では2027年に韓国、2028年に台湾に抜かれます。 
 
企業価値に影響を与えるのが無形資産です。米オーシャン・トモによると、米主要企業の企業価値の占める無形資産の割合は1975年の17%から2020年には90%とほとんどが無形資産です。ヨーロッパが70%、韓国は60%弱、中国45%に対し、日本は32%です。日本だけが無形資産に移行できていない状況です。
 
マーサージャパンによると、日本の標準的な役員報酬は2493万円で、スイス5350万、米5310万円、中国4200万、英4175万、ドイツ3829万と比較して、かなり低い状況です。
 
厚労省は2/25、2021年の出生数が84.2万人と6年連続で過去最少を更新したと発表しました。2021年の死亡数は145万人で戦後最大、人口が60.9万人減となります。
 
大学も欧米に比べ国際競争力が劣っています。英タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの2021年世界大学ランキングで100位以内に入ったのは東大と京大のみでした。
日本の研究力も低下の一途をたどっています。研究分野ごとに引用数がトップ10に入る注目論文の数はインドに抜かれて世界10位です。1990年代は3位でしたが2000年代半ばから急落しました。研究力が低下した要因に国公立大学の法人化に伴う運営費交付金削減と人件費削減の影響があります。 
 
上記のマイナス事象が多々ありますが、これらは過去30年において、リスクを取ることを回避した結果だと私は思っております。令和3年度補正予算、令和4年度予算にも言えることですが、将来に対するリスク投資がほとんど含まれていません。これを30年続けたツケが今になって跳ね返ってきているのだと考えております。
 
新しいことに飛び込むのは誰しも気が引けますし、勇気が必要です。これは脳科学で立証されていて、人間は生存するために未知の領域にはむやみに飛び込まないよう、ブレーキがかかるようになっているのです。
ただし、新しいことをやらないことによって発生するリスクもあるのです。特に変化の速い今の時代は、上記無形資産が企業価値を作っているように、新しいコトに対して価値がある時代なのです。「リスクを取らないリスク」が大きい時代だと言えます。
「将来への投資=怖いけど飛び込む勇気」が今日本に必要なことだと思います。


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