『秘密を知ってるクラスメート』くん
僕は、高校2年の4月たまたま病院でクラスメートの山内桜良(さくら)と出会った。
その時彼女は、膵臓の病気で余命数年だと僕に教えてくれた。
この事は、親友のキョウコにも内緒にしているらしい、彼女の家族と僕しか知らない。
住野よる作『君の膵臓をたべたい』を読んで不思議だなと思ったのは、冒頭から山内桜良だけがフルネームなのに親友のキョウコ、クラスメートのリカとヒナはカタカナ文字、
僕に至っては「〇〇なクラスメート」くんで呼ばれている。
その都度「秘密を知ってるクラスメート」くんや「地味なクラスメート」くん。
「ねくらそうなクラスメート」くんと名前を一切明かさない。
しかし、クラスでも存在の薄い僕にクラスの人気者の桜良が大切な秘密を打ち明けたのは何故だろうか、恋人でも友人でも無い僕と桜良がいつも一緒にいるのは彼女が病気のことを彼の前では隠さず話せる事でストレスを発散させているのかもしれない。
もし親友のキョウコがこの事を知ったら普通の状態ではなくなるのは目に見えるからです。
桜良が退院した日の午後、カフェで待ち合わせをしていたが何時間経っても彼女はこなかった、携帯も繋がらないので一旦家に帰るとニュースで彼女が通り魔に刺殺された事を知った。
僕は桜良の通夜にも葬儀にも行かなかった。
毎日自室にこもって本を読んで過ごした。
結局、僕が彼女の家に行く勇気と理由を見つけるのに10日ほどの時間が必要だった。
雨の降る中、桜良の家を訪れた。彼女のお母さんに彼女が病気になってつけ始めた
「共病文庫」と言う日記を見せて頂きたいと頼んだところ
「まあ、君だったのね。桜良から聞いていたのよ」と涙ぐんだ。
「共病文庫」の中で作者がこんな手法をとったのは驚きでした。
今まで名前をカタカナで書いていたのに、この文庫の中では恭子、里香、陽菜と漢字で表し、僕の名前を「志賀春樹」と最後の最後に明かしたのです。
「共病文庫」の桜良の遺言の所に、桜良と春樹は反対の人間でお互いに相手に憧れていた。春樹は自分の為だけに、自分だけの魅力をもって自分の責任で生きていける人。
桜良は周りにいつも誰かが居てくれることで自分の魅力が成立すると言うお互いに自分が
持っていないものを持っている事に気づいてしまう。
桜良と待ち合わせのカフェで、待っている時間に彼女を褒める言葉を考えていたらこれ以上ピッタリの言葉は無いと彼女の携帯に送信した。
『君の膵臓をたべたい』
僕は彼女の返信を楽しみに待った。
じっと彼女の返信を待った。
じっと。
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