”女子暴力防止”に隠されたジェンダー思想、西洋版LGBT法案=イスタンブール条約
日本だけではないLGBT思想の標的
先日、アルメニアの現状について現地の宣教師ジェイコブ・パーセリーさんにインタビューしました。
その中で、アルメニアが西洋のイデオロギーに対して門戸を開いた出来事として”イスタンブール条約”に関して言及されました。
LGBT法案が強硬に可決された我が国において、その強行の異様さに首を傾げる人が多い今、これを理解するために、イスタンブール条約と比較して考えてみる事は非常に有益であると思われます。
つまり、これは日本にだけ起きていることではなく、世界中で起きていることであると再確認できるのです。
そしてどちらもその現地の伝統秩序を壊すものであり、グローバリズム全体主義運動の各国不安定化の一環として捉えればよく理解することができます。
イスタンブール条約の正式名称は
「女性に対する暴力及び家庭内暴力の防止と対策に関する欧州評議会条約」(Convention on preventing and combating violence against women and domestic violence)
女性に対する暴力を防止する国際条約として欧州評議会で取りまとめられたものです。
※日本は加盟国ではなくオブザーバー国
開催地トルコの都市にちなんでイスタンブール条約と呼ばれ、トルコが世界でいち早くこの条約を批准しました。(2012年3月)
しかし、後で紹介するトルコ大統領声明の通り、この条約は
”同性愛を当たり前のことにする(normalize)人々によってハイジャックされた” としてトルコは脱退しています。(2021年3月)
イスタンブール条約の中のジェンダーイデオロギー
実際の条約中、指摘されている点は主に2点あります。
1点目は第4条「基本的権利、平等および差別の禁止」3項、差別禁止事項リストの中にある”性自認”(gender identity)の記述で、これがジェンダー思想の導入であると非難されています。
日本のLGBT法案でも”性自認”という用語が議論の中心となりました。
曖昧で客観性を欠き、個人の主観で性別が決められてしまうという問題です。
この「性自認」という用語は一時修正案として「性同一性」に変更されました。しかし、性同一性という言葉も共に元の英語であるgender identityに変わりなく、修正の程をなしていないとの指摘がされました。
そして最終的に可決された法案ではカタカナで「ジェンダーアイデンティティ」と表記されることとなり、危険な形で法案が押し通されたことは記憶に新しいでしょう。
2点目は第14条「教育」の項目で示されている
”固定観念にとらわれない性別役割分担”を含めた”教育資料を公式カリキュラムおよびあらゆるレベルの教育に含めるための必要な措置をとる”と定めている部分です。
そして”非公式な教育施設ならびにスポーツ施設、文化施設、余暇施設およびメディアにおいて”も必要な措置をとると記述されています。
次の投稿で詳しく見ますが、イスタンブール条約本文と合わせて、その解説書という文章がありその中によりはっきりといわゆるトランス、あるいはクロスドレッサー、トランスヴェスタイト(異性装)に対する差別問題も記述されています。
イスタンブール条約、反対の動き
イスタンブール条約、日本のLGBT法案両方に共通することは、美名のもとにイデオロギーを浸透していく構造があるということです。
LGBT法案は、”理解増進”を謳いますが、日本は既に寛容な社会を築いており、また個人の性的嗜好に関して法整備をする正統性はありません。
イスタンブール条約に関してもその条約制定の正統性について同様な指摘がなされています。
以下に反対運動の動きを取り上げてみたいと思います。
2020年、11のEU加盟国の市民団体が批准反対の為の連合団体を立ち上げ、署名活動を行ないました。
欧州委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエン氏宛の署名文には以下のような反対理由が掲げられています。
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イデオロギー条約に反対
ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長
(一部抜粋)
この条約自体、極めてイデオロギー的なものです。
ジェンダー闘争の要素を導入することで、私たちの社会をさらに対立させ、男女の違いを受け入れることによって成り立っている社会規範と家庭を解体へと導くものに違いありません。
この条約文の起草者は暴力の原因を完全に誤認しています。
つまり、その根源を婚姻と家庭経営から成り立つ社会的構造にあるとし、自らの信念に従って子供を育てる親の権利、男女の補完的役割に問題があるとしています。
