真夏の空に降る雪は

 真夏の空に降る雪は
 鳥の涙かはかなさか……

 春にもなれば雪はとけるが
 おれのこころは冬空で
 夏になっても冬空で
 身を切る風にさらされて
 真夏の空に降る雪は
 おれのこころに降りつもる

 おれのこころは凍てついて
 汚れちまっても凍てついて
 かた(固)あい氷に閉ざされて
 入って来るのは寒さだけだが
 おれのこころの冬空を
 一羽の鳥が飛んでゆく

 傷つけ合うのも人間で
 愛し合うのも人間で
 人と人とが愛し合うから
 一羽の鳥は飛んでゆくが
 おれには春が来ないから
 おれには愛は酷すぎる

 おれのこころは凍てついて
 汚れちまっても凍てついて
 おれのこころの冬空は
 ますます固く閉ざされて
 どこまで続く果てなしの
 おれのこころの冬空よ

 それでも鳥は飛んでゆく
 一羽の鳥は飛んでゆく
 真夏の空に降る雪は
 身を切る風にさらされて
 風にあらがい 風立ちぬ
 鳥の涙かはかなさか

 真夏の空に降る雪は
 真夏の空に降る雪は……

                  © 伊武トーマ


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