更に条約起草者は、女性と同様に男性も精神的、身体的暴力の被害者であり、社会的排斥を恐れて男性は滅多にそれを認めないとする研究があるにも関わらずこの問題を完全に無視しています。
暴力の最も一般的な原因は、家庭崩壊と依存症(アルコール、薬物、ギャンブル、ポルノ、セックス依存症)であることは、多くの調査で明らかにされており、これらの調査は容易に入手できます。
この条約の真の目的は、家庭内暴力に悩む女性や家族を助けることではなく、すべてのEU加盟国にジェンダー思想とイデオロギーに染まった「ジェンダー」の定義そのものを一方的に押し付けることにあります。
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※2020年6月9日記者会見が行われる
上記はイスタンブール条約がそもそも暴力の原因を正しく捉えていないことを指摘し、ジェンダー思想の押し付けを危惧しています。
EUは2017年この条約に署名しましたが、6加盟国の反対があり6年経った今も批准されていません。
その6ヶ国はブルガリア、チェコ、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、スロバキアです。
ここで反対しているいくつかの国の動きを見てみたいと思います。
トルコ、イスタンブール条約脱退
トルコは世界で一番初めに同条約を批准した国ですが、ジェンダー思想を理由に脱退した唯一の国となりました。
以下は大統領声明の一部です
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トルコのイスタンブール条約脱退に関する声明
2021年3月21日
2021年3月20日、トルコはイスタンブール条約から自国の一存で脱退しました。
イスタンブール条約第80条は、いかなる締約国も欧州評議会に通告することで条約を破棄することを認めています。
イスタンブール条約はもともと女性の権利を促進するためのものでしたが、同性愛を当たり前のこととしようとする集団に乗っ取られました。
これはトルコの社会的・家族的価値観とは相容れません。
それゆえ、脱退を決定したのです。
イスタンブール条約に深刻な懸念を抱いているのはトルコだけではありません。
EU加盟国のうち6カ国(ブルガリア、ハンガリー、チェコ、ラトビア、リトアニア、スロバキア)はイスタンブール条約を批准していません。
ポーランドは、LGBTコミュニティがジェンダーに関する自分たちの考えを社会全体に押し付けようとしているとして、条約からの脱退へ向けて進んでいます。
(以上一部抜粋)
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2018年7月27日、ブルガリアの憲法裁判所はイスタンブール条約がブルガリア憲法に反するとの違憲判決を下しました。
男女の生物学的定義以外の定義を推進する根拠となる点で違憲であるとし、同法を違憲とみなしたのです。
また、2020年5月5日、ハンガリー議会は同条約の批准拒否の布告を採択しました。
批准拒否の理由として挙げられているのは
①ジェンダーイデオロギーの存在
②ジェンダーを背景とした暴力被害者の庇護規定
です。
庇護権とは、国家が、外国の犯罪人や政治的避難者で保護を求めてきた者を、自国領域内で庇護する国際法上の権利です。この権利を有する人々を拡大解釈しているのが同条約です。
つまりイスタンブール条約を批准することは、例えばトランスジェンダーとして迫害を受けていると主張する”難民”がいれば、その人を保護しなければならくなることを意味するのです。
不法移民政策に厳しいハンガリーは2018年には”ソロス阻止法(Stop Soros law)を導入し、不法移民を手助けした者に対し罰則を与えるようにしました。同国出身の投資家ジョージ・ソロス氏が移民流入の支援を行っていたからです。外国人は合法的にハンガリーに入国させるという当たり前の姿勢を貫いているだけなのですが、そのハンガリーに対するEUをはじめとするグローバリズムの攻撃は手をかえ品をかえ継続されています。
イスタンブール条約とそれに反対する諸国の主張を見てみると、我が日本で最近強行採決されたLGBT法案騒動によく似ているところがあると読者の皆さんは気付かれたと思います。
LGBT法案をして「何の為に秩序を壊すこの様なことを進めるのか?理解できない」と多くの人が頭を傾げたことと思いますが、
”秩序の破壊と社会の不安定化が図られている”と世界の見方のパラダイムを転換してみると点と点が繋がってくるものです。
そして、社会が不安定化したところに解決策として全体主義が広められていく。この手口が全世界で今繰り広げられています。
”グローバル全体主義”
グローバリズムだけでなく、そこに”全体主義”という言葉をつけてこう呼ぶのにはわけがあるのです。
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